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責任の取り方

 「結晶は確かに効いていた。じゃなきゃあんなことにはならん。君たちの活躍に報いることは出来なかったがな。」

 2日後、俺たちの依頼書に完了のサインをしたドンジーは心底悔しそうだった。

 「結局、コルマさんは?」

 「挨拶だけしてどこかへ行ってしまったよ。行く宛なんて無いと思うが…この調子だと、魔物連合との協力も期待出来なくなるな。」

 「ドンジーさんは今後どうするんですか?」

 「私は諦めていない。内部からの侵食が通用することはわかったんだ。また、別の方法を探すさ。次もよろしく頼む。」

 「そう、ですね…縁があれば。」

 あの光線を思い出してぎこちない返事をしてしまった。ヴォルグへの挨拶も済ませ、俺たちは邸宅を後にする。外に出ると、ローブを纏った輝くボディが待っていた。

 「やぁ、君たち。待っていたよ。」

 「シェルドさん。どうしたんですか、その格好?」

 「実は君たちに頼みがあってね。私をパーティーに加えてくれないか?」

 「は?」

 「旅をしてナンミ=ヴァルをどうにかする方法を探したいんだ。だが魔物だけでは何かと都合が悪い。それに、君たちには助けてもらった恩もある。これでも長年、魔境を生き延びてきた。必ず役に立ってみせる。連れて行ってくれないか?」

 「いやいやいや…魔物連れのギルド員とか何言われるかわからないですよ。」

 「安心してくれ。このスカーフがあれば素性はバレない。」

 そう言って尻尾の一部を扉のように開いて、取り出した黄色いスカーフを首に巻く。そこ収納なのかよ、と言う前にシェルドの姿が人間になった。ヒダンの刀のような魔道具の一種なのだろう。

 「どうだ、完璧だろう。私も一時期は人里を放浪した身、心得はあるのだよ。」

 「輝く尻尾が丸見えなんですが…」

 「そこでローブも持参したというわけだ。中に入れて仕舞えば、荷物を背負った子どもにしか見えないだろう?あまり激しく動くとズレるのが難点だが。」

 言いながら、腕を上下に振り始めた。確かに人の腕とリスの腕が見えたり隠れたりしている。

 「その状態で魔法ギルドについてくる気なんですか?第一、連合はどうするんです?放っといて良いんですか?」

 「私は友としてコルマに協力していたんだ。コルマが停滞を望む連合を見限ったのなら、私も別の道を行くさ。」

 どうしてもついてくる気のようだ。俺が目でお手上げのサインを送るとカイルが提案する。

 「じゃあ、俺たちの手助け無しでギルド員として登録出来たら一緒に依頼を受けるってことでどうですか?」

 「決まりだ。よろしく頼むよ。」

 「ちなみに俺たちはいつも組んでるわけじゃ無いですからね?」

 「そうなのか?まぁ個別だとしても恩は返すさ。」

 結局、俺たちは子ども連れでギルドへの帰路につくこととなった。


 乗合馬車に乗ってしばらく、フードを目深に被ったシェルドの姿が揺れに合わせて若干ズレている気がするのが気になっていたが、途中で考えないことに決めた。よく見たら裸足だし、全部拾っていたらキリがない。

 「あの、シェルドさん?」

 「私たちは共に旅をしているんだ。お互い、畏まる必要は無いんじゃないか、リオス?」

 「じゃあ、シェルド。コルマさんはなんで去ったと思う?コルマさんがいないと連合は立ち行かないんだろ?」

 「危険だと思われている者が去ることで安心を与える。それが最後にできる責任の取り方だと考えたようだ。」

 「…あの後会ったのか?」

 「共に行くと言ったら、すげなく断られてしまったがね。リーダーでなくとも連合に報いることは出来ると言ったが、響かなかったらしい。」

 「追わなくて良かったのか?」

 「ナンミ=ヴァルを追っていれば、いずれまた会えるさ。」

 軽い調子で言い放ったシェルドの視線は、遠ざかる南の背の高い木々から離れなかった。コルマが去ったのは、正しいことだったのだろうか。リーダーとして率いた何かが失敗した時、その場を去る以外に道は無いのか。コルマという力を失って脆く見えた連合が、俺に疑問を残す。他人事だから思える、勝手な意見なのだろう。責任を負うとはどういうことなのかわからないまま、景色が流れていった。

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