表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
てのひら無双 ~精霊に愛された人形師ときゃわわぬいぐるみ~  作者: 鮪野登呂介
王都アルヴェリア編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/37

女神様、またですか?

女神が山の青草の上に座っている。いつもの豪華な天上界じゃなく、少し気まずそうに。しろが夢に紛れ込んで女神を目で値踏みするところが書けてよかったです。

夢の中は、明るかった。


山田楓は、それだけで女神だと識別した。夢の中はいつも少し間が抜けている。その間の抜け具合が、このやけに大きい女の気配とちょうど合う。


女神アルテミアは、いつもの天上界の豪華な感じではなく、なぜか少し気まずそうに山の青草の上に座っていた。何かを言い出す前の、言葉を探している顔をしていた。


「やー、カエデ!」


豪快な声だった。やっぱりこれだ、と楓は思った。


「えっとね、実はちょっと言い忘れてたことがあって」


「また後出しですか」


「後出しじゃないの!」女神が少し拗ねた。「該当する言葉が思いつかなかっただけだから」


「おなじです」


女神が少し気まずそうにしながら、それでも続けた。「この世界にはね、世界貢献ポイントっていう仕組みがあるんだよ」


「なんでそれを今言うんですか」


「言い忘れてたんだから仕方ないじゃない」


「『仕方ない』で済ませてる女神のシステムってなんですか」


女神が少し目を泳がせた。「プラス面として的確に伝えたじゃない!」 楓は返さなかった。返す気になれなかった。


---


説明は簡潔だった。


この世界で誰かのために誠実に動くと、ポイントが貯まる。誰かを助けたとき、何かを作って喜んでもらったとき、理不尽なことから誰かを守ったとき。誰かのお情けで計算して動くんじゃなくて、ちゃんと心が込もっているかどうかが大事。ポイントが一定量に達するとスキルが深化する。深化が何を変えるかは、なってみるまでわからない。


「……わざわざ来て、それだけ言うんですか」


「言い忘れてたんだから仕方ないじゃない」


「それさっき聞きました」


女神が少し気まずそうな顔のまま、今度は少し得意そうに言った。「かなり貯まってるよ!」


「なんでそこだけ得意そうなんですか」


「カエデって、気づいてないだけで結構いろんな人を助けてるし、いろんなものを作ってるし、いろんなことから守ってるじゃない。平均よりぜんぜん多い」


「何の平均ですか」


「まあ、そのうち深化するから楽しみにしてね」女神が笑って、浮かび上がるように手を挙げた。「深化したらいろいろ変わるから。スキルは一つじゃないし、深化も一回じゃないかもね」


「……それもまた後出しですね」


「後出しじゃないかっ——」


---


そのとき、女神が得意そうな顔をわずかに歪めた。


おかしい、と楓は思った。女神の視線が楓の少し横にずれている。


楓が振り返ると、しろがいた。


夢の中に、しろがいた。いつもの青い目で、女神の方を静かに見ていた。


女神が引いていた。密かに、だが確実に。楓よりずっと大きいはずの女神が、ぬいぐるみサイズのしろに静かに評価されている。


「しろって……ここまで来れるんですか」


しろは小さく耳を後ろに向けた。「……当然だ」というのか「関係ない」というのか、読めない声だった。


「やっぱり自分のはかわいいなあ」と女神がほんわりと言った。


「違います」と楓は言った。「女神の子じゃありません」


「カエデが転生したんだぞ! 転生させたのは私じゃない!?」


楓は少し考えた。「転生はさせてるかもしれないけど、少なくともその後の過程は自分で決めてきたので」


女神が少し黙った。それから「……そうだね」と言った。どこか満足そうな、でも少し寂しそうな声だった。「それが一番いいところだよ。安心した」


---


女神の気配が薄れ始めた。実際に山の青草が視界に戻り始めて、夢の間が埋まっていく。


「あ、そうだ」と女神が最後に言った。「ぽぽに伝えておいて。あの子、ポイントの計算の仕方がわかってるみたいだから」


「何の計算ですか」


「そのうちわかるよ」女神が利口そうに笑った。「まあ、楽しみにしてね」


それで女神は消えた。


山の青草だけが残って、それもすぐに暗くなって、楓は夢の底に沈み始めた。


最後に耳に残ったのは、しろの「……あの女神、うるさい」という、果てしなく淡々とした声だった。


---


目が覚めたら、朝だった。


お茶の支度がした。ルーチェが一階で動き回っている音。港の方から鳥の声。ぽぽが「ぽっ!」と鳴いた。


楓はそのまましばらく動けなかった。


女神の言葉が頭に残っていた。世界貢献ポイント。スキルの深化。かなり貯まってる、と女神が言っていた。


思い当たることがあった。エルミナの子どもたちが笑ったとき。ガルドの孫のエリちゃんがハナを掴んで喜んだとき。ドワンが「つきがいるから道に迷わなかった」と言ったとき。ミアちゃんが初めて笑ったとき。力を使い果たしたしろが倒れたとき、自分がただそこにいたとき。


全部、自分が自分でいただけのことだった。なのに。


ぽぽが楓の肩で「ぽっ!」ともう一度鳴いた。意味は「起きろ」だった。楓は「うん」と言って、起き上がった。


しろは座布団の端で丸まっていた。微動もせず、目だけで楓を見た。楓が「女神、そこまで答えなくてよかったのに」と言うと、しろは小さく耳を後ろに向けた。


「……気になった」


楓はそれを聞いて、はじめて安心した気がした。女神の言ったことが安心の素になったのではなく、しろが気にしていたという事実が。


「ありがとう、しろ」


しろは答えなかった。でも気がつけば、いつもより少し重く楓の膝の上に来て、いつものように丸まっていた。


つきがテーブルの端でこちらを向いていた。ぽぽが「ぽっぽん!」と言いながら頭を目指して、しろに阻まれて肩に収まった。


天下平和だった。

世界貢献ポイント、かなり貯まってる、と言う女神。どう化けるか楽しみにしていてください。楽しんでいただけたら、ブックマークや高評価をいただけると次を書く力になります。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ