第十四章、日々2
卸本町の蜃気楼オリジナル文章
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騒がしい毎日を過ごしていた春菜だったが、
自分が居た時代よりも、楽しかった。
或る日曜日、春菜は街に良子と買い物に出ると、同僚の女性社員に会った。
話も弾みそのまま、街の喫茶店でお茶を飲む事になった。
新人の二十歳の井上 節子が、「洋子さん、懲りずにまだ、
携帯電話探してるのよ」。
会社でもベテランの鈴木 喜代子が呆れながら、「そうなのよ、
血眼で電気屋から、浜松中の質屋を駆けずり回って探してるのよ!」。
春菜、「私がこの時代の事情、知っていれば洋子さんに相談したのに」。
節子と喜代子は同時に、「駄目よ!」。
喜代子、「あんなのに、そんな価値の有る物見せたら、気が狂うわよ!」。
節子、「そうよ、春菜さん 一生脅かされて、放れてくれないわよきっと..」。
良子、「もうすでに、餌食よあの二人から#!」。
春菜、「そうでもないですよ、
そうならない様に、選んで未来の情報教えていますから」。
喜代子、「そう、そうよね!、意外に春菜はしっかりしてるからね!。
弱そうだけど、良子寄りも度胸も有るし、たくましいからね、アハハハハハ」と、笑った。
良子、「負けたわよ、この子に頭が上がらないわ。
強姦が来た時でも冷静で、銃弾かすめた時でも、
毅然とした態度で皆なに笑顔で、救急車の中に乗り込んで」。
春菜、「恐ろしいですよ40年後の未来は、東京で夜な夜な遊んでいたら、
麻薬、暴行、性犯罪なんて当たり前に起きますから、
油断していれば、命を落しかねません。
40年後の強盗や泥棒は、殺してでも奪います。
証拠隠滅の為に、家を燃やしたりします。
強姦も顔を見られれば、殺して逃げます。
麻薬も自ら求めなくても、油断してると無理やり遣らされたりします」。
東京でも地方でも、営利目的なら手段を選ばず。
私の時代には、オレオレ詐欺と言って、お年を召した方の家に電話をして、
その方の孫を装い、『おれ..おれおだよ、今会社の金使い込んで』とか、
『事故を起こして、危ない人から脅かされてるから、
銀行のこの口座に、大金振り込んでくれ!』とか、
あの手この手で、お金を奪いに来ますから、
他人の言う事を、信じてはいけないのが常識です」。
皆さん固まり同時に、「こわ~い」と、呟いた。
喜代子、「そうか、だから春菜はこの時代に居たいのね!。
春菜から言わせれば、不便なのに」。
春菜、「便利かもしれません、私の居た時代は、
でも、人々は立前は誠実なのですが、いざ自分に降りかかる災難は、
人に擦り付けたい人が多いですね。
会社の責任も、負いたくない人が多く、
自分が不利になりたく無い 一心で、
立場的に不利になったら、今日は同僚、
明日は他人行儀と言う現状を、目の当たりにした事は多かったな..」。
節子、「具体的にその、『明日は他人行儀』とは、どう言う事が有るの?」。
春菜、「例えば、上司が退職されますよね。
会社で上司だった頃は、部下が慕ってくれます。
でも上司が会社から居なくなったら、
誰も退職された上司の家など尋ねません」。
良子、「つまり、会社で上司を立てる事で、
自分の立場の、身の安否を気遣ってるけど、
会社からなんら力の無い人になったら、冷たくあしらうと言う事ね」。
節子、「なるほど、それは上司だけでは無く、同僚も仕事相手として、看做さなくなったら、
相手にしなくなる訳ね!」。
春菜、「それが媚びてくると、水面下でいじめたり、少しでも体の不調や、
弱い所を見せると直ぐ、上司の耳にそれとなく入れるので、気が気では有りませんでした。
給料が高いから役付は捨てられ、会社は平社員と社長と言う、
合理性を求めましたが、ただ単に役付は役が付いた訳では無く、会社の柱だったのに、
その人を見捨てた結果、会社は歯車が回らなくなり、
廃業して行った大企業は多く存在します」。
皆さん、「複雑ね~」と、口を揃えた。
春菜は微笑んで、「この時代の穏やかな雰囲気も、生活臭も、
人々の優しさも、個人店での会話も、私の時代には、失われた物なの。
凄く頑固な人は多いけど、その分親身になって考えてくれたり、
アドバイスしてくれたり、その行為は決して間違った事は言わないの。
媚びて無いし、良い物を提供してくれる熱意は、時に頑固だとも思えるけど、
真の商人魂の表れだと思う。
私の時代は、この時代のおせっかいな、人は居ない代わりに世知辛い。
友達や親兄弟が居ても、携帯電話が有ってもどこか孤独なの。
それは何故か、ここに来て初めて気づいたの。
うるさい!、めんどくさい!、ひつこい!、ほっといてくれ!、と言う物を無くし、
合理的な都市を創ったら、見た目には綺麗だけど、
寂しい街に成ってしまった気がする」。
節子、「ごめんなさいね、春菜さんの事では無いの。
宇宙人を描くと、どこか冷たくて無表情で、冷酷な感じがする。
時代が進化すると、人間で有れ宇宙人で有れ、
皆生物は同じ方向に、進むのでは無いかと思うの」。
喜代子、「そうね~、確かにそうだと思う」。
良子、「余分な物を無くして行ったら、何も無くなった」。
春菜、「そう、結局私の時代の建物創りは、明るく広く無機質の様な気がします。
でも不思議な事に、繁盛している大型店舗は、無機質の正反対の、
広いスペースに、どこに何が置いて有るか迷う程、
ゴチャゴチャ物が置いて有って、歩く隙間が無い程、狭いお店が若者達の穴場なんです。
何でも売っていて、フロアーの仕切りが無くて、生活用品、雑貨品から、
音楽製品から下着まで、それらがバラバラに置いて有る店が、人気の的を得ています」。
節子、「へ~皮肉ね~、アハハハハハ」。
その後、喫茶店を出た良子と春菜は、
洋品店に入り、店主と会話が弾んだ。
どこの店に行っても、その店の商品以外の話で会話が弾む。
街角の八百屋も果物屋も、売り物の話よりも、世間話の方が多かった。
店主に気に入られると、必ず名前を覚えてくれた。
次に店に出向くと、自分の名前を呼んでくれた。
ガツガツしていない、媚びなてない、どちらかと言うと、
商売そっちのけで、お客と会話したいだけで、商売を営んでるのかと思う位、
商売とは関係無い話をしてくるので有った。
時には気に入らない客には、『買ってくれなくていい#!』とまで、
言い放つ頑固な店主も居たりで、今では考えられない、商売方式だった。
逆に言えばそんなに媚びなくても、店を開けばそれなりにお客は根付いて、
必ずその店で買ってくれたので、客側も商売側も、のんびりしていた時代だった。
春菜は素直で有る、なのでどの店に行っても気に入られ、良い商品を与えられた。
客も商売屋も、思いやる事でお互い、
特を得た時代と言っても、過言では無い時代背景だった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




