そうだ! 助け合おう!(2)
同じ様で同じではない……そんな、何とも不思議な感覚が雄太の中に生まれていた中、砂煙の向こうには以前と全く同じ形でムキムキな大男が左手に大岩を持った状態で対峙していた。
本当に疑似感を抱かずにはいられない。
この大男が次に何をして来るかまで簡単に予測する事だって出来る。
オリンピック選手すら真っ青な怪力で、左手に持っている大岩をこちらに投げつけて来るのだろう。
果たして、大岩はおおよその予測を全く裏切る事なく雄太へと一直線に飛んで来た。
「こう言う予測だけは外れてくれても構わなかったんだけどなぁ……」
苦笑交じりに雄太は答え、両腕で顔を覆う。
いわゆるガード態勢だ。
既に視認可能だった為、避けるつもりなら躱す事も可能だったであろうが……しかし、雄太はガードと言う選択肢を選ぶ。
理由は実に素朴な物だ。
洞穴の通路を完全に塞いでしまうまでの大きさがあったから。
つまるに避ける為のスペースが全くなかった。
これ、なんて無理ゲ?
ゴツッッッ!
結局の所、視認可能な動体視力を持っていても、避けるスペースがないのでは全くの意味を持たず、雄太はやっぱり大岩の一撃を身体全体で受け止める形となってしまった。
だが、全く同じ展開が続いたのはここまでだった。
「……?」
眼前に迫る剛速球の大岩を前に、雄太は険しい顔のままガード態勢のまま立ち尽くし……キョトンとなってしまう。
……あれ? 痛くない?
大岩は確かにやって来た。
それはそれはもう……パーフェクト・ピッチングだって夢じゃないだろう級の猛スピードで。
そして雄太の身体へと一直線にぶつかり……跳ね返る。
跳ね返った大岩はそのまま地面へと落下し、真っ二つに割れてしまった。
「なんだ……これ?」
自分でやった筈だと言うのに、全く自分でやった感覚がない。
以前喰らった時は、ゲーセン感覚で都市高速や首都高を暴走しまくる脳内お花畑染みたヤツが運転した車に、熱烈ボディーアタックを喰らったかの様な衝撃を身体全体で感じまくっていたと言うのに。
けれど……どうだろう?
今回の大岩は、あたかも発泡スチロールか何かで出来た大岩であったかの様だ。
どっかのアトラクションとかで使っていそうな大玉にぶつかった感覚だ。
安全性に最良の注意を置き、お客様の保全を最優先致します!……って看板でも近くに立っていそうな威力だ。
これが本当にアトラクションの類であったと言うのなら、雄太は大いに感心したに違いない。
見た目はどこからどう見ても岩にしか見えない物が、実は発泡スチロールとかで出来たハリボテの大岩だったと言う事になるのだから。