そうだ! ダンジョン攻略をしよう!
……責任。
この二文字によって人生が暗転した。
言葉で表現する事も出来ないまでに重い……重苦しいプレッシャー。
その圧力は余りにも凶悪で……強大だった。
……期待。
この二文字によって人生は好転した。
誰かに期待され、数多の希望を背中に……より良い明日をベストに過ごす。
純粋に単純に……前向きに。
些か愚直ながらも、これだけを渇望した日々は、自分でも身震いするまでに心地よい物だった。
……だが。
人生は……そんなに甘い物などではなかった。
期待の先には、もう一つの二文字が存在していた。
こんな事も知らずに、期待と言う名の明るい希望へとまっしぐらに突き進めると……そう、信じていた。
その先にあった二文字は希望などではなく、絶望の二文字であった事など……つゆ知らずに。
そして、絶望の二文字により……人生が狂い始めた。
プラムの街から南東へ220キロだったらしいんだけど、なんだか良く分からない内に着いてしまったよトニ~♪
……的な事を無駄にアメリカンな感覚で考えていた、元・万年平社員がいる。
二十年も平社員を続けた挙句、色々と人付き合いにくたびれてしまった末、なんの人生プランもないままに退職して無職ライフをエンジョイ……とまでは行かない物の、どうにか再就職先が見つかるんじゃないのかなぁ……とか考えている四十五歳。
そんな雄太の眼前には、いかにもRPGとかで良く出て来そうなダンジョンの入り口なんかがあった。
「こう言う所だけは、普通にゲームみたいなんだよなぁ……」
街とか見てる感じでは、どうにもこうにも実感が持てないと言うか……なんと言うか。
街には普通に鉄筋コンクリートのビルが建て並んでるし?
その街を歩いても、普通に人間としか他に形容出来る物がない様な存在しか、街を練り歩いている様子はない。
正直、これが異世界だと抜かすのであれば? ドワーフとかホビットとかスプライトとかファ●タとか、そ~ゆ~のがわんさかいて、イカにもタコにも「ここは完全無欠の異世界なのですよぉぉぉぉ!」……って感じの状態を、目で実感させて欲しい所ではある。
まぁ、空間転移魔法とか言う、逆立ちしても雄太のいる世界にはない様な反則レベルの魔法を体験して、結構異世界に来たと言う実感を受けつつはあったのだが。
ちなみにスプライト(小妖精)の中ではエルフが好きで、ファン●はオレンジが一番好きです。
………。
閑話休題。
そろそろ本題に入ろう。
雄太は目的地である女神像の迷宮前にやって来ている。
正式名称は「アフリトの審判」と言うらしい。
ある意味、ジャッジメントを下される側としては、皮肉とも言える名前のダンジョンだ。
こんな事を雄太が考えていると、
「ここからは本格的なダンジョン攻略になる……細かい所まで、しっかりと気を抜かずについて来て欲しい」
びっくりするまでに超絶真剣な顔をしたゼルスが、雄太へと口を開いた。
「は、はい。分かりました」
雄太はゼルスの言葉を耳にして、自分なりに顔を引き締めてみせる。
しかしながら元から引き締まった顔を作る事があんまりない……と言うか、愛想笑い歴二十年の万年平社員には、ちょっと難しい注文だった。
「本当に大丈夫かい? ちょっと、気が緩み過ぎている様に見えるんだけどね……」
本人はユアショックな顔をしてるつもりなんだけど、現実は無駄に踏ん張ってるチワワみたいな顔をしていた雄太に、ゼルスは思わず重々しい溜息を吐き出さずには居られなかった。