事故死として処理されるはずだった
対策部門と記録調査部門。どちらに登録しているかによって受けられる依頼は違うが、それぞれの部門の人がチームを組んでいれば、どちらの依頼であっても受けることが出来る。受付が気にするのは、誰がどの依頼を受けたかだけだ。とは言え、こんなことをする人は少ないだろう。対策部門からすればお荷物を抱えるだけだし、記録調査部門からすれば分け前が減るだけで、お互いにメリットは少ない。こんなグレーゾーンな依頼の受け方は基本的にしないはずだ。
「では、名前を。」
手続きは名前を書けばお終い。俺たちが選んだのは衛兵からの依頼で、街道での事故死事件に魔法使用の痕跡が無いか調査するというものだ。証言に食い違いがあり、魔法の使用を疑っているという。しかし、証拠やそれぞれの魔法から考えても、ほぼ事故死と断定しているらしく、ギルドが調査したという事実が欲しいだけのようだ。緊急度も、重要度も、おまけに危険度も低い。つまり、つい先日、死にかけた俺にぴったりの案件だ。報酬は少ないが、気を取り直すには丁度いい。
「山分けだからな。」
「わかってるよ。」
名前を書きながら、カイルは念を押してきた。ちゃんとしてるよね、ホント。
受付を終え、中央ロビーに出たところで少し離れた場所から声をかけられる。
「カイル!丁度よかった!明日どうよ?」
「明日は無理!またな!」
「冷てーな!次は頼むぜ!」
やたら早いやり取りは、ギルドではよく見られる光景だ。カイルがやってるのは初めて見た気がする。
「いいのか?」
「いいんだよ、いつものことだし。じゃ、明日な!」
「おう。」
ギルドを出る頃には、すっかり暗くなっていた。別れてから、ふと考える。対策部門は危険な依頼が多いため、1人で受けることはほぼ無いだろう。その過程で仲の良いやつも自然と増えていくのかも知れない。対して、俺は1人で受けてばかりだった。
(ギルドに入ってから仲良くなったやつ居ないな、俺…)
どうでもいいような違いが妙に羨ましく感じる。
…早く寝よ。




