第二話 惑星イオ
惑星イオの荒涼とした大地に、一体の気体生物が降り立った。その身体は半透明で天体光を浴びて虹色に輝いている。周囲には鼻や喉が焼け付くような硫黄の匂いが立ち込めている。
「どうしよう……迷っちゃった。一体……ここはどこなの?」
その気体生物は、よく響く自身の振動波を使って周りの空間(気体)に向かって問いかけてみた。
しばらくの間待ってみたが、応答の振動波はない。硫黄の粒子を含んだ風があざ笑うかのように吹き抜け、彼女の身体をザラザラと冷たくかすめていく。この場所(惑星イオ)と、彼女の故郷の暖かく澄んだ大気とは大きな違いがある。異世界にやってきたのだという……現実から逃れられそうにない。夢ではないという実感が湧いてきて、急に不安と孤独感で押し潰されそうになる。
「誰か……いませんか?」
再び、わずかな希望を込めて彼女はかすれた振動波の声で小さく呼びかけてみた。非情にも彼女の呼びかけに応えるものはいなかった。しかし、しばらく耳を澄ませていると彼女が今まで聞いたことのない不思議な音が聞こえてきた。
「ピョ……ピー…ピピッ」
彼女は慌てて音のした周りの空間を見回した。姿は見えない何かが不思議な音を発しているようだ。
彼女は気体生物のアクア。宇宙旅行で、アクアの故郷惑星エアから赤色矮星に行くはずだった。しかし、突然の磁気嵐で宇宙船の機器が破損し緊急停止した。最短距離であったこの星に不時着したのだ。宇宙船の修理と磁気嵐がおさまるまでは、しばらく時間がかかるらしい。それで、空港から連絡が来るまでは自由行動で待機する事となった。
イオという惑星は、通常の宇宙船航行ルートでは停泊しない小さな惑星だ。小型の宇宙船が数か月に1~2回、イオの住民や物品を移送する程度で、他の星の生物は滅多にやってくることがないらしい。そのため空港もかなり小規模で宿泊施設もほとんどない。臨時的に、空港からほど近い都市部や町などに分散して待機するように勧められた。
この星では、イオ語といくつかの方言が話されているらしい。果たして……?




