第七章、恋心2
卸本町の蜃気楼オリジナル文章
http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1515222.html
そして春菜と杉浦は、トラックで他の文房具店に、納品していた。
その帰りの道中、トラックの中で。
春菜は、納品書を見ながら、領収書と照らし合わせていた。
春菜、「これが本来、仕事で有るべきよね..」。
運転しながら杉浦は、「春菜ちゃんの時代では、もうこの作業は無いの?」。
春菜、「うん、先ほどの様なトラブルは無いですよ。
ネットアクセスと言って、電話回線をコンピューターに繋いで、
常時接続して、お互い同じ納品書がコンピューターの画面に、映し出されるから、
こちらの間違いだとは、言わせない仕組みですね」。
杉浦、「それはクールだね~」。
春菜は笑いながら、「ロックンローラーみたいな、表現ですね」。
杉浦、「オ~イェ~、驚いたね!。未来人からのホットな情報だ!。
40年後もロックンロールは、存在するんだね!」。
春菜、「嫌いじゃないですよ、ロカビリー」。
杉浦、「ロカビリーと来たか!」。
春菜、「私の時代でも、拘ってる人は熱いですね。
どのバンドかは覚えてないけど、70歳になってもロカビリーしていて、
一曲歌って、楽屋で点滴してから、またステージに出る高齢バンド、聞いた事があります」。
杉浦は大笑いで、「本当かい?。それはグットだね」。
春菜、「確かに、グッと来ますね..」。
<作者:時代の流れで、感情表現がずれています。>
トラックは一路、卸本町に向かっていたが、
杉浦の誘いで、途中ティータイムをする事になった。
喫茶店で..。
二人はホットコーヒーを飲んでいた。
春菜は、喫茶店のメニューを見て。
春菜、「この時代は、私から言わせると、何でも究極の価格破壊を、起こしてる値段です」。
そうこの時代は、コーヒー 一杯100円前後だった。
地方の物価では50円で、コーヒーを出す所もあった。
杉浦、「コーヒーの味も、値段と比例して破壊してるかな?」。
春菜、「とんでもない!。逆にグレードアップしています。
このブルーマウンテン、こんな香りが良くて、味わい深いコーヒー、
今までファミレスで飲んだ事無いし、喫茶店だって有りません!」。
杉浦、「ファミレスって、ド~はド~ナツ~のド~!の、皆で歌って楽しい喫茶店?」。
春菜は、口に手を当て、「あ..、ごめんなさい。ファミレスとは略語で、
正式名称ファミリーレストランと言って、この時代の高級な洋食店を、
庶民的で気軽に入れる、大型レストランにした飲食店です」。
杉浦、「なるほど~!。未来に在る物を、
この時代に変換して例えるの、難しいね..」。
春菜は、情けない顔をして、「そうなんです。社員に未来の事を尋ねられると、
どう解釈して良いか分からなくて、理解して貰うの大変なんです」。
杉浦、「我々この時代に、生きてる者からすると、
40年後はかなりの、変貌を遂げてる様だね..」。
春菜、「でも私は、この時代の方が好きです。
毎日忙しいけど、皆な優しくてがんばれば、高評価してくれて、
杉浦さんも毎日、仕事のスキルいや..、細かい仕事の要領を、丹念に教えてくれるし」。
杉浦、「春菜ちゃん、まじめに仕事こなすから、皆な目を掛けてくれるのさ!」。
春菜は、俯き加減で、「杉浦さん..、情に厚い人ですね。
会社でも皆に好かれているの、分かります。私も大好きです」。
杉浦、「有難うその言葉、俺にとっての最高の贈り物さ」。
春菜は顔を上げて、微笑んでコーヒーを一口飲んで、「今度バイク乗せて欲しいの..」。
杉浦、「あぁ!、今度の日曜日、ぶっ飛ばそう」。
そんな二人は、この空間が優しく包んでいる様だった。
帰り際、車の中で運転しながら杉浦は、かなり強く押さないと変わらない、
プッシュボタン式の、カーラジオをいじると、
洋楽のスローバラードが流れて来た。
AMラジオで音が割れて聞こえたが、車内は何となくいいムードになっていた。
西の空には夕日が沈み掛けていた。
すると春菜は、「そうなんだ..、証券会社お勤めの方と婚約したんだ」。
杉浦、「まあ、俺みたいに夢ばっかり追っている奴より、
将来有望な大手の証券マンと、一緒になった方が、
安定した生活を送れるからね..」。
春菜は、その時俯いた。
春菜、「そこ..」。
杉浦は、その表情から、何かを感じて、「そうか..、そうなんだ..」。
実は、将来破綻する証券会社だった。
春菜、「言わなければ良い事なんですよね。でも..」。
実は春菜は、杉浦に強い恋心を抱き始めていた。
杉浦は、その表情を見て、「いや、いいんだ!。
その正直な所、俺には熱く受け止められたよ」。
春菜、「結局、安泰と呼ばれた企業は、
業績を大幅に落として、公的資金が国から導入されました。
銀行も一時は、預けている側の利子を大幅に下げる事で、黒字になりましたが、
好景気の時は、世界でもAランクの銀行は、
最低ランクに一途けられ、逆に中国が高度成長期を向かえ、
仕事も、企業は中国に流れて行く傾向になりました」。
杉浦、「香織(元カノ)、別れ際に、『杉浦君、そんな叶いそうも無い途方も無い、
夢なんて追ってないで、安定した高収入の、銀行マンにでもなりなさいよ』と、
言われたが、変貌を遂げたのは、現在ここに存在する、
優良企業も同じなんだ。悪い意味で..」。
春菜、「私も大学を出るまで、現実を知りませんでした。
いや、逃避して来たかも知れません。
大学で経理を振興すれば、企業でも高いポストに付ける。
今学んでいるものは、即実線に繋がる。
これだけ、高等な知識を積めば、企業が目を付けてくれるはず。
でも現実は、私のレベルの人達は、掃いて捨てる程、居ました」。
杉浦、「未来の大半はもう、学歴なんて当たり前で、
それ以上の発想を持った人材が欲しいんだね。
まさに宇宙人レベル」。
春菜、「そう、私はこの時代では宇宙人だけど、
40年後は、ただの在り来たりな、どこにでも居る人材なの。
人材派遣会社と言う、誰でも同じコマを必要な時だけ、会社に運び、
こき使われて、ボロボロになったら、即パーツを交換するみたいに、
派遣会社から、新しいパーツが届き、また同じ様に使われる」。
杉浦、「そうか、俺の抱いてる夢が、
現実になる思いが少し増したよ、勇気付けられた」。
春菜は、杉浦に顔を向けて、「へ?、どう言う事」と、少し笑った。
杉浦、「俺みたいな、馬鹿な夢を追っている奴は、将来誰にもコキ使われない、
オリジナリティー溢れる、味のある奴になれるって事さ、アハハハハ!」。
春菜はその時、杉浦を心の底から愛し始めた。
春菜の居た時代の、同じ歳には無い自由感と、
その大きな器が寄り一層、恋心を抱かせたからだった。
春菜はその時、無意識に杉浦が添えていた、チェンジレバーの手の上に、
自分の手を重ねて、「このまま遠い遠い、未来まで一緒に歩んで行けたら、
私はもう何も要りません」。
その時、杉浦は沈む夕日が眩しく、片手でサンバイザーに引っ掛けて有った、
サングラスを掛けて、「あぁ、差し当たりこのまま、
人生を歩む、スタートラインに行くよ!」。
春菜、「へ!、どこですか?」。
杉浦は微笑んで、「今勤めている、会社だよ」。
春菜は笑ったのであった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




