第三章 レトロな街2
卸本町の蜃気楼オリジナル文章
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バスは寮が在る、山下町に到着。
寮の入り口で、女性社員を降ろすと、立ち去って行った。
女性社員が、玄関を開けると、ジリジリジリと音がした。
女性社員は話に華を咲かせながら、寮の玄関で靴を脱ぎ、
自分専用の下駄箱の靴の配置に、並べて行った。
良子も靴を脱ぎ、春菜に、「春菜、ここの小島と書いて有る所に、自分靴を置きなさい」。
そう言って、置いてある靴を退かして、その靴を下駄箱の上に置いた。
春菜は言われた通り、靴を脱ぎそこに自分の靴を置いた。
それを見た良子が、「あら..、かわいいボンボンが付いた靴ね..」。
春菜、「はい、ネットで安く出てたので、買いました..」。
良子、「ネットで買った?。あんたの時代は、デパートのバーゲンは、網持ってすくうの?」。
春菜、「あ..あ~、その説明は後日..」。
良子、「....あ..そ!」。
そして玄関の先には、急な直線階段が有り、天井も低くかった。
屈む様に、二人は階段を上って行った。
その天井には白熱灯が一つで、木の香り漂う春菜にとっては、癒しのレトロな空間だった。
春菜は、「わぁ~~、ステキ~!」。
その落ち着いた空間が、嬉しかった。
良子、「どこがステキなのよ#、このボロ家の..」。
この時代の人からすると、単なるボロ家にしか過ぎなかった。
風が吹くと、木の枠の窓はカタカタと、音を放って揺れた。
遠くではあったが、風に乗って電車の踏み切りの、チンチンチンチンと言う、
シグナル音と共に、ガタンガタンガンと、微かではあるが聞こえて来た。
春菜にとっては、このシチュエーションは、映画の世界でしか、
体験した事が無く、自分の住んでいた密閉され、防音完備の家寄りも、
とてもステキな住まいに、思えたのであった。
春菜は、その時、「感動ぉ~~!」。
声を大にして、言い放った。
良子、「はぁ?。未来の人は、おかしな美的感覚ねぇ~」と、呆れたのであった。
長い廊下を歩いて一番奥の部屋が、良子の部屋であった。
蝶番の鍵を解いて、扉を開けた。
真っ暗な部屋に入ると、良子は天井に手をかざして、何かを探っていた。
すると、紐を掴んだ様でそれを引っ張ると、丸い蛍光灯が、カチ、カチカチと、点灯した。
中は三畳一間ではなく、以外に広くて八畳一間で、押入れがあった。
春菜は部屋に入り、見回していた。
床は畳で天井は木目調、ふすまの押入れに、古風なちゃぶ台、
木製のタンスに、布団が二枚たたんで置いてあった。
春菜はその時、「すてき~!、香りがとてもいい..」。
良子、不機嫌な表情で、「あんた、頭どうかしたのではないの#?。
あまりに自分の居た時代と、かけ離れ過ぎてショックで」。
確かにこの時代でも、この趣はかなり時代遅れで、
家屋の多くは、窓や玄関などは、サッシだった。
春菜、「そんな事ありません!、素敵です..」。
良子、”はぁ”っと、ため息を付いて、「40年後の未来人は、思考が宇宙規模で、
我々地球人は、理解が出来ないわ..」。
春菜、「だから、私は宇宙人では、ありません#」。
春菜は、念を押した。
良子の嫌味で、からかわれたとも知らずに。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。