第十五章、絆4
卸本町の蜃気楼オリジナル文章
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冬休みも過ぎて、会社に復帰した春菜は、
やはり休み明けで忙しかった。
ただ一人だけ、上を向き口を開けて、
コンタクトレンズと、格闘していた洋子が居た。
洋子、「あ~もぉ#!、難しいわねこれ..」。
すると隣の席の里美が、「なによそれ?、あんた目にそんな物入れて、大丈夫なの?」。
洋子は上を向いたまま、「これ高かったのよ!」。
里美、「幾らなのよ?」。
洋子、「一枚4万..」。
里美は驚いて、「はぁ~?、二枚で8万!、ボーナス全部注ぎ込んだの?」。
洋子、「貯めた金で買ったのよ!」。
里美は、あくせく動いている、春菜に声を掛けた。
里美、「ちょっと、ちょっと春菜!、未来人ならこれ入れられない?」。
春菜は洋子のデスクに来て、置いて有った、もう一つのコンタクトレンズを、
人差し指の先端に付けて、上を向いている洋子の右目に、パ!と落した。
すると洋子が摘んでいた、もう一つのコンタクトレンズを、
やはり人差し指の先端に付けて、左目に落した。
すると洋子、「流石は未来人、慣れてるわね~」と、感心していた。
春菜は書類に、目を通しながら、「私も前は、コンタクトをしていたの..」。
里美、「昔は..って、今はどうなのよ?」。
春菜は里美を見て、「近眼はレーザーで治しました..」。
里美と洋子は怖がり洋子が、「あんた、殺人光線目に入れて大丈夫なの..」。
実はこの当時、レーザー光線と言うと、殺人光線と言われていて、
軍事の最先端武器意外に、使っている用途は無かった。
春菜、「はい、レーザー光線を網膜に当てて、焦点を回復させる治療法です」。
里美と洋子は、訳が解らずポカーンとしていた。
すると明子がやって来て、「春菜の時代は、
そのレーザーは、幅広く色んな分野で、応用しているのよ!。
ダイナマイトだってそうでしょ!、ノーベルさんが平和利用する為に、
開発した物は戦争に使われてから、平和利用されたのと同じで、
レーザー光線だって、そうした道を経て医療分野に、応用されたのよね!春菜..」。
春菜、「明子さん本当に、先を見る目が有りますね!、その通りです。
レーザーが 一般家庭に入って来たのは、CDコンパクトディスクと言う、
音楽レコードに変わる、画期的な音楽記録ディスクで、
レーザー光線の直進性を生かし、今までレコードの溝を、針がトレースしていた物を、
レーザー光線が読み取る方式に変わり、レーザーは広い分野で、活躍する様になりました。
用途としては、記録と再生する事が主で、音楽だけでは無く、
映像記録の分野でも、活躍する様になりました。
医療分野でも用いられ、手術の時に使うメスも、
レーザーメスと言う、金属のメス寄り細かく切れ、ガンなどの腫瘍切除や、
焼き切りなどにも応用され、更に用途の研究が進んでいる最中です」。
周りに居た社員達は、それを聞いて、「お~!凄い」と、声を上げたのだった。
それを聞いて、益々頭が混乱する里美と洋子であった。
そしてお昼を向かえ、三人集と春菜は、近くの定食屋で食べていた。
皆楽しそうに食事をしている様子は、春菜にとっては、
大勢の親戚と食事をしている様に感じた。
皆他人ではあるが、とても親近感が湧いた。
自分の居た時代と、この時代の何が違うのであろうかと、不意に考えた。
それは香り、それともこの場のレトロな雰囲気。
それとなく、周りを見回す春菜だった。
そして何かに気づき始めていた。
そう、春菜の時代は他人には、警戒心がある。
春菜が居た時代の人々は、自分の事を棚に上げて、
自己中心的な人が多くなり、お互いに自己中心的なので、
横に居る他人を悪く見る傾向にあった。
すると心に分け隔てを自然と作り、
警戒感を抱く為なので有ろうと思った。
良子がその春菜の動きを捉えて、以心伝心出来た。
良子、「春菜、世知辛い世の中の末には、必ず人々は思い直して、
また触れ合える時代が、やって来ると思うの..」。
春菜、「お母さん、何でも人は失敗して見ないと、
本当の幸せは見つけられないと思うの」。
圭子、「そうね、その失敗を明日の糧に、変えて行く事が出来れば、
本当の明るい未来は、来るのかも知れないわね..」。
洋子、「取り合えず、あんまんが未来に有る事が、分かったからいいわよ!」。
春菜、「私の時代はECOと言って、環境に優しい物を作る方針が、
内閣法案で打ち出されたの。
今まで産業で、川を汚し海にはヘドロが沈着して、汚い浜名湖畔が存在している。
日本産業が低迷したと同時に、川や海が浄化されつつ有るの。
発電も風力に変わり、原子力をなるべく使わない方針で、進められていたの」。
圭子、「戦争と同じよそれは、人々を無くし、歴史上の建造物を壊し、
挙句の果ては、民は戦った意味がよく解らないまま、終戦を迎えた。
その時初めて、命の尊さを国は知る事になる。
国民の人数は大幅に減少して、
生めや!作れや!の国の方針で、人口爆発は起きて、産業も爆発的に潤った。
その果ては、バブルと言う所謂泡の如く、消えて行ったお金と好景気。
すると少子高齢化が進み、あの戦後直後の様に、若者は大幅に戦死して、
残された者は、老人と女性が大半だった」。
良子、「何時でも同じ繰り返しなのよ。
中国4000年も前は、どの国よりも栄え、
時として支配者が、他国から攻め入られるのを恐れ、
鎖国をすると国は栄えなくなる。
これでは駄目だと、時の支配者は開国をして、貿易を盛んにすると、
いずれ春菜が居た時代の流れが訪れ、低迷して行く」。
洋子、「まるで波打ち際の様ね。
寄せては返しの繰り返し」。
春菜、「いずれにしても、この時代の人々は飢えを体験した。
私は五体満足に育ち、大人になってから仕事に飢えた..。
でもそれは、自分の甘さで考え方を変えて、
あの裸一貫から、モーター事業を立ち上げた人の様に、
自分がコツコツと、事業を営むことを考えなかった。
初めてこの時代に降り立って見て、そうした努力をして、
私の居た時代で、成功した人の事を知ったの」。
良子、「前世のお父さんも、その一人でしょ!」。
春菜、「現世のお父さんは、あの不思議振りで、
どうして現世の母と結ばれたか、これからじっくり観察して行きたいの..。
早速これから母の祖母の家を、そっと覗いて見るつもり」。
三人集は大笑いであった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




