第二章、 決心5
卸本町の蜃気楼オリジナル文章
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洋子、「あんた、ここから来たの?、何も無いじゃない!」。
洋子は倉庫の、物置の分厚い扉を開けたが、掃除道具やら、
要らなくなったポスターやらが、無造作に置かれているだけであった。
春菜は泣きながら、「ごめんなさい、言えなかったから..」。
圭子、「そりゃそうよ、突然過去に来て、それを説明しろって言われても」。
良子、「そんな不思議な事って有るの?。夢見てるの?私達..」。
それは、春菜の方が言いたい事である。
洋子が、春菜の財布から、お札を出して、「ねえ、ちょっと見てよこれ、
二回り小さいわよほら」。
洋子、圭子、良子の三人は、この時代のお札と、比較して見ていた。
圭子、「免許証も、二回り小さい..」。
一緒に、免許証を見ていた洋子が、「ねぇ..、白羽町ってここから、目と鼻の先よ..」。
圭子、「どうもさっきから、地元臭いと思ったのよ..」。
洋子、「なんで嘘付いたのよ..」。
良子、「だから、嘘でも付かないと、さっきまでしていた行動で、寄り疑われるでしょ!」。
圭子、「浜松祭り、出た事あるのね、だからクスクス笑ったのね!」。
免許証をよく見ると、圭子が、「へいなるって読むの?これ..」。
春菜、「へいせいです..」。
圭子は納得して、首を立てに振って、「あ~、待ってよ..。
今、昭和44年だからぁ~、ねぇ..天皇陛下が亡くなるのは、いつなの?」。
春菜、「え~と~、私が生まれて4才か5才の時だからぁ~、昭和64年です」。
洋子、「後18年は、生きる訳だ..」。
良子、「それよりあんた、帰れないのよ..」。
圭子、「そうよ、さっきまで、私達と楽しく遣ってたけど..」。
洋子、「未来は、相当便利な時代でしょ、逆に不便な時代に来てしまって、大変よ!」。
春菜、「いいんです。私ここで生きる決心しましたから..」。
圭子、「そんな直ぐに?。順応力有るわね~、でも寂しくないの?」。
良子、「あんた、お父さんお母さんに会えるのは、40年後よ」。
洋子、「あんたが、お婆ちゃんになった姿、親に見せられないでしょ?」。
春菜、「私の時代は、仕事が無いのです。
大学出ても、受け入れ先は、派遣しか取ってくれなかったから..」。
三人同時に、「は..派遣?」。
春菜、「そう、派遣社員です」。
圭子、「派遣社員て、期間限定の期間工の事..?」。
春菜、「派遣会社が在って、そこから派遣されて、会社で働く二次受け社員です」。
またまた、三人同時に、「はぁ..」と、頷いた。
洋子、「しかも大学出たのでしょ?。それでそニ次受け会社しか、就職出来ないの?」。
<作者:この当時、女性が大学出と言えば、今の東大出に匹敵するくらい、凄い学歴だった。>
春菜、「そうです」。
良子、「何か事情があるのよ..」。
春菜、「私の居た時代は、バブル崩壊と言って、大幅な自員削減が有りました。
好景気が続いていましたが、不況が訪れ、大手の証券会社は破綻して、
銀行も相次いで、合併を繰り返して来ました。
その時、企業側は便利で都合良く人材を切れる、派遣社員を雇う傾向になって、
私もがんばって、いつか正社員になろうと、あくせく働きましたが、
再度深刻な世界恐慌が訪れ、遭えなく会社から切られてしまいました」。
圭子、「せ..世界恐慌?。それはいつ起きたの?」。
春菜、「私が今の会社、いや..、40年後のここの会社に勤める三ヶ月前から、
アメリカの住宅会社が揺らいで、今度は投資会社が潰れました。
その時、アメリカの大手の車会社は、大幅な打撃を受けて、
日本の車会社も揺らいで、日本全体が不景気になって、
派遣で働いていた人達の多くは、会社から切られました。
まじめに働いている人も、そうでない人も、ひっくるめて切られ、
私は地元に戻って、親の伝で40年後の、この会社に就職したのです」。
良子、「それで、倉庫のこの物置を開けたら、この時代に遣ってきた訳だ..」。
圭子、「40年後は、大分日本社会は荒れてそうね..」。
洋子、「それにしても、誰の仕業なの?。やっぱり宇宙人よきっと!」。
圭子、「わざわざ、こんな無垢な女の子を嵌めに、
宇宙から遣って来た訳でも、無いと思うけど..」。
春菜、「私達の居た社会は、夢も希望もありません。
ただ自分の生活を今のまま、維持できる事が理想です」。
それを聞いた44年組は、気を落としてしまった。
洋子、「でも、親の伝で正社員として、就職出来たんでしょ?」。
春菜、「出来ましたが、仕事と言ったら、朝パソコンを立ち上げて、
夜集計をプリンターに落とすだけです。給料も派遣で働いていた、半分です..」。
圭子、「パソコンねぇ~、未来のコンピュータの名前でしょ?それ..」。
さすが感が良い圭子。
良子、「いずれにしても、味気ない世の中になっている訳ね、40年後は..」。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




