第二十八話 地殻族
シズマから得た情報と地底ルート図を頼りに、アクアとカイエンは情報屋のアジトを後にし、惑星リーフの地下深くへと潜り始めた。
地底の通路は岩石と、根を張り巡らせた植物の有機組織が混じり合った、生命感のある洞窟だった。惑星イオと違って、空気は硫黄や火山活動の痕跡ではなく……高濃度の地熱エネルギーに満たされていた。アクアの高性能スーツのセンサーは、周囲の岩石が微かに電磁波を帯びていることを示していた。
カイエンは武装した武器類を点検しながら、不機嫌そうに言った。
「こんな熱源だらけの場所で、ヤツらとやり合うのか……俺の銃が効くかどうかも怪しいもんだな」
アクアはス保護ーツを操作し、ファズから送られたイオの認証コードを特殊な周波数の振動波として周囲に発信し続けた。
これは……『我々は敵ではない、惑星イオの承認された者である』……という信号を送る……彼らへの交渉前の試みだった。
二人が狭い通路を慎重に進むと、周囲の岩壁が突如として赤く発光し始めた。
次の瞬間、岩肌の隙間から脈動する青い電光が流れ出し、通路全体を覆うように巨大な塊へと凝集した。それは、決まった形を持たない……炎と電撃が渦巻くプラズマの集合体だった。
「来たぞ、地殻族だ!……プラズマ野郎!」
カイエンがアクアに警告し、銃を構えるが、プラズマ体には物理的な効果が感じられない……。
アクアが送っていた振動波は、プラズマ体の出現と共に、強烈な高エネルギーの電磁振動によってかき消された。プラズマ体は、岩石の壁を振動させながら、アクアの翻訳機に直接、威嚇の声を送り込んできた。
『……侵入者め。この地脈の力を乱すな……特に、お前、気体の生命よ。我らの神聖なる大地の種から離れろ……』
プラズマ体の地殻族は、瞬時にその形を巨大な人型に変形させた。その姿は、エネルギーを誇示するように、周囲の通路いっぱいに膨れ上がった。
「待ってください……説明させてください!私たちは大地の種を奪いに来たのではありません!偽りの支配を終わらせるために、微粒子の真の力が必要なのです!」
アクアは振動波で真剣な声と保護スーツの翻訳機の言語変換を通じて必死に訴えた。
しかし、プラズマ体は聞く耳を持たない。彼らが発した次の電磁波は、アクアのスーツの防御シールドを一気に低下させるほどの強力なエネルギーを伴っていた。
『虚言を吐くな!昔お前たち気体生物は、常に生命の力を無分別に利用しようとしてきた……お前も同じだ!お前の体から発せられる生命の力の波動こそが、最も危険な信号だ』
次の瞬間、プラズマの集合体は、複数の鋭い光の糸に分裂し、通路の天井と床から、アクアとカイエンを拘束するように襲いかかってきた。
「チッ!やっぱり話にならねえ!」
カイエンは銃を撃つのを諦め、背中のシールドを展開して……アクアを庇いながら、後退を試みる。
「アクア!ここは一旦、退くべきだ!彼らの力を借りずに、大地の種に近づく方法を探るんだ!」
「いいえ、カイエン。私は、彼らを……彼らの心を信じます……」




