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#親友(変態)観察日記

 

 うちのクラスには、よくよく観察すると様子のおかしいカップルが居やがる。


「姫宮。今日は本屋に寄って帰らないか?」

「別に良いけど、来週からテスト期間よ? 瀬羽君に漫画なんて読んでる余裕があるとは思えないわ」


 なんて、微笑ましいんだかエッジが効いてるんだかよく分からねぇ会話を、そのカップルは俺の後ろの席でいつもしている。


「その通りだが、俺だって絵が付いていない本くらい読めるんだぞ。と言うか、国語の成績だけは俺の方が姫宮より良いじゃん」


 彼氏の方は、『瀬羽 翔兎』。俺の親友だ。向こうは俺の事を親友なんて思っちゃいねぇどころか、友達と思ってるかも怪しいが、そんな細けぇ事はどうでも良い。俺にとっちゃ唯一無二の親友さ。

 誰よりも自己中心的な癖に……いや、だからこそ、人一倍面倒見が良いっつぅとんでもねぇ変態だ。だから俺は敬意を表して、『瀬羽の兄さん』って呼んでる。


「………現国だけでしょ。古文と漢文の成績は私の方が上よ。それに私、進学するとしたら理系だから。文学部でも目指さない限り、フィクションの登場人物の心情なんて一生理解する必要無いわ」


 彼女の方は、『姫宮 奏』。俺の……友達、らしいや。いやぁ、参ったね。まさか、面と向かって俺の事を友達だと思ってるなんて言われるたぁ、流石に予想出来なかったぜ。悪意を持って接した事は誓ってねぇが、面白がって色眼鏡で見てた手前、柄にも無く焦っちまったね。

 まあ、そんな良くも悪くも素直な所が魅力的な、誇り高くて品のあるペルシャ猫みたいなお姫様さ。

 ついでに言うなら、変態の第一被害者だね。


「全部は理解出来なくても良いよ。でも、感情移入出来るキャラクターが見つかると、読書が楽しくなるぞ」

「……そんなものかしら?」


 ほら来た。毎日毎日飽きもせず、コロッと騙されちゃってまぁ。


「駅前に新しく出来た本屋、結構品揃え良くてさ。俺が好きな作家さんの本も結構置いてるみたいなんだ。姫宮は普段からちゃんと勉強してるから余裕あるだろ? 姫宮にオススメしたい本があるんだ。俺が買うから、気に入ったら持って帰って読んでくれよ」

「本の代金くらい自分で出すわよ」


 あ〜あ、食いついちまった……。これぞ変態の術中。手のひらの上ってね。


 あれよあれよと言う間に、お姫ちゃんは瀬羽の兄さんと本屋デートして、オススメされた本読んで、十中八九後日感想会にも誘われるね。そんで、瀬羽の兄さんは自分の好きな子に自分の好きな本を読ませて、少しずつ自分の価値観に染める快感に酔いしれる。いやぁ、清々しいくらい気持ち悪い。そこに痺れる憧れる(薬物中毒の症状に近い)ってなもんさ!


「代金はいらないよ。元々、図書館で借りて読んでた本だから、店で見つけたら自分で買いたいと思ってたんだ。だから、読んだ後返すついでに感想聞かせてくれたらそれで十分だよ」

「ふーん……そう。なら、遠慮無く。ただ言っておくけど、官能小説は読まないわよ」


 他の奴らは気づかねぇだろうが、今のはいつもの暴言……もとい、ストレート過ぎるエッジワードとはちょっと違う。

 よく言えば照れ隠し、悪く言やぁ、負け惜しみって奴さ。

 まんまと騙された自覚があるのに、気付けば逃げられなくなってる。戦う気も無くなってる。となりゃぁ、口から出てくるのはそんくらいのもんだろう。


「そんな高度なセクハラするほど性癖拗らせて無いわ」


 どの口が。


「だと良いけど。じゃあさっさと行きましょう。あまり遅くなると、またあの人達が五月蝿いから。猿渡君、また明日」

「ん? おうっ! また明日な。瀬羽の兄さん、張り切り過ぎて捕まんなよ〜」


 冗談めかしちゃいるが、割と本音だ。俺の居ないとこで、そんな面白いことにならないでくれ、ってね。


「お前と一緒にすんな不倫理猿。じゃあな」


 瀬羽の兄さんも割と本気で嫌そうな顔を俺に向けた後、コロッといつものボーッとした表情に戻って、お姫ちゃんの手を取りながら教室を出て行った。


 ……皆、気付いてるかい? “お世話係”なんて都合の良い立ち位置に隠れて、あの変態、教室から堂々と好きな子の手を握ってるんだぜ? いくら仲の良いカップルでも、普通は校門出るくらいまでは恥ずかしくて我慢するもんだろ。

 全くもって、本当にとんでもない変態詐欺師さ。

 何がヤバいって、本人には他人を騙してる自覚が一切無いんだ。気持ち悪いねぇ〜。


 誰よりも自己中心的で、性癖が歪みまくってて、恐ろしく面倒見が良い。どうして、そんな変態になっちまったのか。俺はその理由に、一つの“仮説”を立ててる。

 それが生まれ持ったもんなのか、環境がそうさせたのか、もしくは何か決定的な事件があってそうなったのか、こればっかりは想像するしかねぇが……多分、間違っちゃいない。



 『瀬羽 翔兎』って奴は………他人に、な〜んにも期待しちゃいねぇのさ。



 だから、お前の側は居心地が良いんだぜ。親友。





今話もお読み頂き、ありがとうございました!

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