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憧れのテラ  作者: 星乃夢


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第二十七話 惑星リーフ


 カイエンの宇宙船が鬱蒼とした森の中の個人が所有する小さなドックに着陸した後、彼はすぐに船外に出て周囲に警戒の目を光らせた。カイエンの言いつけ通り、アクアは船室で待機していると、胸元の起源の石が周囲の強い生命エネルギーに反応していた。

 しばらくすると、茂みの中から一体の異星人が現れた。小柄な異星人の女性……シズマだ。彼女の肌は、地表の岩石のように硬質な質感を持ち、全身から情報の流れを読むような鋭い眼光を放っていた。彼女は、カイエンの父と同じ種族の純血種だ。

 彼女は低い声で挨拶した。

「久しぶりね、カイエン。厄介な奴を連れてくるな、と言ったはずよ」

「悪かったな、シズマ。だが、こいつは偽りの意識体を倒そうとしている……お前も奴らのやり方が気に入らないんだろう?……頼むよ」

 

 カイエンはシズマを船のハッチのそばまで連れてくると、アクアに合図を送った。アクアは念の為にハッチを閉じたままで……保護スーツの翻訳機を通して、シズマに話しかけてみた。

「シズマさん……はじめまして、気体生物のアクアです。……古代の採掘記録について尋ねる前に、一つ確認したいことがあります。この惑星リーフに、惑星エアからの移住者である気体生物はいますか?そして、リーフはなぜ、これほど外部との接触を隔絶しているのですか?」

 

 シズマは、厳しい目でアクアの翻訳された言葉を聞いていた。

「それは……。おいおい、いきなり、よくしゃべるヤツだな……。テラの支配から逃れ、隠れ住んでいる気体生物がいるかどうかだと?……私には答える義務はないな。だが、それよりも……お前がその種族であるなら、イオの認証コードを示すべきだぞ……それとも証明する物を持ってないから、隠れているのか?」

 

 アクアは、ファズから送られたイオの認証コードを、船の外部スピーカーから振動波として流し、データの図形をカイエンが腕にはめている小型端末に表示させた。

「今、送りました……確認してみてください」

 カイエンの端末を確認したシズマは、警戒していた表情が一瞬で変わり、彼女は静かに目を閉じて、振動波を聞き取った。

「……このコードは、イオの長老しか発行出来ない特別なコードだ。……分かった、そのコードとカイエンを信じよう。私たちは、イオがかつて託した採掘記録を守り続けているんだ……」


 シズマに導かれ、アクアとカイエンは森の奥深くを移動していた。リーフの地表は有機的な植物で覆われ、その下に人工的な構造物が隠されているようだった。

 やがて、一行は巨大な樹木の根元に隠された、地底へと続く隠し扉の前に到着した。

「ここが、私の情報ネットワークの中枢さ。外部の監視やテラの目からは遮断されている……」

 シズマが言うと……扉が開き、シズマが中に入る。カイエンとアクアがそれに続こうとした時、ハッチの上部に設置されたセンサーが赤く点滅した。

「チッ、おい、シズマ。センサーが反応したぞ。俺の船が見つかっちまったのか?」

 カイエンが舌打ちをした。シズマはセンサーを一瞥し、鼻で笑った。

「馬鹿ね。この中枢を守るセキュリティは、テラの最新技術に最適化されている。あんたのは古い機体だから、認識できないさ……」

「テラめ、ざまあみろ!」 

 カイエンは、自慢の旧型宇宙船が逆にテラの最新技術を回避したことに、どこか誇らしげな笑みを浮かべた。アクアは、この口の悪い船長が、本当に古いものを愛しているのだと感じた……。

 

 地下の空間は、予想外に広かった。無数のモニターと通信機器が並び、数十人の異星人が静かに作業している。まさしく情報屋のアジトだった。

 安全な部屋に通されると、アクアはすぐにシズマに問いかけた。

「先ほど質問した、リーフが外部と隔絶している理由と、気体生物の移住者について教えてください。それは……微粒子に関係していますか?」

 シズマは頷いて、低い声で話し始めた。

「大いに関係しているさ……リーフが外部交流を絶っているのは、テラから情報を守るためだけじゃない。我々が守り続けている古代イオの採掘記録は、微粒子の情報だけではないのさ。このリーフに眠る別の強力な資源の場所を示す鍵でもある……その資源は、微粒子と同じくらい危険な力を持っているんだ。だから、気体生物たちは大規模な浮遊都市も作らず、目立たないように暮らしているのさ」

 そう言ってシズマは端末を操作し、ホログラムである立体的な記録を呼び出した。

「これが、イオの古老たちが命がけで我々に託した記録の全てだ。この記録には、微粒子が枯渇する直前のイオのデータと、微粒子と大地の種が結びつく化学式が記されているのさ」 

 アクアは、イオでスキャンした壁の記録と、シズマが示すホログラムが完全に一致したことを確認した。

「この化学式……私が惑星イオの古の採掘場の地下で見たのと全く同じです!」 

 アクアの発言に動じることなく、シズマは淡々と続けた。

「……だが、その記録には、微粒子の真の力を引き出すための最終的な工程が欠けている……イオの古老たちは、その最終工程が大地の種の成分そのものであり、その成分がこのリーフの地底に眠っていることを示唆している……」 

 アクアは愕然とした。探していた微粒子の秘密の鍵は、イオではなく、リーフの地下にあるというのか……。

 

「では、リーフの地底にあるその大地の種が、あなたが言った……厄介な秘密なのですか?」

 アクアが尋ねると、シズマは暗い目つきでカイエンを一瞥した。

「いいや。最も厄介なのは……大地の種の力を独占しようとしている種族だよ。リーフの地底に古くから住む、非常に排他的な種族さ。彼らは、リーフが外部と隔絶している最大の理由……彼らは外部の介入を絶対に許さない。もし、お前たちがその地底に降りれば……テラの監視システムよりも、もっと残酷な敵と対峙することになるのさ……」


 


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