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三浦との合流、そして記者へのリーク

夜の人気のない裏路地。


街灯がちらつく中、悠斗たちは足音を忍ばせながら、目的地へと向かっていた。


約束の場所は、かつて商工会が合併前に使っていた旧会館の書庫。すでに廃墟同然となっているその場所に、ひとりの男が静かに佇んでいた。


「お前ら、無事か」


その声は低く、しかしどこか安堵の響きを含んでいた。


「はい……なんとか」


胸を撫で下ろしながら答える悠斗の手には、あるUSBが握られていた。


三浦誠司は、書庫の一角に用意したノートパソコンにそれを差し込むと、無言で画面に目を通した。


指先はピクリとも動かず、まなざしだけが鋭く走る。

やがて小さく、しかし確信を込めて呟いた。


「……間違いねぇな」


「東海ディベロップメント、市議会、そして商工会——癒着の流れが、このデータに網のように記録されてる」


「金の動き、契約のタイミング、偽装工作……全部だ。これがあれば、もう言い逃れはできねぇ」


悠斗は息を飲み、秋山と顔を見合わせる。


「これを……どう公表する?」


秋山が不安げに言葉を挟む。


「でも……私たちが直接やったら、報復されるかもしれない。相手は行政と商工会の幹部よ……」


その時、三浦の表情がわずかに変わった。


彼は、内ポケットから一枚の名刺を取り出し、悠斗に見せた。


「こういう時こそ、“外部”の力を使うんだよ」


そこには、ある地方新聞社のベテラン記者——藤嶋拓真の名前が書かれていた。


「……この男は、かつて俺の親父が潰されたとき、それを一人で追ってた。結局、真相は闇に葬られたが……藤嶋はずっと、市の腐敗に目をつけてた。今でも、諦めてはいない」


悠斗は驚きを隠せなかった。


「そんな人が、まだ戦ってたんですね……」


「この証拠があれば、あいつは必ず動く。話は通してある」


三浦はスマートフォンを取り出すと、静かに発信ボタンを押した。


「……俺だ」


「お前が追ってた“桜川市の闇”、証拠が揃った」


「今なら、一気に公開できる。動けるか?」


しばらくの沈黙の後、電話の向こうから低く、重い声が返ってきた。



『……それは、確かな情報か?』


「もちろんだ。潰せる。完全に、な」


『……わかった。すぐに会おう』


通話を終えると、三浦は短く頷いた。


「記者が動く。これで、情報は世に出る。俺たちは、ついにやり返せるんだ」


悠斗は、ようやく胸の奥の圧力が解けたような気がして、安堵の息を漏らした。


「……これで、終わる」


だが——


利権を貪る元凶も、黙ってはいなかった。


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