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奇襲

 「あれって…」

 「後ろにいろ。」

 ダインは俺に静かに言うと、左腕に括り付けた小さな盾が前に来るように半身に構えると同時に、腰の剣を抜く。ミナも細身の剣を抜くと、木の陰にいる誰かに向かって威嚇する。

 「おい!なぜ隠れている!さっさと出て来い!」

 呼びかけに応えたのか、ゆっくりと林の中から斧を持った男たちが現れる。変に素直だな、とくだらないことを思っていると、ミナが続けて問いかける。

 「馬車を襲ったのはお前たちか?」

 その言葉を聞いて、この男たちが4人組であることに気付く。

 「ギルドもめんどーな奴らだよなぁ。いちいち調査員とか言うザコを送り込んで来やがる。」

 背筋が寒くなる。こいつらの狙いは間違いなく、俺だ。

 「おかげで手口を隠すのも一苦労だぜ。」

 1番ガタイのいい男の話ぶりは、盗賊であることを隠す気が無い。殺意は明白だ。

 「おめーら!やっちまえ!」

 リーダーの合図で3人が一斉に動き出す。それに呼応するようにミナが突っ込んだ。ダインは俺の前から動かない。

 (俺のせいで動けないのか!?)

 飛び出した3人は一斉にミナに襲いかかる。3方向からの攻撃が当たる、と思った瞬間ミナが消えた。3人は困惑し、それぞれ違う方へ頭を振る。

 「上だバカ!」

 離れていたからか、向こうのリーダーはすぐにミナを捉えて声を張り上げる。見ると、5mほど上空にミナが居た。全員の視線が集まる。

 「グガッ!」

 奇妙な音を出したのは、盗賊だった。俺が正面に視線を戻した時、隆起した岩の板が盗賊の1人を打ち上げていた。板は4mほどの高さまで伸びて止まり、その上に軽やかにミナが降り立つ。ダインが左手を向けているのを見て、理解する。あの板はダインの魔法だ。

 一連の動きから、2人の魔法の大まかな特性が見える。ギルドの調査では、魔法は発動するかしないかを選ぶことしか出来ず、細かな調整は出来ない。恐らくミナの魔法は発動すると一瞬で5mほど上空へ移動する魔法だ。ダインの方は左手を掲げた5mほど先に高さ4mほどの岩の板を生成する魔法だろう。板の狭い面がこちらに向いていることを考えるとそこまで使い勝手は良くないようだが、生成が速いため攻撃にも使える。つまり、カーラン兄妹の主戦略は…

 (前衛ミナかよ!)

 なんだか裏切られた気分のまま見ていると、ダインは僅かに手を動かし2枚目の板を扇状に並べるように生成した。飛び出していた2人の盗賊は警戒して後ろに下がっていく。ミナは滑り落ちるように降り始めると、途中で2回壁を蹴って足場を変え、勢いを殺して地面に戻る。慣れてるな、と思ったところで1枚目の板が崩れ落ちる。長時間保てるわけでは無さそうだ。

 「オイ、起きろ!」

 向こうのリーダーが倒れたやつに呼びかけるが、反応は無い。死んではいないと思うが、不意打ちだった分ダメージは大きいはずだ。打開策が無いからだろうか、先ほどのように突っ込んでは来ない。完全に2人のペースだ。

 「チッ!お前ら!岩の男から目ぇ離―」

 急に口元を掴まれた、と思った時には敵の声が、いや、全ての音が消えていた。無音の中で、背中に痛みが迸る。

 (何が―)

 混乱が脳を支配する中、脚の力が抜けて片膝を着く。低くなった自分の視点の背後から、ダインに向かって動く男が映る。男は左手をダインの顔へ伸ばすと、脇腹に短剣を突き立てる。振り向いたダインの顔は苦痛に歪んでいたが、それでもすぐさま右手の剣を振り、男を引かせた。膝をついたまま、俺はようやく理解する。

 (こいつら、5人組だ!)

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