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第八章、復刻2

卸本町の蜃気楼オリジナル文章

http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1515222.html

そして次の日、良子と春菜は会社も終わり、会社の前で佇んでいると、



黒塗りの国産セダンの高級車が、ゆっくりと遣って来て、二人の前で止まった。



運転席の窓が開くと、サングラスを掛けた柿本が、「待たせたな..」と、答えると、



良子と春菜は何も言わず、後部座席のドアを開けて車に乗った。



そして車は走り去った。



車の中で良子は、「ずいぶん羽振りが良いのね」。



柿本、「オートバイ以外で、俺の乗り物に乗るのは、初めてだったな..」。



春菜、「オートバイの方が、もう少し親近感沸いたかも..」。



柿本、「オートバイは三人も、乗れないだろ!」。



良子、「馬鹿、そう言う意味じゃ無いわよ、偉そうに見えるって嫌味よ」。



柿本、「.....」。



そして駅南のマンションに辿り着くと、



当時では珍しい、8階建てのエレベーター付きマンションだった。



地下駐車場に車を止め、エレベーターで最上階まで上がった四人。



エレベーターが最上階に辿り着くと、廊下には赤いじゅうたんが敷かれ、



まるで高級ホテルの、VIPルームの階を思わせる様な、



明かりはシャンデリアで照らされ、部屋のドアの番号は金色に輝いていた。



辺りを見回す、良子と春菜は心の中で、尋常では無い仕事を営んでいると、



確信したのであった。



部屋は廊下の突き当たりで、その部屋だけは廊下に向かって、ドアが付いている、



所謂角部屋であった。



柿本はドアの鍵を開けている最中、春菜が、「我々が住んでいる角部屋とは、大違いね~」。



良子、「格違いよ#」。



柿本は聞く耳持たず、部屋のドアを開けると、「入れよ!」と、答えた。



中に入ると、まさにお金持ちと言う有様で、



やはり部屋の床は、赤いじゅうたんが敷き詰められ、



観葉植物が置かれ、ソファーも分厚くその前に、ガラスのテーブルが置かれ、



灰皿は金色、葉巻の木箱が置かれ、壁には硝子戸棚が設置して有り、



戸棚の中には、ウイスキーのボトルと、ウイスキーグラスとワイングラスが置かれていた。



柿本は部屋に入ると、鍵を硝子テーブルに置いて、「座れよ」と、



ソファーを指差した。



二人はソファーに座ると、柿本は台所に足を運んだ。



柿本は赤ワインとコルク抜きを手にして、向かいのソファーに腰を落とした。



慣れた手つきで、ワインの封を切り、コルク抜きをコルクにねじ入れ、



ポンと音を立ててコルクを抜くと、その後ろの硝子戸棚に歩いて行き、



ワイングラスを二つ出して、テーブルに置いて、ワインを注いだ。



それを二人の前に差し出した。



良子、「へ~、随分こジャレタた人になったのね。



昔と大違いで、ワインなんて出してくれて」。



柿本、「は~、それも嫌味か..」と、ため息を付いた。



春菜はワインを口に付け、「ん~、フランス南部地方の、赤かなぁ..」と、



ワイングラスを回して、「この色の濃さと、土の味が若干混じるこの味は、



独特な風味を跡に残すから」。



良子、「あんた、違いが解るの?」。



春菜、「私、ワインにはうるさい方なの」。



柿本、「さすが、俺の娘..」。



良子、「あんた#!。青森に居た頃は、安い焼酎しか飲んでいるの、見た事無いわよ#」。



柿本、「.....」。



良子、「賢、それでこの子が、下ろした娘の生まれ変わりだと、



どうして解ったのよ?」。



柿本は、葉巻の箱を開けたら、普通のタバコが入っていた。



それを口に銜えて、箱の中にライターが設置してあり、それで火を着けてタバコを吸った。



春菜は、少しコケて、「立派な葉巻ケースだと思ったら、中身は普通のタバコなの..」。



柿本、「俺は、葉巻の味が駄目なんだよ..」。



良子、「それはどうでもいいから、どうして解ったのよ#?」。



柿本は、一服してから落ち着いて、「この子に、頬っぺた打たれた時、



良子に打たれた感覚に襲われたんだ。



二度打たれたが、二度目の時はかなり良子に、打たれた感覚に近くてよ。



良子と春菜の顔が被って見えた。



その時だ!。



この子の目は、俺の視線から外さなかった。



男ならともかく、女で俺をこんなにガンくれた女は、



生まれてこの方、お前とこの子しか居ない」。



良子は呆れて、「それだけの理由?」。



春菜、「それだけじゃない!。私は柿本さんの心も、良子さんの心も伝わる。



その反対で、私の心も柿本さんに伝わり、良子さんにも伝わる」。



柿本、「あぁ、俺に説教しているこの子の思いが、心の底から伝わって来る。



俺は、この子がてっきり成長した、水子の霊かと思ったよ。



それで俺達に、あの世から呪いを掛けに遣って来て、



生年月日を聞いたら、正体をバラスと思って、聞いてみたら、



考えられない事を告げられて、頭が混乱してるのさ!」。


春菜、「水子から言わせると、私の方がかなり、頭がパニくっていますが..」。



柿本、「なんだい、パニくるって?」。



春菜、「パニックを起こすと言う意味です」。



良子、「信じられない事が、あの会社の地下倉庫の、物置で起きたのよ」。



そう言うと良子は、春菜のスカートのポケットを勝手にあさり、



財布を取り出して、福沢諭吉を出して見せた。



柿本は、それを手渡され、「やけに本物らしい、おもちゃだなこれは..」。



柿本は 一万円札を手に取り、裏にして見たり透かしを見ていた。



良子、「本物の一万円札よ!」。



柿本、「本物?」。



春菜、「私の生まれた年は、昭和59年です」。



柿本、「59年?。15年後の未来って事か?」。



良子、「あの地下倉庫は、40年後のこの土地と繋がったのよ!、一瞬だったらしいけど」。



柿本、「これが40年後のお札か?。品祖だな..」。



良子、「ついでに、おもちゃの500円玉もどう?」と、銀貨を渡した。



柿本、「500円玉?。将来500円は銀貨なのか..」と、見ていると、



柿本、「へいなる10年?」。



春菜、「へいせいです!」。



柿本は、良子に500円玉を返すと、「それで、この子は未来では、幸せに暮らしていたのか」。



春菜、「無事、産んで貰って、学校卒業するまでは、順調でした..」。



柿本、「順調でしたと言う事は、就職してからどうなんだ?」。



良子、「世の中が変貌したのよ。大学出ても就職先が無くて、



派遣労働員と言って、正社員で働かしてくれないから、言わば期間社員でしか、



就職先が無いほど、世の中は不景気に突入しているらしいのよ。



それで東京で派遣で働いて、会社から捨てられたの。



仕方が無いから、地元の会社で就職したけど、仕事も疎らで、その地下倉庫で物置開けたら、



この時代と繋がっていて、入ったは良いけど、戻ろうとした時にはもう、



自分の居た時代には、繋がっていなかったのよ」。



柿本、「昨日これから未来は、景気が上向きだと言っていたろ!」。



良子、「好景気の末には、不景気になって、会社は社員を減らしに掛かって、



大学出ても、新卒者の就職先が、減少傾向にあったらしいの。



春菜が大学を卒業する頃には、求人倍率が僅かになっていたらしいのよ」。



柿本は、タバコを消して、「40年後の未来なのか?」。



良子、「そうよ、この子が嘘付いてるかどうか、あんたなら分かるでしょ!」。



柿本は寄り、頭が混乱していた。



柿本、「結局、俺が悪いのか..。あの時、産んで上げていれば、



この先好景気で、就職にも困らなかった..」。



春菜は、ワインを飲みながら、「それはどうかな?。



柿本さんみたいな人は、成金主義だから、将来不動産も不景気に煽られ、



土地価格も暴落するから、共倒れかも」。



柿本、「春菜ちゃん、当分この時代に居るんだろ?」。



良子、「帰りたくても、もう帰れないのよ#」。



柿本、「頻繁に繋がらないのか?、その物置の未来に繋がる道は?」。



良子、「開いてたら、とっくに未来にこの子、帰しているわよ。



未来では親御さんも居るのよ!」。



柿本、「それなら、未来の事業の成功法教えてくれよ!。



家族全員で、幸せ街道まっしぐらだ!」。



春菜、「まず危ない筋から、手を引く事ですね..」。



柿本、「......」。



良子、「誰が家族よ#?」。



春菜、「結局、利用された暁には、尋常では無い結末が待っています。



成金の末には必ず、大きな痛手を伴います。



何時の時代でも同じです。



その時、良子さんも巻き添えになり兼ねません。



利用されてるの、柿本さんも薄々感付いているでしょ!」。



柿本は徐に、窓際に歩いて行き、カーテンを開けて、



街の明かりを見つめて、「長くは持たないとは思ってる。



一度足を突っ込んでしまうと、直ぐには戻れない。



だが必ず足を洗う」。



そして二人に振り向いて、「良子、結局俺は愚か者だ。



見返して遣りたい気持ちが、周りの目を気にして金も無く、



お前が宿した子供も、未来で路頭に迷わせた。



時間をくれ、必ずお前が認める奴になるから..」。



良子、「好きにしなさいよ。私はあんたの事なんて知らないわよ。



私はこの子を取り戻しただけで、十分だから、



あんたが幸せになりたければ、あんた自身で考えてよ」。



そう言って立ち上がって、この部屋から春菜を連れて出て行った。



その時、柿本が心に抱いたものは、孤独感だった。




この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません

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