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「撮影お疲れ様でしたー!」
「お疲れ様でした!」
ツキは家ですぐに支度をし、マンションまでマネージャーに迎えに来てもらい、アクロスのメンバーとCMの撮影をした。
「いや〜ツキさん達は相変わらずイケメンだね! 今回の撮影もバッチリだよ」
「俺もこんなイケメンに生まれたかった〜」
カメラマンの人達がツキに寄ってきて声をかけた。
「ありがとうございます。皆さんの腕がいいからいい撮影ができました」
ツキがニコッと笑うと、あまりのイケメンさにカメラマン達はポーっとしながらツキに見とれていた。
「どうかしましたか?」
ツキの呼び掛けにカメラマン達はハッとして意識を戻した。
「な、なんでもないよ.! それにしてもイケメンな上に褒め言葉まで、ほんとにかなわないな〜」
ツキは礼儀正しく、愛想もいいのでテレビ局では人気である。
カメラマン達とツキが話していると同じグループのメンバーのルルがバックハグをしてきた。
「ツキー!楽屋行こ〜!」
「わかった。それでは私たちはこれで失礼します」
撮影していた人達に一礼し、ツキは肩に後ろから抱きついているルルを連れて、楽屋へと戻って行った。
「お、2人とも戻ったのか……ってルル? なんでそんなツキに引っ付いているんだ?」
アクロスのもう1人のメンバー、リジンは先に楽屋で待っていた。ルルは楽屋についても一向に離れようとはしない。
「ルル、そろそろ離れないとゆっくり休めないよ?」
「やだ! 離れない!」
ルルはツキに抱きつきながら首を振った。
「どうして?」
「……ツキが婚約者なんかと別れるなら離れる……」
「ルル、それは無理だよ。あと、外ではその話禁句だよ」
「じゃあ離れない!」
ツキはリジンの方へと顔を向けた。
「リジン、ヘルプ」
「あいよ。ほらルル、ツキから離れるぞー」
リジンは椅子から立ち上がり、ルルを引っ張った。
身長が高くて力のあるリジンが身長の小さい小柄なルルを引っ張れば、ツキから離せるのは簡単だった。
「やーだー! ツキが誰かのものになるなんて嫌だー!!」
ルルはほっぺをぷうっと膨らませその場でジタバタした。
「婚約と言っても契約上だけどね」
「でも、ツキは契約で終わらせる気ないんじゃないか?」
リジンはツキの考えを見透かしたように言った。
「まぁね」
ツキがそう言うとルルは潤んだ目になりながらツキの元に寄った。
「なんで? なんでそんな男なんか選ぶの? ツキには私がいるのに……!」
「だって私は彼をずっと想ってきたから」
少し微笑みながら言うとツキは遠くを見た。その微笑みはあまりにも美しく誰が見ても惚れる程だった。
リジンはその様子を見て、ルルに声をかけた。
「ルル、ツキがその婚約者にベタ惚れしてるのは前から知ってるだろ。諦めろ」
「うぅ……」
ルルは落ち込みながら端っこの椅子に座り、化粧台の上に突っ伏した。
「ところでツキ、色々聞きたいことはあるんだけど、とりあえず婚約者とは上手くいってるみたいだな。よかったよ」
「うん。まだ婚約して2日目だけど、こんな複雑な事情を持つ私を理解してくれたし、とにかく優しいんだ。それに、見た目もやっぱりかっこいいし、喋っていても楽しいし……」
「わ、わかったよ。とにかくそれなら安心した」
ツキの惚気が長くなりそうとわかったので、リジンは途中で話を止めた。
「あと、また学校通うんだろ? どっちの姿で通うんだ?」
「今回も男装した姿で通うよ」
「ツキ、また学校通うの?! しかも男装で?!」
ルルは驚きながら椅子から立ち上がり、ツキ達の方へと寄ってきた。
「そうだよ。学校には通わないと両親がうるさいしね」
「でも大丈夫なの……? 前みたいな事件になったら……」
「大丈夫。今回は絶対にヘマはしないよ。2人にも迷惑かけない」
「迷惑とかそういうことじゃなくて、ルルはツキがまた傷つくんじゃないか心配なの……」
ルルはツキの服の袖をちょっとだけ引っ張りながら、大きくぱっちりとした紫の目を不安そうに陰らせ俯いた。
「そんなに心配しなくても平気だよ。むしろ、私は零くんと同じ学校に通えるのが楽しみで仕方ないんだ」
ツキは微笑みながらルルの手を握った。
「まぁツキがそう言うならいいけど……」
「2人とも心配してくれてありがとう。さて、私は支度して帰るね。明日から学校だし、それに零くんが帰りを待ってるから」
ツキは服を着替え、サッとウィッグを取り、漆黒の綺麗な髪を背中に流した。そして、カラコンを外しマスクを付けた。
「よし、じゃあ2人とも今日も1日お疲れ様」
「あぁ、お疲れ様」
「お疲れ様ー!」
バタン。
ツキが部屋から出ていったあと、2人も支度を始めた。
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