表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/37

影の動き——“消される”正義

市議会での告発が現実味を帯びたその夜、

川崎市長の執務室では、ひとつの命令が静かに下された。


「……佐伯仁志の“行政OB枠”を調べろ」


市長の秘書が、素早く応答する。


「はい。中央省庁からの出向者リストと、彼の退職理由を含めて整理します」


川崎は、机の引き出しから封筒を取り出した。


中には、監査委員会の非常勤委員長あての手紙が入っている。


「来月の監査対象に“旧記録管理室の調査手順”を加えてほしい」


それは、佐伯がかつて勤務していた部署だった。



その数日後、市役所職員向けの内部通達が流れた。


「情報持ち出しに関する職務規律の徹底」

「退職者による内部資料の開示については、法律に基づく“開示責任者”の判断が必要」


行政用語を盾に、合法的な“内部通報の封じ込み”が進行していく。



一方で、商工会は独自に「地域経済における誤報被害の検証」という名目で、

某地銀と地域経済新聞社へ“要望書”を送付していた。


そこにはこうある。


「誤情報に基づく報道・拡散は、結果として地域の雇用と信用に多大な悪影響を与える」

「我々は、根拠なき風評被害から商工会員を守る責務を負う」


“真実”の告発は、『地域の信用を損なう“迷惑行為”』とすり替えられていく。



その裏では、匿名で作られたSNSアカウントが活動を始めていた。


「内部告発と称して市民の生活を混乱させる行為に、私は断固反対する」

「“正義ごっこ”で街が潰れてもいいのか?」


このアカウントは、わずか数日でフォロワーを1万人近く集めた。


中には、商店街を支援していた一般市民までもが、疑念を抱き始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ