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憧れのテラ  作者: 星乃夢


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第四十六話 本来の姿


 ファズが率いるイオの教師団が到着すると、アクアとカイエンはブリッジで彼らを迎えた。


「ナイスタイミングだ、ファズ。あいつらは今、ようやく飢えはしのげたが、誰の命令を待つべきか迷っている状態だ」


 カイエンの言葉に、ファズは頷いた。


「彼らは肉体的な光を取り戻した……ここからは思考の光を取り戻す番ですね。ありがとうございます、アクア、カイエン」


 アクアは、調和の学舎の活動に期待を込めた波動を送った。


 教師団がゼニス族の指導を開始する直前、光のマーケットでメニューA(高出力の熱光)の前に座り込んでいた一人のゼニス族の若者が、ファズの前に立ちはだかった。


 彼の名はレグスといった。


「私は指導は受けない!あなたたちの……多様な光は、秩序を乱す混沌だ。テラ様の規格の光こそが安全で絶対的に正しかった!」


 レグスは、怒りを露わにした。


 ファズは、レグスの若さ、そして洗脳の深さを理解していたからこそ……彼は怒らず、静かに語りかけた。


「君の言う……絶対的な正しさは、テラが作り出した偽りの記憶に基づいているんだよ。君の両親や祖父母は、もっと自由で豊かな光を知っていたはずではないかな」


 レグスは鼻で笑った。


「ふざけるな。この星は、昔からテラ様によって管理されていた。あなたたち異形が、我々の歴史を書き換えようとしているだけだ!」


 その時、ファズは、リーフのメテオから託された穏やかなプラズマの光の波動を……レグスの祖父母と思われる年配のゼニス族たちに見てもらうことを提案した。


 ファズがイオで学んだ共感の力と、メテオの感情エネルギーを組み合わせた、穏やかな記憶だった。


「君たちゼニス族の体色は、愛する者と共感した時に、最も美しいシルバーグリーンに輝いていた……どうか思い出してください、君たちの感情が、光合成の効率を上げていたという本来の記憶を!」


 ファズは、自身がキラリの想いで洗脳から解放された経験を投影し、強く訴えた。


 すると、年配のゼニス族数人が、突然頭を抱えた。


「ああ……確か……そうだ……小さな太陽の光……テラの光じゃない……」


「私は愛する子を抱きしめた時……身体が、こんなにも温かい光を求めたのを……思い出した!」


 年配のゼニス族たちは、涙を流しながら、テラが規格化する前の、自然な光に身体が反応した記憶を次々と吐露し始めた。


 レグスは、その光景を見て硬直した。


 彼が絶対的に正しいと信じていたテラの秩序が、最も身近で尊敬していた祖父母たちの個人的な記憶によって崩され始めたのだ。


「そんな……まさか……」


 レグスの制服に包まれたシルバーグリーンの体色が、かすかに震え始めた。


 ファズは、レグスの信念が揺らいでいるのを見て、最後の言葉をかけた。


「テラは君たちの身体から、心地よいという感覚を奪ったのです。君の祖父母が思い出したのは、テラの命令ではない、君自身の身体が求める光なのです。さあ、レグス。思考の光を信じてみてください。君の身体が、マーケットの外にある本当に心地よい場所を求めているはずですよ」



 レグスは、マーケットのメニューではなく、初めて自分の身体の感覚に耳を傾けてみた。


 そして、テラのシステムに依存していた広場から背を向け、自然の光が当たる、遠くの森へと自発的に歩き出した。


 そして、彼の制服は、脱ぎ捨てられた……。


 その背中を見たゼニス族たちは、次々に自らの身体の反応を信じ、光のマーケットを離れていく……。


 

「どうやら私たちの仕事は、終わったようね」


 アクアが穏やかに微笑んだ。


 カイエンは、ドリフターの操縦桿を握りしめながら言った。


「いや、これからだろう。あいつらが、自由という名の光を、どう使うかを見届けるのが、俺たちの仕事だ……」


 二人の旅は、ゼニス族の思考の光が灯ったことを確認し、新たな星へと向かう。


(ゼニス編)完



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