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使えない魔法

 乗合馬車には御者と、俺たち3人しかいなかった。最近、盗賊が幅を利かせていると言う噂がなかったら、御者との2人旅になっていたかも知れない。道の脇を占有する変わり映えの無い木々を見ていると、都市部から離れていることを実感する。魔法の痕跡の調査という理由が無ければ、一生訪れることは無かったかもしれない。

 「ねぇ、あんた名前なんだっけ。」

 「リオス。よろしく。」

 「よろしく。早速だけどさ、魔法見せてよ。」

 護衛として来てくれたカーラン兄妹の妹、ミナが近寄って来る。

 「本当に左手がうっすら光るだけなんだ。」

 「念の為だよ。誰もいないし、いいでしょ?」

 その目線は、既に俺の左手に向いていた。渋々、俺は手のひらを見せて魔法を発動する。いつものように、日の光に負けそうな程のささやかな白い光が左手を包む。

 「…暗闇で本読むタイプ?」

 「弱すぎてムリ。」

 「なるほどね。」

 そう言うとミナは席を立ち、ダインの方へ向かう。なるほどねってなんだよ、と思いつつ俺がこれを見せられたらなんて言うだろうと考えてみたが、良い言葉が思いつかなかった。それぐらい俺の魔法には使い道がない。鑑定したって、正式に役立たずと言われるだけだ。そもそも、俺みたいな一般人に受けられるものじゃ無いけど。

 「ダイン、なんでこの仕事受けたの?」

 「カイルの頼みだ。」

 「あぁ、そーゆーことか。」

 「上手くいけば盗賊を捕まえて手柄に出来る。悪い仕事じゃ無い。」

 「確かに。」

 いつものように魔法ギルドの調査員として依頼を受けたところで、幼馴染のカイルに会えたのは幸運だった。俺が盗賊の痕跡の調査に向かうと話すと、まだ周辺に潜んでいるという噂の共有とともに、護衛の話をその場で取り持ってくれた。ありがたいと思う反面、悔しさもある。1年前、一緒に調査員をやろうと誘われて魔法ギルドに入ったが、カイルの自己再生魔法の話が広まるとすぐに魔法対策部門に引き抜かれ、あっという間に盗賊退治で成果を上げた。対して、俺は今も変わらず痕跡の調査や魔法事例の収集をする日々。魔法による埋められない差があるのはわかってる。だから、今でも時々考えてしまう。もし、20年前に魔法が現れなかったら、俺はどんな人生だったんだろう。


 20年前、何の前触れもなく、人間に魔法が授けられた。その原因を探ろうと、各国で魔法ギルドが設立されたが、なぜ使えるのかを解き明かしたものはいない。17才の俺に黎明期の混乱はわからないが、ある程度社会が落ち着いた時代で良かったと思う。俺の魔法じゃ、真っ先に盗賊に殺されるか、2番目に殺されるかだったろうし。

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