第一章 夢?
卸本町の蜃気楼オリジナル文章
http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1515222.html
卸本町の蜃気楼
パターン1
未来からの訪問者
原作:Shiny Pastel Moon
ここは、寂れかけてる卸町。
40年も前は、街から独立した、田んぼのど真ん中に栄えた、卸町として賑わっていた。
時が経ち、学校近くの文房具店、町の洋品店なども、
大手DIYや大型スーパーの 一角に収まり、
今では、まだ僅かながら残る、学校近くの小さな文房具店や、
昔からの、高齢者のお得意さんで、保っている地区であった。
この街の様子は、40年前から変わりは無く、レトロで昔を懐かしむなら、
最高の場所である..。
中川春菜(25)。
東京の大学で経理学部を振興。
卒業後、就職戦線に漏れ、
大手の会社で派遣社員として働いていたが、
派遣切に遭い挫折して、地元に帰って親の伝もあり、
この町の文具の卸問屋に、勤める事になった。
だが、今では問屋と小売がパソコンでアクセスするので、
事務の仕事など、最後の集計をプリンターで、落とすくらいしか仕事が無い。
小売からのクレームも、直接電話でのやりとりはまれで、
大概は電子メールで送られて来る。
従い、男手は納品に出払っているので、この職場は春菜ただ一人だった。
とても退屈だった。
午後の2時半、ここに就職して、まだ一週間だったが、すでに業を煮やしていた。
イライラの末には、眠くなる。
自分のデスクには、パソコンと小さなラジカセが置かれ、
春菜はラジオのスイッチを切った。
頬杖を付いて、うたた寝をする春菜。
しばらくすると、この職場の奥の、地下倉庫に通じる扉の向こうから、
ガタン!と、音がした。
ハッっと、目を覚ますがまた、眠ってしまった。
しばらくすると今度は、キーバタンと、扉が閉まる音を耳にする。
今度は驚いて完全に目を覚まし、この職場の地下倉庫に通じる、
扉に駆け寄り、咄嗟に扉を開けたが、誰か居る様子は無かった。
急に恐怖を生じる。
扉を開けたまましばらく、地下に通じる階段を見詰めていた。
なんの気配もない。
階段の下は真っ暗で、何気なく階段の電気を点けて、
地下に下りて行った春菜。
カツンカツンと音を立てて、地下に辿り着くが、在庫のダンボールが置いて有るだけで、
何も気配は無かった。
すると何も置かれていない、縦長の白い棚の向こうに、青くて分厚そうな、
大きな扉を見つけて、「あれ..、こんな所に扉なんてあったかな?」。
そう呟いて、細長い棚をどかして、その厚いドアノブを捻り、扉を開けてみた。
すると、扉の枠から光が漏れて、その扉の向こうに足を踏み入れると、
この倉庫と同じ所が、もう一つ存在していた。
そこには、複数の人達が、在庫整理に追われていた。
春菜と同じ女性の事務の服装で、男性社員と話をしている人や、
用紙を見ながら、在庫確認している女性、
在庫を持ち上げ、階段を上がって行く男性やら、
扉の後ろとこちらでは、明らかに活気が違っていた。
何気なく、その人達の間をすり抜けて、階段を上る春菜。
階段を上がり切ると、扉は同じでもまだ目新しい扉で、
その中からは、聞いた事の無い人々の声が盛んに飛び交っていた。
その扉を開けると、先ほどまで居た職場と似ているが、
人々のヘアースタイルが古風で、角刈りの男性から、ロングヘアーの7:3分け男性、
女性は、ウェーブが掛かりセミロング調。
机には黒い電話がジリジリ鳴り響き、パソコンが置かれている様子は無く、
帳面を開いて書き込む姿が見られた。
そこに佇んでいた春菜は、急に肩を叩かれた。
年の頃は30歳後半の、ベテラン女性社員の様な人が、「あら..、新人さん?。
領収書溜まっているのよ、早いとこ片付けてくれるかしら..」。
そう言って、この職場の西側のデスクを指差すと、誰も座っていないデスクの上には、
領収書が山積みになっていた。
するとその女性は、春菜の耳元を手で覆い小声で、「先月突然失踪した、よこしま..あ、
小島 直子さん男絡みらしいのよ、去年入社した田口君も、同じ日に失踪してるのよ..」。
春菜、なんの事だか解らず、ぎこちなく、「はぁ..」。
頷いたのであった。
そう言われて、何となく言われたデスクに、椅子を引いて座ると、
パソコンが無いので、その机の引き出しを開けると、そろばんが有ったので、
手に持って見詰めた、「これで計算するのかなぁ?」。
そんな姿を見ていた、隣のデスクの女性が、「あなた、そろばんで計算するの?。
能率悪いから、これ使って」と、何やらデスクの下から何かを持ち上げた。
それを春菜のデスクにドン!と、音を立てて置いた。
春菜、「こ..これ何ですか?」。
その女性、「これ、最新型の電気計算機よ!」。
<作者:この当時は、電子と言うより、電気計算機と言った方が良いほど、デカイ物でした。>
春菜、突然大笑いで、「アハハハハ..」。
その女性、「何がおかしいのよ..」。
春菜、「だって分厚くて、重そうなんだもん」。
その女性、「何言っているの、前の計算機の重さも厚さも半分よ..」。
春菜、「え~、何処が..」。
女性、「どこがって、これが..」。
春菜、計算機を持って見た所、15インチモニターの、ノートパソコン寄りも重かった。
春菜、「これが計算機..」。
何気なく春菜は、入り口の横のカレンダーに目をやった。
昭和44年 11月15日 火曜日 西暦1969。
春菜は心の中で、(夢..夢を見ているの..)、そう呟いた。
その姿を見た隣の女性が、「どうかしたの?」。
そう言われると、春菜は咄嗟に、「い..いえ、何でもありません」と、答えた。
机に積まれた領収書の下には、黒い帳面が有った。
帳面を開くと、ワークシートその物が、手書きなので驚いた。
春菜は仕事に着いてからは、パソコンでしか数字を入力した事が無く、
手書きはあまり、記入した事が無いので驚いた。
春菜、「すご~い!、手書きなんだ!」。
隣の女性、「当たり前でしょ、何か疑問でもあるの?」。
首を傾げた。
春菜、どぎまぎしながら、「え..あの、この頃、手書きはご無沙汰なので..」。
隣の女性、「はぁ~?」。
この時代、パソコンを知らない人にとっては、意味不明な返答だった。
不思議な子だとは思ったが、仕事が溜まっていた隣の女性は、自分の仕事に着いた。
春菜は、領収書を整理して、計算機のスイッチを入れた。
その時何気なく、隣の女性が、「ねえ、あなた計算機の扱い方解るの?」。
そう答える女性に、春菜は、「は..はい!、解りますよ」。
隣の女性は、そのぎこちない返事に、不安だったが、見届けていた。
すると春菜は、軽やかな手捌きで、領収書だけを見て、
ブラインドタッチで、計算機のボタンを叩き始めた。
それを見た隣の女性は、目を丸くした。
この当時、ここまで計算機の扱いの、手捌きが鋭い社員は、居なかったので驚いた。
隣の女性、「あ..あなた、もしかして..宇宙人?」。
春菜、手を止めて..、「は?」。
春菜はその言葉に、どう言葉を返して良いか、困ってしまったのであった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。