表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憧れのテラ  作者: 星乃夢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/81

第七十三話 空の者


 数時間が経過し、外界の大自然の洗礼は、カイエンの体力を確実に削っていた。


「……ったく。船を操るより、自分の足でこの根っこを跨ぐ方が重労働だな」


 カイエンは、深く降り積もった枯れ葉と腐葉土に毒づき、足を滑らせながら進んでいた。アクアは心配そうに、カイエンの近くに浮かんで待っている。


「カイエン、無理しないで。少し休みましょう?」


「いや、大丈夫だ。でも……このペースじゃクロノスの座標に着く前に、日が暮れちまうな……」


 立ち止まったカイエンが、何かを思いついたようで、スーツの通信機能を使った。



「ナギ。聞こえるか?……悪いが、空港の物資運搬人で……誰か手の空いてるやつに繋いでくれないか」


 カイエンは、上空で待機中のナギから、空港の物流運搬担当へと回線を繋いでもらったのだ。




『……はいよ、こちら空港物流。おや、この前の……あの新型スーツの兄ちゃんか……どうだい、外界の散歩は』


 スピーカーから野太い声が響く。


 カイエンが自然の中での窮状を伝えると、相手は豪快に笑い飛ばした。


『ハハハ! 宇宙船の操縦桿しか握ってこなかった軟弱な手足には、本物の大地は重すぎたかい。だが無理もねぇ、自然は計算通りにはいかないものだからな。……いいか、飛行船はここらの森じゃ小回りが利かねぇ。特別に、物流用の運搬ドローンを一台、そっちに飛ばしてやるよ』


 その提案に、カイエンの目が輝いた。


「なるほど、ドローンか! 助かる!」



 数十分後、上空から『キィィィィン』というローター音が近づき、一台の使い古されたドローンが樹間を縫って降りてきた。


 それは本来、重量物を運ぶための頑丈そうな作業用機械だった。




 ドローンが着陸すると、物資を載せるための荷台に、一冊の簡易取説と見慣れた形状のコントローラーが置かれていた。


「これは……面白そうだな!」


 カイエンは、まるで新しいおもちゃを手に入れた子供のように、それらをひっ掴んだ……ちょうどその時、再び野太い声で通信が入った。


『取説なんていらねぇだろが……お前さんなら、そいつに跨って、上手いことバランスを取れるだろうよ。幸運を祈るぜ、軟弱者!』


 通信が切れると同時に、カイエンは慣れた手つきで設定を書き換え、自分のスーツとドローンを同期させた。


 ドローンの荷台の前方に跨り、コントローラーのレバーを慎重に倒してみる。


「よし、これで……浮くぞ……」


 ふわりと地面を離れる浮遊感。さっきまでの泥臭い疲労が嘘のように、カイエンの視界が一段高くなった。


「最高だ! 宇宙船とはいかないが、これなら俺の立派な足になるな!……やっぱり、空はいいな」


 器用にドローンを操り、森の隙間を加速していくカイエン。


 その生き生きとした横顔を見ながら、アクアも嬉しそうに森の奥へと進む。



 

 ドローンのモーター音が静かな森に響き渡り、二人の旅のスピードは一気に加速していく。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ