呪文は、あとからわかった
魔法ギルドから馬車で2時間程度離れれば、人気の少ない山の近くに出て来れる。時々、魔法を使いたい人が訪れる都合の良い場所になっていることは知っていたが、自分もそのうちの1人になる日が来るとは思っていなかった。俺とカイルは、さっそく先日の出来事の検証を始める。
「ドウセナラ、ワラッテシンデヤル。」
俺は僅かに音を区切りながら、現象を再現する。左手から放たれた光の球が地面にぶつかり、弾ける。間違い無い。俺の魔法は発動中に詠唱することで変化する、呪文型だったんだ。
「呪文ダッサ。」
「うるせー!命を救った大事な呪文なんだぞ?」
「生き残る為に死んでやるって叫ぶとか、完全にやべー奴じゃん。」
「必死だったんだよ!もうちょい短いかも、見てろ。」
俺は手をかざし、もう一度、後半だけを唱える。
「ワラッテシンデヤル。」
先ほどと同じ様に、光は真っ直ぐ地面に向かい、弾ける。砂埃が舞ったまま、振り返って言う。
「な?」
「まだダサいな。もっと試そうぜ、次は俺が受けるから。」
「なんでだよ!…え、マジで受けんの?」
その後、検証してわかったことは主に3つ。呪文は“デヤル"。爆発の範囲は直径2m。爆発するまでは、次の光は出ない。
「わざわざ受ける意味あったか?」
「こういう情報が大事なんだよ、俺の場合はな。」
カイルの魔法は自己再生。発動中は、どんな怪我でも瞬時に治る。飛び散った血とかは消えたりしないので、戦闘後は無傷のまま血まみれになっているらしい。その性質上、前衛になることが多いことを踏まえると、俺がうっかり後ろから当てると思ってるのか?
「当てたりしねーよ。」
「けっこうあるんだよ。マジで頼むぞ。」
「けっこうあるのかよ、大変だな…」
「実は炎の範囲型と組むの、ちょっと嫌なんだよなー。これ秘密な?」
「わかってるよ。」
再生するとはいえ、痛みは普通にあるらしい。火がついたら継続的な地獄になるというわけだ。恐ろしい。
「お前、死にかけた割に元気だよな。」
言われて気付く。確かに、ギルドを辞めたいと思ってもおかしくない経験をした気がする。こんなところでも、自分の魔法がくれた高揚感に救われているのかも知れない。
「あんま気にして無かったな…それに今、金欠なんだよ。治癒士があんなに高いとは知らなかった。」
昨日、ギルドに行った時に2つの驚きがあった。カーラン兄妹のおかげで報告せずに報酬をもらえたことと、治癒士の治療代が俺の稼ぎの1ヶ月分だということだ。ギルド員の慈悲か、今すぐ払えとは言われなかったが、今月中には工面しなければ。
「なら、帰りギルド寄ってこーぜ。で、良いのがあったら明日一緒に行く!」
「いいのか?お前よく誘われてるだろ?」
「いいんだよ、たまには。それに元々、俺らは2人でやってくつもりだったろ?」
「…それもそうだな。」
なんだかんだ、1人で行かせないようにしているのがわかる。それに、また一緒に出来ることが素直に嬉しかった。




