第五十六話 償い
流体金属の異星人ルーナから、流体循環技術と地殻族のプラズマ体の座標データを受け取ったドリフターは、テラ本星へ向かう航路へと戻った。
コックピットでは、カイエンが受け取ったデータを慎重に分析していた。
「地殻族のプラズマ体か……。ルーナの流体通信網によると、奴らはテラ本星の防衛網の最も脆弱な地殻の亀裂の中に潜んでいるらしい。テラに最も近く、最も危険な場所だ」
アクアは、シズマの体内に組み込まれたばかりの流体循環技術の波動を確かめていた。
「シズマの肉体と、ドリフターの船体。流体金属の技術が、テラの規格化を一時的に無視する盾を安定させてくれるはずよ。あとは、最後の力、プラズマ体を見つけるだけね」
アクアは、そのプラズマ体という名を聞いて、過去の記憶が蘇るのを抑えられなかった。
「あの時の……カイエンと私を襲ったプラズマ体も居るのかしら……」
カイエンは静かに言った。
「ああ。あの時、奴らはテラの影響を排除しようとするあまり、起源の石を持つガス(アクア)を排除しようとしてたな。だが、ガスの真心と度胸が功を奏したっけ。今テラが真に崩壊し、悪意の知性として逃げたことを知った今……」
シズマが引き継ぐ。
「彼らが感じる裏切りの痛みは、私たち以上だろう。そして、あの時誤解から襲いかかった罪を償うためにも、彼らこそが最も破壊的な力を解放するはずだろう」
「贖罪の力……か」
カイエンは、深く頷いた。
「メテオのような地殻族は、規格外の物理的な破壊力を持つからな。奴らこそが、中央コアの障壁を砕く総攻撃の火種に最適だ。よし、全速力で座標に向かうぞ!」
ドリフターは、テラ本星へと向かう危険な航路に入った。
テラ崩壊後もなお、中央コアから放たれる残存波動が、全方位から襲いかかってくる。
シズマは、その波動に耐えるため、体内に組み込まれた流体循環技術を起動させた。
「これが生命と非生命の境界なのか……」
シズマの岩石の体が、一瞬、虹色の光を帯びて流動的な輝きを放った。
「安定と流動の、奇妙なバランスだ。長老ザンとルーナの知恵に感謝しかないな」
アクアは、起源の石の波動でもシズマをサポートする。
「でも、この波動はテラの核心に近づくほど強くなるはずよね。シズマ、あなたの盾が崩れる前に、メテオと接触しなければならないわ!」
まもなく、ドリフターのセンサーが、目的の座標である巨大な地殻の亀裂を捉えた。
亀裂からは、想像以上に激しいエネルギー反応が噴出していた。
それは、プラズマ体が、テラへの総攻撃に向けて、火種を溜めている証拠でもあった。




