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憧れのテラ  作者: 星乃夢


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第二十三話 大地の窪み


 ジーナの厳しい視線を受け、アクアは真剣に問い返した。

「採掘場古老の試練とは、一体どのようなものですか、ジーナ様」

 ジーナは、その場で他の古老たちに目配せをすると、重々しい声で告げた。

「この古の採掘場の最奥……大地の窪みへ深く降りるための古代の昇降装置リフトが、長年の硫黄ガスの腐食で動かなくなっている。お前には、この昇降装置を動かす方法を探ってくるのだ」

 アクアは、その装置が微粒子枯渇の秘密を知るための唯一の入り口だと直感した。

「具体的には、何をすればよいのでしょうか」

「過去に地殻変動で、突然地下で有毒なガスが発生し、誰も降りられないでいる。しかも、昇降装置の主要な動力部品は危険を恐れて誰も持ち出せないまま、窪地の入り口近くに放置されている。お前は、その部品を回収し、装置の応急修理を行えるか?そして、装置の復旧後、新しいスーツのセンサーを使って窪地の奥の安全確認をしてくるのだ。特に、地下に有毒なガスが新たに発生していないか、地盤の状況は安定しているかだ……どうだ、断ってもいいんだぞ」

 ジーナは続けた。

「我々は、お前の勇気と誠意を試したい……そして、お前の力が、本当にこの星の住民のためにあるのかを確かめたい。成功すれば、お前が探す枯渇の真実を全て明かそう」

 

 アクアは迷いなく大きく頷き、すぐに大地の窪みへと下降移動を始めた。アクアが地下に向かって垂直に下降するにつれ、光が届かない暗闇と空間の重力を感じる。

 『保護スーツがなければ、ペシャンコになっているわね……』

 窪地の入り口は、黒く変色した岩肌が崩れかかった、不気味な裂け目となっていた。

 

 『……アクア……私から昇降装置の古代設計図を送ります。部品の回収と修理には、これが必要だと思います』

 ファズのテレパシーと共に、アクアのスーツの視界ディスプレイに、複雑な古代の回路図が展開された。

 

 窪地は、地上の数倍の硫黄ガス濃度で満たされ、足元は硫黄の粘土と砕けた岩で滑りやすくなっていた。

 淡いブルーの高性能スーツは、その過酷な環境を物ともしなかった。ガスの侵入を完全に防ぎ、重力軽減と加速システムが不安定な地盤での高速移動を可能にしている。

 ファズの指示に従い、アクアはすぐに目的の巨大な歯車状の動力部品を発見した。スーツの力で部品を抱え上げ、速やかに地上に向かって上昇移動して戻る。

 

 地上では、疑り深い目をしたジーナが待っていた。アクアは、ファズの遠隔サポートを受けながら……回収した部品と地上の予備パーツを組み合わせ、応急修理を完了させた。すると、昇降装置は、長い沈黙を破り、重々しい音を立てて再起動した。

 昇降装置が再び動き出したのを見て、ジーナの表情が、ようやく緩んだ。

「……お前は、我々の予想を遥かに超える能力を持っている……感謝する、アクアよ」

 

 アクアはすぐに装置に乗り込まず、新しいスーツのセンサーを起動させ、窪地の地下深くのデータをジーナに提示した。

「地下の硫黄ガス濃度は危険水準ですが、有毒なガスの急激な発生は見られません。また、地盤も一時的な崩落の危険はないようです」

 アクアの的確な報告に、ジーナは深く頷き、その瞳には信頼の色を見せた。

「よくやった。もう試練は十分だ。さあ、私と一緒に行こう。お前の勇気と誠意は、我々が守り続けてきた秘密を知るに値する」

 

 ジーナは、アクアと共に昇降装置に乗り込んだ。装置は静かに、硫黄の臭いが充満する窪地の奥深くへと降下していく。

 降りながら、ジーナは静かに語り始めた。

「微粒子が採掘されていたのは、ちょうどこの深度だった。しかし、ある時を境に、微粒子は……本当に忽然と消えたのだ。我々は、その原因が大地の種と、古代の大規模な自然現象に関係していると考えているのだが……」

 

 昇降装置が止まったのは、硫黄の結晶が壁一面を覆う、広大な採掘場の跡だった。

「この壁を見てくれ、アクア。これは微粒子が枯渇する直前に記されたものだ。ここに、大地の種と呼ばれる数種類の鉱物と、微粒子の関係、そして惑星リーフくとの最後の交易に関する、決定的な手がかりが残されている……」

 

 ちょうど同じ頃、惑星エア……ナギは、図書館のデータベース深部で、微粒子の合成品に関する古い製造記録を解析していた。

「やはりおかしいわ……」

 ナギの解析装置は、記録された化学式の一部が、不自然なノイズパターンによって意図的に上書きされていることを示している。これは、テラでの決戦の後にファズが示唆した偽りの意識体のデータの残滓による妨害に他ならない。

「こんな古いデータまで……!黒幕は、この情報に何らかの価値を見出しているか……あるいは微粒子の真の成分が判明するのを極端に恐れているのね。私一人での調査は、予想以上に難航しそうだわ……」

 ナギは、膨大なデータの海で、見えない敵と対峙し始めていた。




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