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第十二章、明るい日々3

卸本町の蜃気楼オリジナル文章

http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1515222.html


デパートを堪能した四人は、帰る頃にはすっかり日も沈んでいた。



そして街角の本屋に立ち寄った四人は、皆好きな雑誌を立ち読みしていたが、



この時代、本を買わないで、立ち読みしている客には、それなりの仕打が有った。



それは本屋の店員から、はたきではたかれる攻撃に遭うのだった。



なので昭和44年組は、軽く雑誌をサラサラと捲り、何となく気に入ると、



雑誌を買うのが習慣だった。



春菜は一人離れて、小説の本棚から手当たり次第に、本を物色していた。



夢中で物色していたので、隣で本を読んでいた人など目に入らず、



体をぶつけてしまった。



春菜は咄嗟に、体をぶつけてしまった人に頭を下げて、「すみません..」と、謝った。



するとその男性は、学生服を着た姿で、「あ~、別にいいんだよ。



それより君は、この本の世界から抜け出して、神秘なる宇宙へと旅立つ勇気は無いか?」。



そう答える男性は、この当時の有名SF作家の本を手にしていた。



しかも彼は、若き頃の春菜の父親だった。



春菜は持っていた本を、床に全部落としてしまい、両手を口に当てて驚いたのであった。



その男性は話続けた、「僕はいつか、アポロの船員になって、



この広い宇宙を冒険して、いつか何処かの星にたどり着いたら、



理想の世界を創るんだ!。



君もどうだい?、僕と一緒に宇宙を迷い、どこかの星で理想郷を、一緒に創らないか?」。



春菜はその時、「む..無理ぃ#!」と、叫んだのであった。



男性はガクっと、左肩を落とした。



すると店員がやって来て、持っていたはたきで、男性は頭部をはたかれたのであった。



本屋を出た44年組みは、買った雑誌を手にしていた。



良子が本屋の軒先から、店内を伺い、「ねぇ、春菜は何処に行ったの?」と、答えると、



大量に本を買い、重そうに袋を抱えた春菜が、店から出て来た。



それを見た44年組は、驚いて言葉が出なかったが、



圭子が、「あんた、どうしたのよ?」。



良子、「いくらこの時代は、娯楽が少ないって言っても、



そんなに一編に買い込んで、読めるの?」。



春菜、「驚きました、私の時代の有名作家の初版本が、こんなに沢山あるなんて..」。



それを聞いた44年組は、納得した。



すると洋子は急に、春菜が抱えていた本を取り上げた。



洋子、「携帯電話を安く裁いた代償に、これを貰って置くわよ#!」。



黙っている訳が無い良子が、



その取り上げた本を、洋子から奪い返し、「いい加減にしなさいよ#!。



寄付金一割貰って置いて、春菜が買った本取り上げて#!。



腹癒せでしょ、自分で買いなさいよ#!」。



圭子、「そうよ洋子、これだけ買ったって、5万円と掛かって無いわよ#!。



春菜に未来で売れる作家を聞いて、自分で買いなさいよ#!」。



良子、「あんたねぇ、未来人がこれだけ見知らぬ作家の、



初版本を買い込んでいる姿を見たのだから、



どの会社が成功するか聞けば、株で大富豪になれるでしょ#!」。


圭子、「そうよ、個人的に会社で春菜に細かく未来を聞いて、



メモを取ってる癖に、春菜にやっかんで、直ぐ宇宙人だと言い放って#!」。



良子、「この強欲でふてぶてしい女が#!。春菜を宇宙人呼ばわりする癖に、



都合のいい時だけ、未来を聞いてるんじゃない#!」。



洋子、「うるさ~い#!、うるさい、うるさい、うるさ~い#!」と、



両手の拳を握り締めて、「あんた達に、私の幼少時代の貧乏暮らしなんか、



解らないわよ#!。



毎日毎日お弁当を、学校に持って行けない日々が続いて、



朝も昼も夜も、水だけで過ごした日々が解るもんか#!」。



良子、「だからって、春菜を都合よく利用していい訳が無いでしょ#!」。



洋子、「この子が癪に障るのよ#!。



素直で育ちが良さそうで、簡単に学歴付けさせてくれた親が居て、



子供の頃から食うに困らなくて、飽きてお惣菜が好物なんて、言っているこの子が、



悔しくて堪らないのよ#!」。



春菜は急に泣き出し、「ごめんなさい、私もこの時代に来て、



初めて気づいた事、それは皆幼少期は、苦労して来たと言う事だった。



皆この時代の人々は、学歴を付けたくても、



年配の方々は高校にすら、通えるお金が無いから、仕方なく手に職を付けて、



ハングリーで、今の自分を作り上げた事。



昨日部長が、仕事の合間に喫茶店で、コーヒー奢ってくれた時、



私の生い立ちを、聞いてくれたの。



聞いた上で部長が、『春菜は確かに、時代の流れの中で、



なに不自由無く暮らして来たらしいが、



学歴は有って当たり前の時代が来て、不景気になる。



すると今度は、才能や天性や感性的そして、経験者の優遇、



伝と権利の要素を社会は求める。



それは事細かに言えば、器量や容姿などでも、甲乙が出る世の中になる。



今まで世界で生んで来た、科学や文化そして芸術と、それに対する理論を覆す、



何かが欲しい社会になると、学歴では到底追い付けない、



新たな常識を超えた、発想が要求される。



でも学校で習って来た理論の中で、新たな発想をしても、



直ぐそれは、在り来たりになって行った。



その結果、春菜が言う未来はインフレの逆、



デフレと言う今まで日本が、体験した事が無かった社会を、



作り出してしまったんだな』と、言ってました。



私は確かに幼少期、与えられ甘えて来た事を、この時代に来て初めて知りました。



ごめんなさい洋子さん、こんな私で..」。



良子は更に激怒して、「だからってねぇ!、



この子をあんたの、操り人形にさせるのは卑怯でしょ#!」。



圭子、「そうよあんたこそ、世界征服を狙ってるのでしょ#!」。



洋子、「そう言うあんたは、どうなのよ?。



杉浦君と春菜にベッタリくっついて、



見張って春菜の体を、杉浦君に奪われない様に、してるあんたはどうなのよ#!」。



良子、「それとこれとは、話が違うでしょ#!。



私は自分と同じ過ちを、犯して欲しく無いだけよ#!」。



喧嘩する二人に誰かが佇んだ。



「や~あなた達、さっきから大声で喧嘩している様ですが、



未来がどうとかこうとか..。



小さいですね~、小さ過ぎる。



宇宙はもっと神秘的で、ブラックホールに落ちれば、



遠い遠い未来にまで、行けるかも知れません。



その時には、今まで悩んで来た事なんか、バカバカしくなる位、



壮大で輝く人々が住んでいる、地球以上に大きな星に、



辿り着くかもかも知れませんよ!」。



泣いている春菜の顔を見詰め、「さあ涙を拭いて、



過去を振り返ってはいけません、明日を見るのです。



一日一日そんな幸せが、来る事を信じて生きれば、楽しく暮らせますよ、アハハハハハ」。



笑いながら立ち去って行った。



そして夜空を見上げて、あの歌を口ずさんで去って行った。



良子、「変わってるわね~、あの学生服の子..」。



圭子、「ちょっと自分の世界に、入り込み過ぎてるけど、



良い事言って帰って行ったわね」。



洋子、「おかしいわよあの子..。頭がどうかしてるわよ..」。



春菜はしくしく泣きながら、「私の実の父です..」。



44年組は同時に、「えぇ~~...」と、驚いて言葉を失くしたのであった。



相変わらず未来から来られた方が、戸惑う毎日が続いていたのだった。




この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。

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