第二章、 決心
卸本町の蜃気楼オリジナル文章
http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1515222.html
歩いていると、軒先に質の鉄製の看板が掲げられている所で、足を止めた三人は、
そこのショーウィンドに飾られていた、カバンや宝石を見て、何やら評価をしていた。
春菜は、そこの質屋から出て来た若い男性が、
お金を手に数える姿を見詰めた。
春菜は、はっ!と、何かに気づいた。
お札の通貨の形が、春菜の居た時代と異なるのであった。
春菜は困ってしまった。
今から、昼食を取るのに、この時代に合ったお金が無い。
そして意を決したか、質屋の扉を開けて店内に入った。
中に入ると、白髪の顎鬚を生やし、分厚いメガネを掛けた老人が、
カウンターに置かれていた、白黒のテレビを見ながら、春菜をチラっと伺った。
そして徐に、「今日は出すのかい?、借りるのかい?」。
テレビを見ながら答えると、春菜はスカートのポケットから、携帯を取り出し、
カウンターに置いた。
店主が、「なんだい?そのカラフルな箱は、トランジスタラジオかい?」。
春菜、「携帯電話です」。
そう言って、カウンターに置いた携帯電話を開いて見せた。
店主は、目を丸くした。
この時代で、カラーでしかも液晶画面で、こんなに小さいのに、
目の前の白黒テレビ寄り、遥かに鮮明で明るいテレビは、見たことが無い店主は震えた。
店主は挙動を荒げたまま、「け..携帯電話ってあんた、画面が付いてるじゃないか..」。
春菜は、当たり前の様に、「は..はい、もちろんです」。
その時、店主は恐怖を感じて、目の前の携帯電話に、触ろうともしない。
春菜、「買ってくれませんか?」。
店主を見詰めた。
店主、「だ..だけどあんた、この電話線が付いてないじゃないか!」。
春菜、「は..はい、電波は出ています」。
店主、「無線機なのかい?」。
春菜、「いえ、電話です。電話の他にも、メールとか、カメラとか、テレビとえ~と..」。
店主、訳が解らなくなっていたが、その内にこの子は、
人間に化けている、宇宙人だと思い始めた。
店主、「か..カメラって、どこにレンズが有るんだい?」。
そう言われた春菜は、携帯を持ってカメラ機能を出して、
店主に構えて、シャッターを押した。
その撮影した画像を、店主に見せた。
店主、「お~..」。
驚いて腰を抜かす寸前だった。
店主、「わ..解ったよ宇宙人さん、幾らで買って欲しいんだい?」。
恐々聞いてみると、春菜は、「私は宇宙人ではありません#」。
怒りながら、強く強調した。
店主、「わ..解ったから、金は出すから幾らだい..」。
この時点で、強盗に入られた店の空気だった。
春菜は思いに更ける、心の中でこの時代に生きる決心をした。
そして店主に、「300万」。
告げると、店主はカウンターの奥の、自分の家の居間に足を運んだ。
奥から、チンと小さく音が聞こえ、しばらくすると、札束を両手にカウンターにそれを、
ドン!と、音を立てて置いた。
まさに、”持ってけ泥棒!” 状態だった。
春菜はそれを、先ほど携帯を出したスカートのポケットに押し込み、
店主は、携帯を手にして、見回していた。
店主、「これは充電して使うのかい?」。
春菜、「そうです、でも充電器忘れました」。
店主は携帯の後ろ側に、蓋がある事に気づいた。
そこを開けると、見たことも無い四角い電池を見て、「こ..これが電池なのかい?
日本語で書いて有るが、地球人に売りつける為のサービスかい?」。
春菜、「何度も言う様ですが..#、私は..」。
店主は口を挟んで、両手を前に出して上下に振って、「解った解った!未来人さん、
充電器は要らないよ、近くの電気屋に相談すれば、何とかなりそうだからいいよ」。
春菜は、ふて腐れながら、「やっと解ってくれましたね#」。
店主は、「やれやれ、この悪い夢、早くさめないかな」と、ぼやいた。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




