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#生徒主導


 時間は少し遡り、姫宮を教室に待たせていた俺は、職員室で担任教師の小言を聞いていた。


「瀬羽君。どうして呼び出されたか、分かりますか?」

「皆目見当がつきません。なのでもう帰って良いですか?」

「(良いわけねぇだろクソガキ)」


 やたらとにこやかに問いかけて来たかと思えば、表情はそのままにドスの効いた小声でキレると言う器用な真似をした担任教師に、俺は肩を竦める。


 彼女は『小林こばやし けい』。多分二十代半ばか後半くらいで、クラスメイト曰く美人と評判らしい。

 まあ確かに顔はそこそこ整ってるし、ブラウスにカーディガン、ロングスカートと言う女教師らしい地味な格好でも分かる程度にはスタイルも良い。ハーフアップにした長い黒髪も、教師という激務の割にはよく手入れされているのか艶やかだ。


 だからと言って、姫宮と言う世界一可愛い彼女が居る俺には、どうでも良い事なのだが。


「俺はちゃんと、先生に言われた通り姫宮を学校に通わせてるじゃないですか」

「誰が登校から下校まで四六時中イチャつけとお願いしましたか? 校外だけならまだしも、休み時間や移動教室まで手を繋いでるカップルなんて、偏差値最底辺の学校でも見ませんよ?」

「偏見で物言う教師よりは健全で真っ当な学生やってるつもりですけど」

「もう少し周囲の目も気にして下さいと言っているんです」

「はぁ……鬱陶しいな」

「はい?」


 またもや器用に笑顔のまま前髪の内側で青筋を立てた小林先生に、俺は半眼を向けて堂々と告げる。


「その周囲の目って奴をどうにかするのは、本来先生の仕事でしょ? なのに、実際は姫宮だけじゃなくクラスメイトとも俺がコミュニケーションを取って、問題が起きないように上手くやってる。これ、もう殆ど業務委託でしょ。それを報酬も要求せずにボランティアでやってあげてるんだから、そんな細かい事で口出しされる筋合いなんて無いと思いますけど?」

「涼しい顔で教師を脅迫しないで下さい。くっ……完全に人選を間違えました。まさか、ここまで自己中心的で無駄に頭の回るガキだったなんて」

「それ小声にした方が良んじゃね?」


 如何にも慈愛に満ちた教師のような微笑みのまま全く表情を変えないせいか、周囲の教師達は彼女の暴言に気付いていない。ついでに思わず出た俺のタメ口にも。大丈夫かこの学校?


「はぁ……今思えば、姫宮さんの事に協力すると言って来たのも、大義名分を得る為の口実だったのでしょう?」

「そこは自分の安易な判断を恨んで下さいよ。そもそも、姫宮は女子ですよ? ホイホイ住所まで教えて丸投げなんて、俺がもし危ない奴だったらどうするつもりだったんですか?」

「だから今猛烈に後悔と反省をしてるんです」

「?? すみません。ちょっと言ってる意味が分かりません」

「それが一番怖いんですよ……」


 心なしか彼女の顔が青ざめたような気がするが、ぶっちゃけこの人が何をどう思っていようがどうでも良いので、さっさと姫宮の所へ戻れるよう話を終わらせに行く。


「さっきも言いましたけど、周囲への対応はこれまで通り上手くやりますよ。心配しなくても、姫宮とは手を繋ぐ以上の事はしてないし、彼女の方から望まれない限り今後もするつもりは無いので、実質有り得ません。万が一、彼女の気が変わってする事になっても、細心の注意を払います。姫宮の経歴に傷を付けるような真似は、絶対にしません」

「まるで姫宮さんのナイト様みたいな口ぶりだけど……それは全部、貴方が彼女の側に居るため、でしょう?」


 探るような視線を向けて来る小林先生に、俺は特に気負うでも無く言い切る。


「同じ事です。俺は姫宮を守る為に側に居て、俺が姫宮の側に居る為に彼女を守る。偽善者を気取るつもりも、偽悪的に振る舞う気もありません。俺は俺の為に、彼女の為に行動する。それだけです。だから、『姫宮の彼氏』で居る限り、先生に迷惑を掛けるような真似はしませんよ」

「恐ろしく説得力があるのに、絶対に信頼してはならないと本能が訴えて来るんですが……」

「もう少し生徒を信じて下さいよ。それでも教師ですか?」

「貴方こそ、それでも高校生ですか? はぁ……大人でも、そこまで自己分析した上で割り切って生きる事なんて出来ませんよ」


 感心してるのか呆れてるのかよく分からない顔でため息を吐く彼女に、俺は淡々と告げる。


「まあ確かに。ぶら下げられた餌に飛び付いた癖に割り切って最後まで俺を利用出来ない辺り、先生はまだまだ青臭いっすね」

「ぶっ飛ばすぞクソガキ」

「やってみろよクソ教師」


 お互い笑顔でメンチを切り合って、結局何一つ得る物の無い話し合いは終わった。……因みに、最後のは絶対周りの教師にも聞こえていたが、そっぽ向いたり手元の仕事に集中しているフリをして誰一人触れては来なかった。


 それで良いのか、大人諸君。



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