#衝撃の事実
※会話分が多くなったので空行多めに挟んでいます。読みにくかったらすいません。
「最近気が付いたんだけど、瀬羽くんて、もしかして友達居ないんじゃない?」
「は? 何だよ唐突に。そんな訳無いだろ」
本屋へ向かう道すがら、意味不明な質問をして来た姫宮に、俺は思わず苦笑した。
「最初は猿渡君がそうなのかと思ったけど、彼を見る貴方の目は完全に害虫を見るそれだし、本気で軽蔑してるわよね?」
「ああ。あいつは友達じゃ無いぞ。席が前後だし、流石に普段から虫だと思って見てると不快だから、雑音が出るオブジェくらいに思うようにしてる」
「私が言うのもなんだけど、貴方が言葉選んでない時って私より酷いんじゃない?」
「それはそうだろ。俺には悪意があるけど、姫宮には無いからな。よく知らない他人が受ける印象は別として、中に悪意が詰まってる方が酷いに決まってる」
「………やっぱり、貴方変わってるわ。そこまで自分の悪意を自覚してるのも、その事に一切の罪悪感を感じていないのも、凄く気持ち悪い」
「いやいや普通だって。自覚してるしてないは別にして、殆どの人間は自分の劣等感やストレスを誤魔化すために、言葉や文字で悪意を振り撒いてる。俺だって、そんな愚かでつまらない凡人の一人だ。な? ごく普通だろ?」
「絶対間違ってる筈なのに何故か反論の余地が無い……。腹立たしいわ」
姫宮は相変わらずの無表情だが、微妙に俺から目を逸らしている辺り、悔しがっているのは分かる。
別に俺は好きな子を論破して悦に浸る趣味は無いのだが、普通に話しているだけでたまに姫宮はこういう態度を取る。自分が構って欲しがった癖に猫じゃらしが捕まらなくて拗ねる猫のようで、何とも愛らしい。
「認める気は無いけれど、一先ず貴方が普通の人だという設定だとして」
「いやいや設定て」
「結局、友達は居るの? 私の目から見て、親しそうに見える人は居ないのだけど」
俺のツッコミを無視して断言する姫宮。出会ってから少しも衰えない言葉の切れ味に惚れ惚れしそうだ。
「居るだろ? クラスの皆とか」
「つい今し方、そのクラスの皆に含まれている筈の猿渡君が除外されたじゃない……」
「ん? そう言えばアイツもクラスメイトか。じゃあ、アイツ以外で」
「雑……確かに満遍なく話している印象はあるけど、特別仲の良い人って居るの? 登下校も昼休みも私と一緒に居るし、選択授業や体育以外の時間は教室でもそうでしょう? それとも、休日には誰かと一緒に遊んだりしてるの?」
「前はそういう事もあったけど、最近は無いな。休日はよっぽどの用事か、姫宮と会う以外では外出してないと思う」
「居ないじゃない。友達」
「いやいや、何でそうなる?」
「何でそうならないと思うの?」
心底不思議そうに問い掛けて来る姫宮に、俺も首を傾げる。
「別に、友達だからって四六時中一緒に居る訳じゃ無いだろ?」
「四六時中どころか数時間も親しく関わった覚えが無い人達を、貴方は友達と呼ぶのね……」
何故か絶望的な響きだけを残して、それ以上何も言わなくなった姫宮。微妙にいつもと違う反応に、俺は少し不安になる。
「えっと、一応言っとくが、別に休みの日に他の女と遊んでるとかは無いぞ?」
「は? 何で急にそんな話になるの?」
「あ、うん。ですよね」
自分で言った通り一応言ってみた物の、姫宮が嫉妬してくれたなんて思っていない。ただ、俺の不安を消化する為に聞いといただけだ。
彼女に愛されないのは仕方が無いが、利用価値を疑われるのは問題だ。節操無く他の女と遊んでいる不埒者と思われては、『彼氏役』として不適当と判断されてしまうかもしれない。姫宮がそこまで考えるほど俺にも周囲の視線にも興味が無いと頭で分かってはいるが、感情は別だ。不安な物は不安なのである。
「俺が休日に友達と遊ばないのは、単に時間が無いからだよ」
「え? 貴方、とんでもない暇人なんじゃ無いの……?」
だから、たとえ言い訳じみていても、きちんと事実を伝えておく……つもりだったのに、新たな誤解を発見してしまった。まあ良いや。どうせ今から説明するし。
「確かに、以前は暇だったかもしれないけど、今は違うぞ。てか、さっき姫宮が言ってたじゃん」
「私が? 瀬羽君の、ことを……?」
これっぽっちも覚えが無いと言わんばかりに思案する姫宮。流石だ。興味が無い事に関する記憶の代謝が凄まじく早いぜ。
「俺にはテスト前に漫画なんて読んでる余裕は無い、って。さっき教室で言ってたろ。その通りだから、空いてる時間は出来るだけ勉強に回してんだよ。じゃなきゃ、一教科だけとは言え姫宮より良い点数なんて取れる訳無いし」
「ああ……確かに言ったけど、それはテスト前の話でしょう?」
「そうだよ。だからずっと勉強してる」
「???」
「んん?」
姫宮が珍しく露骨に困惑してる。おかしいな。割と丁寧に説明したつもりなんだが……。ちょっと言葉が足らなかったか?
「いやほら。姫宮、大学には行くつもりなんだろ?」
「不本意だけど、まあ一応」
「なら、受験が終わるまではずっとテスト前みたいなもんじゃん。ただでさえ元の学力も違うし、勉強時間くらいは確保しないとな」
「???………っ! もしかして……瀬羽君、私と同じ大学受けるつもり?」
「ん? そりゃそうだろ。彼氏なんだから」
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………そう」
「何だよその間……」
絶句したのかと勘違いしそうになる程の間を挟んで返事をした姫宮。おかしいな。賢い彼女の頭で理解できないような難しい話をした覚えは無いんだが……。
「本屋、着いたわね。オススメの本とやらはどこにあるのかしら」
「あ、ああ。多分こっちかな?」
どこか棒読み気味な言葉で露骨に話を逸らされた気がしたが、まあせっかく彼女と本屋に来れたんだ。学生カップルらしく、健全に楽しい時間を過ごすとしよう。
「………私の彼氏、友達居ないんだ」
「え? 何か言ったか?」
「何でも無いわ。ええそう。何でも、無いのよ……」
「お、おう」
何だか強烈な哀愁を感じたような気がしたが、気のせい、だよな?
お読み頂きありがとうございます。
ご意見、ご感想等頂けますと励みになりますので、よろしければお願い致します!




