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第五章 追憶2

卸本町の蜃気楼オリジナル文章

http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1515222.html

しばらく砂丘から、海を見つめる二人がいた。



そして春菜が、「綺麗、こんなに昔は、海が綺麗だったなんて..」。



良子、「これでも綺麗な方なの?。よほど未来は、海が汚れているのね..」。



春菜、「もっとドス黒くて、浜辺にゴミも多いから..」。



波音を聞きながら、自然と癒された春菜、俯き加減になった。



春菜、「私、鬱病なんです」。



良子は、春菜の表情を伺うと、「世知辛い未来で、何を宛てに生きて行って良いか、



解らなくなってしまったのね」。



春菜、「私、この広い海に溶け込もうと、思いました」。



それは海に、身を投げる事を意味していた。



春菜、「東京で挫折して、地元に戻って来ても、事務員として働く正社員募集は、



アルバイト雑誌を見ても、ほんの数人。雑誌に載っている会社に電話しても、



どこも直ぐに、『募集人数埋まりました』と、言われてしまいます。



工場での労働も、派遣会社を通さないと、仕事に有り付けず、



途方に暮れて、この海を見つめていたら、遠く海の彼方に、蜃気楼が浮かんだのです」。



良子、「蜃気楼?どんな風景の?」。



春菜、「大勢の人々が、見知らぬどこかの町で楽しそうに、



会話しながら歩いている風景」。



良子、「それは、卸本町なの?」。



春菜、「そう、あれは多分この時代の、卸本町だと思います」。



良子、「昔SFの本を見ていて、遠い宇宙には、ブラックホールが有り、



その中に入ると、『どこか見知らぬ次元に飛ばされる』と、見た事があるけど、



それなのかな?」。




春菜、「そうかも知れない..。結局私は精神科の病院に通いながら、



家で鬱病を療養する事になり、ある時、自分が居た時代の、あの会社の社長の親友が、



私の父の親友だったの。



その伝で正社員として、働ける事になって、入社してみたけど、



遣る事と言ったら、朝パソコンそう、コンピューターに電源を入れて、



電話番で、めったにお客様から電話なんて、掛かってこなかった。



クレームや注文は、問屋と小売がコンピューター同士で、アクセスするから、



午前中に一回、午後に一回、運ぶ社員が会社に帰って来て、



運ぶ社員が、注文の品をプリンターに落として、倉庫から注文した品物を持って、



トラックに乗せて、後は会社が終わる直前まで帰って来ないから、



会社には常に私だけなの。話し相手もいなくて、いつもFMラジオとお友達。



そんな退屈な日々を、一週間送って、午後に会社でうたた寝をしていたら、



地下倉庫から物音がして、開けた事も無い地下倉庫の扉を開けたら、



この時代に遣って来たの。でも夢を見ている様な気がしてならないの」。



良子、「時代って、何時でもそう。



まるで昨日の事が、嘘の様に常識が変わり、



良くも悪くも、風潮が変わる。



まるでこの海の様に、穏やかな海と荒れてる海では、様子が 一変する。



時代も同じで、戦争で人々は、戦火を逃れ、飢えを凌ぎ、



若者の多くは、『勝て来るぞ!』と、家族、恋人と離れ、青春を捨て、



戦火に立ちはだかった。



絶望の極地を、味わってから20年後。



皆豊かな時代が訪れて、ゴゴー喫茶で踊り明かし、



ボウリング場で、スコアーを競う事に、闘志を燃やしている。



その果ては、春菜の居た時代に繋がり、



若者の多くは、夢と希望を失い、先行き不安と失業、就職難で喘ぎ、



結婚、出産、住宅などを拒否して、こもりがちなり、



街は消滅して行く様になる」。



春菜、「あなたは、頭の良い人だから、きっと未来では、成功してると思います」。



良子はこの時、春菜が始めて、自分と同格な態度で、



もの事を言った様に、感じたのであった。



時代は変わっても、潮風は二人の心を癒していた。



それは遠く離れた地平線が、二人の絆を結んで行くからであろう。

この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。

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