第二十四話 痕跡
硫黄の結晶に覆われた広大な地下の採掘場跡……昇降装置を降りたアクアとジーナは、古代の壁画のような記録の前に立っていた。
アクアは、新しい保護スーツの高性能スキャナーを起動させた。壁には、微粒子の構造と、それを取り囲むように描かれた大地の種と呼ばれる数種類の鉱物の記号、そして複雑な幾何学模様が刻まれていた。
「これは……」
アクアは、その幾何学模様が、微粒子と大地の種が生命の力を増幅させる際のエネルギー変換のプロセスを表していることを理解した。しかし、記録は途中で壁が崩れ落ち、途切れてしまっている。
ジーナは静かに語った。
「記録によると、微粒子と大地の種は、この地脈の力が最も高かった時代に共存していた。だが、微粒子が枯渇する直前、この大地の窪みの深部で、原因不明の予期せぬ地質変動が起きた。その変動が、微粒子の生命の力を何らかの形で奪い去り、天然物を消滅させたのではないかと……古老たちは恐れている……」
アクアは壁の途切れた部分から、別の記述を発見した。それは、星図の一部と、古い交易ルートを示す記号だった。
「ジーナ様、この星図は?」
「それは、微粒子が枯渇し始めた直後、我々が最後に友好惑星であった惑星リーフに送った緊急の通信ルートだ。我々は、採掘データの一部をリーフに託した。万が一、この地から微粒子の秘密が消え去った時のための、保険だった……」
アクアは、壁のすべての記述をスキャンし終えた。微粒子の真の力が大地の種によって影響され、巨大な自然現象によって消滅した可能性?……その核心に迫る情報が惑星リーフにあるのだろうか……。
『黒幕が微粒子を恐れているのは、その力が偽りの意識体のような機械知性とは対極にある生命の力だからかもしれない。そして、その秘密がリーフに残されていることを、黒幕は知っているのかしら……』
アクアは、胸元の起源の石が微かに熱を帯びているのを感じた。
「ジーナ様、わかりました。この壁の記録を解析すれば、微粒子枯渇の真の原因、そして黒幕が本当に恐れているものが特定できるはずです。私はすぐに出発しなければなりません。惑星リーフへ向かいます。本当にありがとうございました」
ジーナは満足そうに頷いた。
「リーフの住民は、我々と同じくテラの支配を嫌う種族だ。しかし、彼らも長年、外部との接触を絶っている。健闘を祈る、アクア」
アクアは昇降装置で地上に戻り、ファズにリーフへの調査方針をテレパシーで伝えた。そして、カイエンが待つ空港へ向かうため、イオの空へと再び舞い上がった。




