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憧れのテラ  作者: 星乃夢


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第三十六話 伝統


 テラの地下へ潜入したアクア、カイエン、クロノスの三人は、都市の古い動力ラインの近くで、隠されたコミュニティに接触した。


 クロノスの誘導で、一行は薄暗い旧式の貨物コンテナのようなスペースに案内された。


 そこは、見捨てられた場所にあるため、監視の目が薄く、自由が守られていたのだった。


 コンテナ内には、自由な衣服を纏った少数の地球人と異星人(固体生物、液体生物)が集まっていた。


彼らが、テラの支配の外側で、真の多様性を細々と守り続ける人々だ。



 コミュニティのリーダーらしき液体生物の女性が、アクアたちに近づいた。


 彼女の体色は、テラの住人の無表情な灰色とは対照的に、歓迎を示す柔らかな青と緑の光へと変化し、複雑なパターンで点滅した。


「よくぞここまで。テラ本星に自由な魂が到達したのは何十年ぶりだろう」


 彼女の言葉は、頭の中で響く宇宙共通語のテレパシーで伝わってきた。


 アクアは、胸元の起源の石が優しく光るのを見ながらテレパシーで応じた。


「私たちを匿ってくれて、ありがとう」


「大変だったでしょう?」


 別の液体生物は、たどたどしい振動波で話しかけてきた。


 体内のガスを微細に振動させる発声法を使用し、交流のために宇宙旅行中に習得したのだと自慢している。


 テレパシーは、振動波や惑星言語の翻訳機を介さず、感情そのものを伝えられるため、コミュニティの全員に届いた。



 コミュニティのメンバーは、テラの支配の実態を教えてくれた。


「テラの支配は、軍事力だけではないぞ」 


 ある地球人の老人が、深く刻まれた皺を寄せながら言った。


「奴らは、情報を管理し、個人の脳に働きかけて心理を画一化する。毎日、同じデータ、同じ音楽、同じ目標……自由な思考そのものが、ここでは最大の反逆行為なのだ」


 液体生物のリーダーは、体色を悲しみの濃い紫色に変え、点滅のリズムを遅くした。


「私たちは、古来からの多様な文化や芸術を細々と伝承している。だが、それは非常に難しい。新しい世代は、テラの偽りの秩序が、飢えも争いもない安全な快適さだ……と信じ込んでいる。私たちは、記憶の消滅という……最も静かで恐ろしい戦いに、敗北しつつあるのかもしれない」


 テラの支配は、彼らが恐れる混沌を根絶するために、文化と個人の記憶を消去し続けているのだ。



 カイエンは、この場所……かつて母といた家の前で感じた喪失感と、このコミュニティが守る自由が、深く繋がっていることを感じた。彼は、覚悟を決めたような表情になった。


「私たちが、その記憶の消滅を止めます」


 アクアは、強く振動する声でコミュニティに誓い……アクアの保護スーツの翻訳機からも、それぞれに話の内容が伝わった。


 彼女の瞳は、排除された種族の怒りと取り戻すべき多様性の希望を同時に映していた。


 クロノスは、しばらくの間沈黙していたが、静かにコミュニティの壁に刻まれた古い施設の図面をスキャンし始めた。


「私たちが知るルートは、テラに予測されている可能性がある。だが、彼らが使わなくなった旧式の秘密の搬送ルートがここにある……これは、記憶の保管庫への最短ルートになるはずだ」


 コミュニティのメンバーは、アクアの振動波の誓いと想いを受け取り、体色の光を希望の金色へと変えたり、口々に自国語で希望を願い、アクアたちにエールを送った。


 アクア、カイエン、クロノスは、テラの支配の犠牲者たちから託された、真実の記憶と自由な精神を胸に……銀河の運命を左右する記憶の保管庫へと向かうため、新たな地下ルートへと消えていった。


 


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