そうだ! 助け合おう!
「……今度は何処なんだよ?」
謎の美女による謎の会話を経て、これまた謎に意識を失った雄太が再び意識を回復させた先にあったのは、若干の見覚えがある洞穴の中だった。
但し、見覚えがあると言っても現在地はサッパリ分からない。
玄関ドアから外に出た地点から近い様な気もするし、全く見当違いな場所に居るのかも知れない。
分かる事と言えば、大岩をぶつけられて圧死寸前にまで追い詰められた洞窟そっくり……と言うか、恐らくその延長線上に居るのだろうと予想出来る事。
それともう一つ。
「荷物がないぞ……おい」
背中にあったリュックが見事に無くなっていた事ぐらいだろうか?
控えめに言って絶望的だった。
リュックの中身には旅先で使うかも知れないだろう便利グッズを初めとした、色々な物が詰め込まれていた。
加えて、若干ながらの着替えと食料……そして路銀等も入っていた。
今いる世界が日本はおろか異世界である可能性をも加味するのであれば、路銀は全く役に立たないだろうが、替えの下着と食料が無くなったのは絶望的と言える。
特に食料は大きいと言わざる得ない。
現状は、リアルにゴール不明のトンネルへと入り込んでいる様な物だったからだ。
「……なんでこんな事になっちまったんだか」
吐息交じりにぼやき……歩き出した。
もちろん、当てはない。
今進んでいる方向が、この洞窟の出口へと繋がっている保証は当然の様にあろう筈もなく、むしろ出口から遠ざかっている可能性すら否定出来ないのだが……だからと言って、このまま何もしないと言う訳にも行かず、闇雲全開でテキトーに歩き出す。
これからどうなるんだろう?……もしかして、俺はこの真っ暗な洞窟の中で食事にありつく事が出来ず、そのまま栄養失調で死んで行くのだろうか?
その時は、真っ白空間であった謎女の所に化けて出てやろう。
……そうと、雄太が心の中で薄暗い思考をグチグチと考えていた時だった。
ドカァァァッッッ!
物凄い衝突音と共に、大岩が壁へとぶつかった。
……あれ? これってデジャヴ?
心の中でのみ呟く。
事実、似通った体験をして来た雄太からすれば、軽いデジャヴにも似た何かを感じた。
しかし、同時に思えた。
あれ? なんか飛んで来たスピードがめちゃくちゃ遅くなってないか?……と。
「うーん……?」
不思議な気持ちで一杯だった。
飛んで来た岩の衝突音と、直後にやって来た風圧……そして、砂煙を見る限りは少し前に殺され掛けた大岩の剛速球と全く遜色はない。
……筈だ。
最後に「筈だ」などと嘯いてしまったのは他でもない。
今の雄太には、岩がどの様な放物線を描いて壁に激突したのか? その詳細までハッキリと視認する事が可能だったからだ。
今ならきっと、大岩に文字が書かれていたとしても、その文字をクッキリハッキリと読む事すら出来るんじゃないだろうか?