そうだ! クエストを受注しよう!(14)
「これは、昼飯を食ってる場合ではなくなったみたいだな……」
一連の流れを見て、リリアはいつになく神妙な顔を作って答えた。
でも、内心は「よぉぉぉし! これで自称妹の弁当自慢をされずに済むぜぇ! ヒャッハー!」とか思ってた。
「いえ違いますわ……ここは一時撤退し、私の作ったお弁当を食してから再度相手の出方を伺いましょう」
そして亜明もまた、至って真剣な顔をして慎重論を促してみせる。
でも、内心は「ふざけるんじゃありませんわ! お兄様との憩いの時間を楽しみにしていた私の気持ちを何だと思っているの?」とかって考えながら、はらわたを煮えくり返していた。
そうこうしている内に、武装が終了していた盗賊の一人が素早く雄太達を発見する。
「いたぞ! 賊は三人! 男一人と女二人だ!」
盗賊のクセして相手を賊呼ばわりしてた。
本当にこの人達は盗賊なんだろうか?
やたら統率の取れた動きは、どう考えても盗賊のそれではない。
諜報部隊を速やかに編成している組織力からしておかしいのだが、発見されて間もなく……カップ麺が出来るよりも早い勢いで雄太達の前にやって来ては、ぐるりと周囲を包囲する手際の良さを加味しても、明らかに盗賊の動きとは思えなかった。
「貴様ら! 何者だ!」
ドォォォォォォォンッッ!
雄太達三人を囲んだ盗賊の一人が厳格な声音で尋ねた瞬間、その返事とばかりに周囲が爆発した。
三人を中軸とした爆発だったが、不思議と爆心地とも言える雄太と亜明の二人には、そよ風すらも当たらない。
そうだと言うのに、周囲を囲っていた盗賊達は一切の例外なく吹き飛んで行く。
果たして。
「このぉぉ! 自称妹ぉぉぉ! あたしまで飛ばしやがってぇぇぇっ!」
ついでにリリアまで吹き飛ばしていた。
きっと腹いせでやったに違いない。
「さぁ、お兄様。ここは危険です。早く安全な所へ避難致しましょう!」
「うん、お兄様としては、一番危険な存在と一緒に逃げる事になりそうな気がして仕方ないよ」
「何をおっしゃいますのお兄様! 先程ご覧になったでしょう? あの様な下郎達が徒党を組んで襲って来るのです!……一刻も早くお弁当を食べるべきです!」
言うなり亜明は「くわわっ!」って感じの勢いで右手コブシをギュッ!……っと握りしめ、左手に持っているバスケットから弁当を取り出そうとしていた。
危険だから避難するんじゃなかったのだろうか?
「今の爆発はここかっ!」
ドォォォォォォォンッッ!
直後、別の盗賊に発見されたんだけど、叫んだ三秒後に爆発していた。
「お兄様……私、怖い」
「お兄様は妹の方が怖いと思ってるよ」
「安心なさって! お兄様が爆発する事はありませんわ! 浮気をしない限りは!」
どうやら浮気(?)がバレたら爆死するらしい。
雄太の危機感が一段階上がった。
「ああ……どうしましょう」
「本当にどうした物かな」
「私……私……今、ここでご飯を食べないと爆発する病気に掛かりそうで怖いわ!」
「よしお昼にするか!」
瞳をウルウルしながら上目遣いで答える亜明に、雄太はバケツ一杯分の冷や汗を流しながら叫んだ。
きっと、ここで首を縦に振らなかったのなら、亜明は衝動的に爆発するのだろう。
比喩でもなんでもなく、物理的に大爆発するのだろう。
ハッキリ言って冗談ではなかった。