第四十七話 最後の観測
巨大な目が開く。
世界そのものが、光に包まれた。
観測。
それだけで、全てが固定されていく。
崩れていた空間。
混ざっていた世界。
ノイズ化していた存在。
全部、“一つの形”へ押し込められる。
未来の悠真が苦しそうに膝をつく。
白い侵食が全身へ広がっていた。
もう半分以上、“観測側”に飲まれている。
結衣が駆け寄る。
「駄目!!」
未来の悠真は静かに首を振る。
「来るな」
その声は優しかった。
今までで一番。
悠真は動けない。
理解してしまった。
未来の自分は。
“結衣を守るために壊れた”。
そして。
今の自分も、同じ道の上にいる。
巨大な目が、未来の悠真を見つめる。
「異常因子を固定」
白い杭が増える。
肩。
腹。
心臓。
次々と突き刺さる。
未来の悠真が血を吐く。
それでも笑っていた。
「……はは」
「やっと終われる」
結衣が涙を流しながら叫ぶ。
「終わらない!!」
未来の悠真が目を細める。
「結衣」
その呼び方は、兄そのものだった。
「ごめんな」
「お前を、“存在しないもの”にした」
結衣が首を振る。
「違う!!」
「私は……!」
言葉が詰まる。
結衣自身、もう分かっている。
自分は、本来存在しない。
“忘れられなかった記憶”から生まれた存在。
なのに。
未来の悠真は笑う。
「それでも、お前は生きてた」
静寂。
「それだけで、よかった」
その瞬間。
巨大な目が、最後の光を放つ。
世界全体へ、“観測確定”が始まる。
レンが叫ぶ。
「まずい!!」
先行保持者も顔を歪める。
「世界が固定される!!」
もし固定されたら。
結衣は消える。
未来の悠真も。
全部、“正しい世界”へ修正される。
悠真の呼吸が止まる。
結衣が震えながら笑う。
「……兄貴」
「ありがとうね」
その顔。
“自分を消そうとしてる顔”。
悠真の中で、何かが切れた。
「ふざけるな」
黒い右腕が脈打つ。
未来の悠真が目を見開く。
「待て」
だが止まらない。
悠真の瞳へ、黒いノイズが広がる。
“最深部”の力。
世界の外側の力。
悠真が空を睨む。
巨大な目。
観測そのもの。
悠真が、低く呟く。
「だったら」
黒い右腕が、空間を裂く。
「観測する側を、壊せばいい」
その瞬間。
巨大な目へ向かって、黒い亀裂が走った。
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