第四十二話 調和とは
創世のAIの再構築を終えたアクアとカイエンは、クロノスとコミュニティの願いを胸に、ドリフターへと戻ってきた。
アクアとカイエンは、クロノスがAIと一体化したことで残された機械化された左腕のパーツを静かに見つめていた。
テラ宙域を離脱する際、シズマからの緊急通信が入った。
「アクア、カイエン!すごいことになってるぞ!テラから発せられていた支配のデータ流が完全に停止した!銀河中のテラ支配下の惑星で、解放の歓喜が起きている。だが一方で、激しい混乱も起きているんだ!」
カイエンは、クロノスの形見に視線を送った後、静かに操縦桿を握り直した。
シズマは焦りの声を続けた。
「イオの長老からも緊急通信が入った。長年、多様性は混沌だ……と洗脳されてきた住民が、テラの秩序が失われた……と恐れ、新たな支配者や新たな秩序を求めて……一部では暴動を起こし始めている。リーフの内部でも!」
アクアの意識に、悲痛な波動が流れ込んできた。それは、ある惑星から発せられた波動だった。
『私たちは自由になりましたが、次に何をすべきかわかりません。テラが教えた秩序が失われたことで、皆、再び混沌に飲まれることを恐れています……誰か、助けてください……』
テラの支配は終わったが、その秩序の毒は、銀河の生命の心に深く根を下ろしていたのだ。人々は、自由を手に入れた瞬間、その自由をどう扱うかを知らず、再び安易な支配に身を委ねようとしているのかもしれない。
ブリッジに立ったアクアは、起源の石を強く光らせた。
「テラは倒したけれど、彼らの秩序の毒は銀河の心に深く残っているんだわ。私たちは、彼らが恐れている自由と多様性は、決して悪ではないという真実を伝えなきゃ……」
カイエンは、テラの冷たさと本来の温かさを知る地球人のハーフとして複雑な思いを胸に……瞳には決意の光を宿していた。
「行くぞ、ガス。クロノスが命懸けで守ろうとした真の多様性を伝えるんだ。自由は悪ではない……という真実を、イオやリーフ、そして全ての星の心に取り戻すんだ!」
ドリフターは、テラ本星を遠ざけ、希望の光が満ちた、広大な銀河の未来へと向かって加速していった。
(テラ編) 完




