第二章、 決心3
卸本町の蜃気楼オリジナル文章
http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1515222.html
角を曲がると、店先には大きなガラスケースの中に、食品サンプルが複数並べられていた。
スパゲーティー、ナポリタンに、フォークが巻かれていて、宙に浮いていた。
ラーメン、カレーライス、オムライス、ハンバーグステーキ、とんかつなど、
喫茶店の定番メニューだった。
春菜の時代では、この食品は定食に近いが、この時代では贅沢な食事である。
春菜はそれを見て、感動していた。
なぜなら、春菜の時代ではあまりに、飲食店では、このメニューは在り来たりで、
こんなに、定番のメニューをアピールしている店は少なく、
逆に新鮮に見えたからだった。
春菜は、独り言で、「ファミレス寄りも感動!」。
他の女性三人は、同時に、「なにそれ?」。
春菜、「い..いや、独り言です..」と、咄嗟に言い訳をした。
店に入ると、大勢の人達がテーブルに着いていた。
テーブルにはソース類と一緒に置かれた、高級料理店で使用する、
大きな赤い色のメニューが、置かれていた。
四人は空いている席に座ると、メニューを開いて品定めをしていた。
メガネを掛けた女性が、「カレーライスも、いいけどね~」。
ウェーブが掛かった髪先を、人差し指で巻きながら答えた。
背の高い女性は、「そうね~、ピラフもいいけど、後でお腹空きそうね~」。
小指を噛みながら答えた。
細面の女性は、「丁度いいのは、やっぱりオムライスね!」。
皆さん、「賛成!」。
春菜、「楽しみぃ~」と、ワクワクしていた。
そして、この当時ラッカセイの入れ物が有り、そこに100円硬貨の挿入口が有り、
100円硬貨を入れ、レバーを引くとラッカセイが出てくる仕組みの、
小さな機械が洋食店のテーブルには、必ずと言って良いほど置かれていた。
それを手に取った春菜は、レバーを引いた。
するとメガネの女性、「あんた!さっきから、お金も入れないで、取ろうとしてるけど無理よ#」。
いささか春菜の行動に、怒れたらしい。
春菜、「ブザー鳴らして、店員呼ぼうかと..」。
春菜はそれが、この当時の呼び出しブザーかと思った。
メガネの女性、「なに言ってるのよ?あんた#」。
逆時代に付いて行けない、春菜だった。
見かねた背の高い女性が、手を上げてウェートレスを呼んだ。
すると春菜は、そのウェートレスに驚いて、
口を両手であてがい、「あ~..」と、声を上げて驚いた。
それはまさに、メイドの格好だった。
この当時、洋風飲食店のユニフォームはあいまいで、
ウェイトレスと言えば、この格好が定番だった。
今でもメイドが、秋葉原で流行る前から、東京のテーマパークの中の飲食店は、
この格好で、出てきますよね。
中華やインド、フランスやイタリヤなど、限定した飲食店は、地方では少なく。
洋食と言えば、この当時は全部がフランス貴族を、ベースにした店造りが主だった為に、
春菜の時代では、店員がメイドで出てくる飲食店は、
風俗系の店が、当たり前なので驚いてしまった。
増してや、この間まで東京で働いていた為に。
しばらくすると、先ほどのメイドさんが、注文の品物をトレイに乗せてやって来た。
美味しそうな、ケチャップが掛かっている、スタンダードのオムライスが、
テーブルに並べられて行く。
並べ終えると、春菜はお皿の端に乗っている、飾りを指で摘み、「ハーブ?」と、答えると、
メガネを掛けた女性が、「パセリよ!」。
春菜はパセリを、指でくるくる回しながら、「なるほど!お刺身の上だけじゃないんだ」。
この三人にとっては、とても不思議な子に思えたのであった。
そして春菜はペーパーが、まかれているスプーンのペーパーを取って、
オムライスの端にスプーンを入れて、一口乗せてそれに、ケチャップを付けて食べた。
春菜、「う..うまぁ~い、味が媚びてない」。
その表現に後の三人は、大笑いだった。
背の高い女性が、「媚びてないと来たか..」。
細面の女性、「くどくないって事?」。
メガネの女性、「はっきり、あっさりしているって、言いなさいよ#」。
そんな会話で、食が進む四人だった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




