第七十四話 古の巨石
ドローンの高度を上げたカイエンの視界に、先行するアクアが戻ってきて前方を遮った。
「カイエン、こっちよ! 何かあるわ!」
彼女は弾むような声と共に、鬱蒼とした巨木の隙間を縫うようにして、斜面上方へと加速していく。
ドローンを操るカイエンも、アクアの姿を見失わぬよう、操作レバーを操る。
森を抜けた先、視界が唐突に開けた……そこは、沈みはじめた夕日に照らされた、なだらかな丘だった。
アクアは、その中心で舞い踊るように、円を描いて飛び回っている。
夕日が照らし出していたのは、緑に飲み込まれ、沈黙を守り続けてきた……朽ち果てた巨石群だった。
「これは、いったい……何なんだ?」
カイエンは、ドローンを低空でホバリングさせ、その異様な光景に目を見張った。
かつてそれは、美しい形を描いていたのだろうが、今は見る影もなく崩れ落ちていた。
ある巨石は根元から折れ、あるものは深い亀裂に太い蔦が食い込み、まるで大地の底へと沈められようとしているかのようだった。
カイエンが、急いでドローンを草原に着地させ、その場に降り立った時だった。
調査を始めようとするカイエンに、歩み寄るアクアの胸元のペンダントが一瞬、鋭く青白い光を放った。
「……え?」
「ん……なんだ?」
アクアが足を止め、自分の胸元に手を添える。
カイエンもその異変を見逃さなかった。
「今、光ったよな……。ガス、そいつは……お前の起源の石に反応したのか?」
「一瞬だったから……わからないわ。でも、何だか懐かしくて、少し悲しい気持ちになってきて……この場所のどこかに、何かが眠っているのかもしれないわね」
一気に緊張感が増したカイエンは、周囲を注意深く見渡した。
風化し、角の取れたこの巨石群は、恐らく人工物でありながら、すでに大自然の一部と化している。
だが、アクアのペンダントが反応したということは、ここが単なる遺跡ではない証拠となる。
「起源の石……と関連する何かが、ここにあるんじゃないか。調査を続けるぞ。ガス、無理はするなよ」
「ええ……でも、見つけなきゃ。クロノスが、私たちに見せたいものが……いったい何なのかを」
夕闇が迫る中、二人は風化した石の輪の中へ、さらに深く踏み込んでいった。
蔦に覆われた巨石の陰に、何かに繋がる手がかりが隠されていることを信じて。




