妨害再び
商店街の人々が桜川マルシェに協力し始めた頃、悠斗の前に、三浦誠司が現れた。
「随分と必死になってるな、森田。」
「……三浦さん。」
「商店街の奴らを説得したところで、無駄だ。」
三浦は、低い声で言った。
「どうせ、商工会の支援がなければ、イベントなんか成立しねぇよ。」
「それとも、金もルールも無視して強行する気か?」
悠斗は、静かに答えた。
「やれることは、すべてやります。」
「商工会が動かなくても、僕たちが動けば、商店街は変わるかもしれない。」
しかし、三浦は冷笑した。
イベントの準備が進む中、三浦は商店街を巡り、一軒ずつ店主たちを訪ね、冷たく言い放った。
「商工会が公式に認めていないイベントに参加するのは、あまり賢い選択とは言えませんよ。」
「売上が上がるどころか、余計な経費ばかりかかって、結局損することになります。」
「それに……うちの会長は、こういう勝手な動きをあまり好ましく思っていないようでね。」
その言葉に、店主たちは凍りついた。
桜川商工会の会長・滝本の名が出た途端、誰もが顔を曇らせる。
「あの人が……良く思ってないなら、うちはちょっと考え直さないと……。」
「商工会に睨まれたら、この先の商売に影響が出るかもしれないし……。」
本来ならイベントに賛同していた店主たちも、次々と撤退を表明し始めた。
その様子を見ながら、三浦は不敵に笑った。
悠斗は唇を噛み締め、拳を握りしめた。
「……こんなの、汚すぎるだろ。」
同じ頃、桜川商工会に一本の電話がかかってきた。
相手は桜川市役所の商工観光課・皆川だった。
「申し訳ないですが、イベントの使用許可が下りるまで、少し時間がかかるかもしれません。」
「今のままでは、許可は難しいですね。」
突然の方針転換に、秋山は困惑した。
「そんな……この前は問題ないって言ってましたよね?」
「ええ、でも……三浦さんからお話がありまして。」
「三浦……?」
「商工会としては、このイベントを正式には認めていないそうですね。」
「それに、滝本会長も少し心配しているとか……。」
「……!」
三浦が、市役所にまで圧力をかけていた。
そして、その背後に滝本会長の影がちらつく。
市の許可が下りなければ、イベントは開催できない。
このままでは、せっかく準備を進めてきたイベントが潰される。
「これ……完全に仕組まれてるじゃないか。」
秋山は悔しそうに唇を噛んだ。
「このままだと、本当に潰されちゃうよ……。」
悠斗は、深く息を吸い込んだ。
そして、静かに言った。
「……まだ終わってない。」