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憧れのテラ  作者: 星乃夢


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第四十五話 光の市場


 ゼニス族の生命を救うため……カイエンの言葉に続き、アクアは穏やかに強い波動を送った。



「あなたたちが失ったのは、光の供給源だけではありません。光を選ぶ自由です」



 アクアは、起源の石の波動で周囲の空気をわずかに震わせながら言った。


 ゼニス族の代表者は、衰弱した体で首を傾げた。


「光を……選ぶ、自由……?」


「そうです。テラのシステムは、あなたたちにたった一つの……規格化された光だけを強制しました。でも、本当は……あなたたちの体は、もっと多様な光を必要としているはずです」


 アクアは、カイエンと視線を交わした。


「カイエン、人工太陽の復旧は彼らに、命令を待つ時間を与えるだけだわ。飢餓を救いつつ、自由な選択を促す場所が必要よ。私たちが集めた地殻族の熱光や、イオの反射光、リーフの自然光を、メニューのように並べて、『光のマーケット』を作りましょう」


「光のマーケットか……面白そうだな」


 カイエンはニヤリと笑った。


「単に光を配るんじゃなく、自分で選ばせるってわけか。確かに、テラじゃ絶対やらねえやり方だな。よし、ガス。さっそく地熱ブーストのエネルギーを、市場システムに回すぞ!」



 カイエンは即座に行動を開始した。


 彼はドリフターに積んでいた地殻族の濃密な地熱エネルギーを、人工太陽光システムの制御盤に接続した。


 アクアは起源の石を使って、地熱エネルギーが持つ高出力を、ゼニス族の体に無害な安定した光の周波数へと変換した。


「よし、これで一時的な光の供給源は確保したぞ」


 カイエンは汗を拭った。


「ここからはマーケットだな」


 二人は、かつてテラの物資配給所だった広場を改造し、光のマーケットを設営した。


 光合成に不可欠な光を、量と周波数で選び、購入(物々交換)できる場所となるのだ。


 広場には、地熱エネルギーをフィルターに通した様々な光の放射装置が並んだ。


 

・メニューA:地殻族の安定した熱光(高出力で効率的な光合成)


・メニューB:イオの星の反射光モデル(体に穏やかで、疲労回復を促す)


・メニューC:リーフの自然光シミュレート(多様な波長を含み、身体の適応力を高める)



 ゼニス族の代表者は、信じられないものを見るかのようにマーケットを眺めている。


「光を……買う?そして、自分で……選ぶ?」



 飢餓に苦しんでいたゼニス族は、少しずつマーケットに集まり始めた。


 もちろん、誰からも命令は下されていない。


 彼らは戸惑いながらも、自らの意志で光を選び、必要な光量を求めて動き出したのだ。



「私は……メニューBを試したいな。少しでも体が休まる光を……」


「私はメニューAだ!早く飢えをしのぎたい!」


「私は……変な反応が出ないかちゃんと見てからにする……」 



 彼らは、テラの機能的な制服のまま、光の放射装置の前に座り込み、光合成を始めた。


 すると、面白い現象が起こった。


「ああ……体が、この光を……心地よいと感じている……」



 ゼニス族たちは、テラが供給していた単一的な人工の光よりも、自ら選んだ多様な光に対し、身体がより活発に反応し始めていることに気づき始めた。


「見て、カイエン。彼らの体色が、少しずつ明るいシルバーグリーンに戻ってきた……本当に綺麗だわ」


 アクアが嬉しそうに言った。


「ああ。光で、生命力が回復し始めているんだな」


 カイエンは、ゼニス族が自発的に光を選ぶという、小さな変化をじっと見ていた。


「だが、まだ奴らはマーケットに留まっている。光そのものじゃなく、光を探すこと……探す場所に、真の自由があるんじゃないのか……」


「本当に……その通りですね。私たちは……言われるがままで疑問に思う事さえありませんでした。お二人のおかげで目が覚めました。ありがとうございます」


 ゼニス族の代表者は、恥じるように二人に深く頭を下げた。



  

 その時、惑星ゼニスの大気圏に、イオの教師団を乗せた船団の波動が観測された。 


「ファズが来たぞ!」


 カイエンが嬉しそうに言った。


 アクアは頷いた。


「彼らは、やっと生命の光を取り戻したのよ。ここからは、思考の光を取り戻す番ね。ファズにバトンを渡しましょう」



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