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第五章 追憶

卸本町の蜃気楼オリジナル文章

http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1515222.html


日曜日、良子と春菜は会社から、東へ1キロの、



未来に建つはずの、春菜の自宅の土地に佇んでいた。



二人はお互い、色違いのタートルネックのセーターを着て、



ジーパン姿で、広大な畑でおしゃべりをしていた。



春菜、「わ~、すご~い!、信じられない」。



良子、「何が?」。



春菜は、両手を広げて、「だってこんなに広大で、素朴な風景が広がってるんだもん」。



良子、「あんたの住んでたここは、ビルだらけなの?」。



春菜、「確かに畑や田んぼは多いけど、こんなに家が無いなんて..」。



良子、「一部宅地化されたのね..」。



海に近い白羽町のこの地区は、昔は畑しか無かった。



春菜、「そう..、私の親は、市の普通の職員だったけど、



家と土地だけは広くて、幼い時は庭に公園みたいに、



遊具が置いてあって、小さなブランコや滑り台、



砂場にベンチに、そう私だけの小さな公園が有ったの」。



良子、「一人娘で、可愛がられたのね。きっと..」。



春菜、「目の前の..」、そう言って遠くを指差し、「あそこかな..?。



片側二車線、中央分離帯を挟んで、両方向合わせて4車線の、国道1号線バイパスが、



通っているの。幼い頃は暴走族が夜な夜な、爆音立てて走り回ってた」。



良子、「こんな畑のど真ん中に、そんな大きな道路を通すのね..、未来は」。



春菜は、遠くを見つめて、「空気も違う」。



そう言って、大きく深呼吸をした。



良子、「環境破壊、排出ガス、未来は空気も相当汚れているのね」。



春菜、「一時前寄りは、トラックの排ガス規制のお陰で、



真っ黒い煙を出して走るトラックは、減ったけど..、



この環境には、辿り着いてない..」。



そして二人は歩き出した。



どれくらい長く、農道を歩いただろうか、松林を抜け砂丘に辿り着いた。



昔は有名だった中田島砂丘。



砂丘の山を、幾つも乗り越えて行く春菜は、「わ~、噂では聞いていたけど、



本当にこんな砂丘が有ったんだ!」。



良子、「あんたの時代はもう無いの?」。



春菜、「一つも有りません。一箇所だけ、



凧場の会場入り口付近に、人工的に作った、小さな砂丘が一つ有るだけで、



砂の下は赤土が巻かれています。



後の入り箇所は、松林を抜けると直ぐ海が見えたから..」。



良子、「どうして?。コンクリートで使うから、砂丘の砂持って行ったから?」。



春菜は、首を傾げて、「さ~?、なんでだろう?」。



実は、中田島砂丘の侵食は、ダムのせいで、



天竜川上流の大きな石が、下流に流れてくる時、転がって削れて、



小さな砂になり、それが海岸で放射状に広がり、砂に風が吹くと山になり、



それが砂丘になります。



ですが上流の、佐久間ダム、秋葉ダム、船明ダムの様なダムが、



石を塞き止めてしまい、年々海に削られて行く事から、



砂丘が無くなって行きました。



要約いくつもの砂丘を乗り越えて、海が見えた。


この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。

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