揺れる商店街と、再び灯る希望
「すまん、やっぱりやめておく。」
「俺たちが頑張ったところで、何も変わらねぇよ。」
悠斗と秋山が必死に説得し、一度は「やってみよう」と思い始めた商店街の人々。
しかし、三浦の妨害によって、次々と不安が広がり、また元の諦めムードに戻ってしまった。
中でも、八百屋の店主・田中茂は、真っ先に撤退を表明した。
「どうせ、うまくいかねぇんだよ。今までだって、何回もチャレンジしてダメだったんだ。」
「森田くんは若いから、勢いで突っ走れるのかもしれないが……俺たちは、もうそんな元気はないんだよ。」
田中の言葉に、多くの商店主たちが頷いた。
「そうだな……また無駄に希望を持つのは、もう辛い。」
「家族の生活もあるし、無理なことはできない。」
悠斗は、歯を食いしばった。
「でも……このまま何もしなかったら、本当に商店街は消えてしまいます!」
しかし、悠斗の言葉に、誰も何も言わなかった。
沈黙が、すべてを物語っていた。
その場の空気は、絶望に満ちていた。
翌日、悠斗と秋山は、再び商店街の人々に会いに行った。
最初に訪ねたのは、八百屋の田中茂だった。
「田中さん、もう一度考えてください。」
「俺たち、まだ何もしていないじゃないですか。」
田中は、眉をひそめた。
「……無理だって言ってるだろう。お前ら、しつこいぞ。」
しかし、その時——
「おじいちゃん、どうしてやらないの?」
田中の孫娘、田中あかりが顔を出した。
「え……?」
「おじいちゃん、いつも『八百屋は楽しい』って言ってたじゃん!」
「昔みたいに、お客さんとおしゃべりしたり、私にも八百屋の仕事教えてくれるんじゃなかったの?」
田中は、言葉を失った。
「あかり……」
「私、おじいちゃんのお店、大好きだよ!」
「だから、お店がもっと賑わったら、嬉しい!」
その言葉に、田中は目を閉じ、深く息を吐いた。
そして——
「……わかったよ。」
田中は、静かに呟いた。
「もう一度だけ、やってみる。」
「お前らの熱意に負けたよ。」
悠斗と秋山は、嬉しさのあまり顔を見合わせた。
「ありがとうございます!」
田中が動いたことで、商店街の空気が変わり始めた。
「田中さんがやるなら、俺もやるよ!」
「久しぶりに、ちょっと張り切ってみるか!」
「もう一回、挑戦してみよう!」
次々と商店街の人々が、桜川マルシェへの参加を決意した。
その中心には、松田屋の航太の姿があった。
「やったぁ! みんながやる気になった!」
「これで、お店も元気になるね!」
航太の笑顔に、商店街の人たちも微笑んだ。
「よし、ここからが本番だ!」
悠斗と秋山は、商店街の人々とともに、準備を本格化させた。