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第十四章、日々

卸本町の蜃気楼オリジナル文章

http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1515222.html

あの日から数週間が経ち、会社は冬休み前の暮は大忙しで、



あくせく社員達は、仕事に追われていた。



春菜は電話番に回されていたが、



ダイヤル式電話を使った事の無いので、



どうもダイヤルを上手く回せなかった。



回す度に、フン、フン、と、指の力を精一杯入れては、



ダイヤルの指止めまで、回すのが困難だった。



書類を持ちながら、



その姿を立って見ていた里美が、「あんた、箸より重い物持った事無いでしょ!」。



春菜、「いつも倉庫で、重いダンボール持っています#」と、膨れた。



最後まで回せず、途中でダイヤルを放してしまうので、繋がらない事が多かった。



すると明子が遣って来て、「私と変わりなさい!」と、



春菜を退かして、ダイヤルを回しながら、「こうやってグ!っと、



指に力を入れて回すのよ!」と、手本を見せながら、取引先に電話を掛けた。



春菜、「それがいまいち出来ないの..」と、首を傾げた。



隣のデスクの洋子が、「あんたの時代は、どうなってるの?」。



春菜、「メモリーダイヤルです」。



洋子、「メモリーダイヤル?」。



明子が電話を終えて、「この子の時代は、一度掛けた所は記憶されて、



毎回ダイヤルを回さなくても、ボタン一つで同じ所に回線繋がるのでしょ!」。



向かい側のデスクの大野が、書類を持ちながら、「記憶されるのか!、



さすが未来の電話だね!」。



里美、「携帯電話が世の中に出回ってる時代よ!、



そのくらい当たり前だの何とかやらよ!」。



春菜、「取引先はパソコンに記憶されてるから、データをネット上でアクセスするのです。



取引先に電話は、あまり使わないのです」。



聞いていた部長は、「そう言う事をするから、我々の仕事が将来、危ぶまれるんだよ#」。



大野、「なるほどね!、一長一短だね..」。



部長、「春菜みたいなまじめな子も、路頭に迷うのは、何でも機械化するからだろ!」。



春菜、「それだけでは無いのですが..」。



部長は、お茶をすすりながら、「すでにその時代は、俺も退職しているが、



良かろう安かろうが、何でも良い訳では無い、



必ず巡り巡って、国民に皺寄せが来るんだ!」。



春菜、「はい、その通りだったと思います」。



聞いていた周りは、同時に口を揃えて、「なるほどね~」と、呆れたのであった。



そして昼休みになり、例のごとく三人集と春菜は、



昼食を取りに会社の外に出て歩いていると、一台のカブが遣って来た。



それは柿本だった。



それを見た良子は、腰に手を当てて、「のこのこ凝りもせずに、またやって来たわね#!」。



ヘルメットを被った柿本は、「お前若い頃、俺と知り合って間もない時に、同じ事言ったぞ!」。



良子、「そう言う事じゃ無いわよ#!、自分の娘を粗末に扱うあんたは、



地獄に落ちても私は、悔いは無いわよ#!。



『娘はこれから俺が守る』様な事をほざいて置きながら、娘の彼まで殺し掛けて置いて、



のこのこ人の前に現れて#!、このろくでなし#。



あんたが今まで一番、傷を負って無いでしょ#!。



私も春菜も杉浦君も、あんたの犠牲になって#!、どう言うつもりよ#」。



春菜、「だから当分会いに来ないでって、言ったでしょ#!、



どやされた暁には、往復びんたの乱れ打ちが、待ち構えてるんだからも~#..」。



圭子、「春菜、乱れ打ち見たの?」。



春菜、「先週の夜、寮にそれこそのこのこやって来たの、



今度は玄関から入って来たのだけど、寮の外で大変だったんだからぁ~#」。



柿本、「昔から良子の往復びんたは、慣れてるんだよ、アハハハハハ」と、



右手を後頭部に当てながら、笑っていた。



洋子、「これくらいじゃないと、良子の彼は務まらないかもね..」。



すると柿本の横に、トラックが止まった。



杉浦だった。



杉浦は窓を開けて、「あ~、誰かと思えば、柿本さん。



警察のお咎めは、無かったのですか?」。



柿本は見上げて、「俺は晴れて潔白と断定されてたんだ。



お咎め無しという事で、今後もし何らかの組織関与に対しては、


参考人として扱うと言う事で、処理された訳さ!」。



良子、「うるさい#!、この人でなしぃ~#。



当分牢獄の臭い飯、食らって居れば良かったのに#」。



春菜、「だからねパパ、半年は会わない様にしないと、



顔見る度にママは私の腕に、銃の弾飛んで来た怒りは納まらないの」。



杉浦、「それで、仕事は続けているのですか?」。



柿本、「そうなんだその話だけど、一からやり直すつもりで、



安アパートに移り住んだんだ。



土方からやり直して、金貯めて 一級建設士を取得するんだ」。



良子、「どうせ直ぐ喧嘩して、土方の梯子するのが落ちよ#」。



柿本、「そんな事は無いぜ!、現に不動産家業はこの土地で、



土方まじめにこなして、築いた家業だ。



決して裏家業から入った訳では無いぜ!」。



春菜、「本当よ、嘘は付いてはいない」。



良子、「その事は信じるはよ..」。



柿本、「それにたっぷり娘から、未来の情報仕入れたから、



春菜、今度は特別待遇の良い、給料もたっぷり貰える、



銀行に勤められる様に優遇するから、待ってろよ!」。



良子、「ちょっと、春菜にいつ聞いたのよ#、



そんな話は春菜から、聞いてないわよ#」。



春菜、「私がちょくちょく、仕事の合間に外出ると、



パパがやって来て、少しの合間に未来の出来を事聞いて来るの。



いつも仕事は道路工事や、突貫工事で夜間勤務だから、



昼間は暇で根掘り葉掘り、未来の話を聞いて、『お母さんには内緒だぞ!』ってね」。



良子、「ちょっとあんたぁ#、何処までふざければ気が済むのよぉ#。



今度は娘をストーカーして、



こそこそ娘に会って、今度は何を企んでいるのよ#?」。



柿本、「別にいいだろ!、成功の種を貰ってだな、



真っ当な人生を歩む糧にするなら、娘を幸せに出来るだろ!」。



良子、「じゃあ、何で私に『内緒にしろ!』って、春菜に口止めするのよ#!」。



柿本、「俺と春菜だけで、会っている事が分かると、おまえうるさいだろ!」。



良子、「当たり前でしょ#!、私はあんたが春菜に、近づいていいって言って無い#」。



春菜、「もう..止めて!、切が無いからもぉ~#。



パパもう帰って!、これ以上長引くと、お昼食べられなくなるから!」。



柿本、「あいよ!」と、バイクを足で後退させた。



その瞬間、良子は手に持っていた財布を投げ付けた。



その財布が、柿本のヘルメットに当たった。



良子、「二度と来るな#!」。



柿本、「ヘイヘイ、女番長で名高い、泣く子も黙る大槻姉さん..」。



するとギアーを入れて、アクセル全快にして逃げて行った。



良子は投げた財布を拾い、追いかけた。



春菜、「無理だからもぉ~#!」。



圭子、「放って置きなさいよ、付き合っていたら昼ご飯所か、日が暮れるわよ」。



そう言って、良子を置いて食堂に向かう三人だった。



その光景を見た杉浦は、トラックの運転席で、「ヤレヤレ」と、呆れたのであった。




この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。

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