第十四話 古代の知恵と繋がり
宇宙船の修理完了まで、残りわずか。アクアは長老の隠された部屋で、起源の石を手に、得たばかりの膨大な情報を繋ぎ合わせようとしていた。
『全てが繋がるんだわ……イオの祖先は、欲と嘘を避けるためにテレパシーを守り、科学を捨てて、自然とのバランスを選んだ。そして、その平和は一人の欲深い液体生物によって崩された……』
アクアは石の冷たさを感じながら、ゆっくりと考えをまとめていく。
『この石は、願いを現実に変える力がある……。ファズの願いは……イオの悲劇が起こる前の時間を巻き戻すこと……それが、彼が思う正しい道だと信じたのね……』
古代の意識体からのメッセージが、脳内で響く。
(……そなたの使命は、その時間軸を、正しいバランスで、固定することだ……)
『私の恩返しは、単にファズを村に連れ戻すことではない……イオの村人たちが長きにわたり守ってきた自然との共存と……キラリの未来のために、この時間軸が破壊されないよう、宇宙のバランスを保つこと。これが……私が惑星イオにできる最大の恩返しだわ』
アクアは、自分のすべきこと、目指すべき正しいバランスの道を心に決めた。
アクアは、静かに隠し部屋を出た。
村の境界では、一人で水面を揺らして遊んでいるキラリがいた。
「キラリ、どうしたの?元気がないわね」
キラリの体表は、不安を示す薄い青色に点滅していた。
「アクア……僕のお父さん、ファズは、悪いことをしているんじゃないよね?村を飛び出して、みんなが心配している禁断の地へ向かうなんて……」
アクアはそっとキラリのそばに寄り添い、長老から託された希望を伝えることにした。
「キラリ。長老さまが、あなたに振動波の発声を教えていたのは知っているわよね?」
「うん、でも、秘密だよって言われてた」
「長老さまはね、いつかイオが外部と真実で繋がれる日が来る……その時、あなたがその架け橋になるかもしれないと信じていたの。だから、あなたのお父さんを、誰も責めていないの。彼は、イオの未来を信じて、ものすごく危険な道を選んだのよ。」
アクアは続けた。
「お父さんが真実を追求したように、あなたには、真実を伝える力があるの。長老さまは、それを……未来への希望として託してくれたのよ。だから、不安になる必要はないわ」
キラリの体表の色が、少しずつ暖かなオレンジ色に変わり、水面が明るく揺れた。
その時、アクアの保護スーツの通信機が点滅した。ナギからのデータ通信だった。
「アクア、ナギよ!徹夜で解析したわ。あの時空の歪みを航行するための安全なルートを見つけたわ。確実に、とは保証はできないけど、この航路図を使えば、テラに通じる新たな航路を最短で突破できるはずよ!」
ナギは、解析した膨大なデータをアクアの保護スーツシステムに送信した。
「ありがとう、ナギ。これで道が開けたね。宇宙船の修理もそろそろかしら」
「言い忘れていたわ、空港の管制塔から連絡が来ていたんだった。メインエンジンの修理が完了したって……今すぐにでも飛び立てる状態のはずよ!」
アクアは立ち上がり、イオの空を見上げた。修理完了までの待機期間は終わり、全ての情報が揃った。
『待っていて、ファズ。私は、あなたの願いと宇宙のバランスを両立させる鍵になるから……』
アクアは長老に別れを告げ、起源の石を胸に、伝説の惑星テラ……そしてその先の時空の歪みへと向かうため、空港に向かって飛び立った。




