23*傍流
「でもさぁ。まあまだ皇帝若いっちゃ若いけど、良いの?代替わりするのがそんなベロっと丸め込まれちゃう男で?」
「それが、第一皇子が皇太子として立太子された時はまだ、婚約者はケリガン嬢であったのです。
ケリガン嬢は学園でもかなりの上位の成績を収めていた才女であったと言われています。
皇子に多少脇の甘い所があったとしても、ケリガン嬢がフォローすると思われていたのですが…挿げ変わったリリー皇太子妃は…ケリガン嬢と同じ家出身でしたので当初かなりの期待がありまして、婚約まではすんなりいきましたが、成婚の際にはかなりの反対を押し切ったものでございましたね」
「それまたなんでよ?」
「…えー、教育って本当に大切なのだなと思いましたし、学ぶ姿勢というものを持ち合わせない者との会話がこの様に大変なものなのかと、久しぶりに息子の幼年学校時代を思い出しました」
「ああ!要するに本物の甘ったれのおばかちゃんなのか!」
「まあ…そう…いうものなのでしょうかね」
流石に神の前でハッキリとは言い切るのもいい憚れるかの様に、ソニーは誤魔化した口調になった。
「ふーん、なるほどね。よし分かった!」
「何がでございましょうか?」
座っていることに飽きたのか、立ち上がったフォードはそこら辺を意味なく歩き回りながらソニーに顔だけ向けた。
「俺たち神々はさあ、千里眼って言われるし地獄耳っても言われて、まあ実際その通りなんだけど、だけどぜーんぶ見聞きしてたら神だって頭おかしくなって死んじゃうよ。
神なりたてとかだったら?色々やってみたい時期だし?色々首突っ込むのもさもありなんだけどさあ、俺らくらいになるともう、そういうの何よりめんどくさい!むしろ耳に入れない様にしてるの。だからあんまり知ってる事の方が少ないんだけどねー。
だけど、今回はあの駄神の責任だし、ひいては上司である主神の責任になる訳だ。そんで更に色々聞いちゃった。
って事で、どうしようっかなぁ…もうめっちゃお嬢ちゃん甘やかしちゃおうかなぁ。今までのお詫び含めて」
「は…はぁ!?」
ガタリと音を立ててソニーが立ち上がった。
果ての見えないこの部屋のどこからか、クスクスと誰ぞの笑う声が聞こえる。
その笑い声で更に主神が調子に乗った様な気がしたソニーが慌てた。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「うわーどうしよう…なんだか楽しくなってきたな。
どうする?奇跡の子とか聖女とかにしちゃう?いっそおでこに神とか入れたら分かりやすいかな?」
ソニーがこれ以上無いくらいに更に慌てて言った。
「甘やかすのは我々の仕事でございます!我が家で責任を持ちまして幸せに致しますので!」
「えー、だってお嬢ちゃん本人に拒否されてるのに?」
「そ…それは時間をかけまして…」
「えー、期限は三ヶ月しか無いよ?」
「そ…それは」
ニヤァとフォードが笑うと、決めた!と天を指差した。
「とりあえず分かりやすい聖痕だけ付けとくわ。そうすりゃ勝手に人間の方が理由と名前をつけてくれるでしょ」
そのままグルグルと天を掻き回すと、ソニーの止める間もなく、ヒュンと何かが何処かへ飛んで行った。
「あ…ああ…あ」
がっくりと項垂れたソニーの横に誰かが立った。
「このバカたれ!また余計な事をしおって!」
気配と声にソニーが顔を上げると、急いで戻ったであろうゼン神からゲンコツで頭をしばかれているフォード神の姿が目に映ったのだった。




