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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
二章・そうだ! 冒険者になろう!
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そうだ! 冒険者になろう!(8)

「あ、あのぅ……つかぬ事をお伺いいたしますが、どうして死亡届を?」

「え? 当然じゃないの。だって、特別採用試験なんて100人中100人が死体で戻って来るんだもの」

 致死率100%かいぃぃぃぃっ!

「あ、ごめんなさい……嘘だから」

「嘘でしたか」

 嘘にしても笑えない与太話だと、雄太は少しホッと胸を撫でおろしていた直後……。

「半分ぐらいは死体ですら戻って来なかったから、実際は100人中50人ぐらいしか戻って来ませんでしたぁ~♪」

 余計悪いわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!

 しかも無駄にテンションが高く、あたかもスタバでお茶でもしない?……的なノリで気軽に言って来るお姉さんは、暫くのちにハッと思い出す形で雄太へと答えた。

「あ、そうか。あなたってこの国の人間じゃないから、そもそも死亡届なんて作成出来なかったねぇ?……ならヨシ!」

 何が良いのだろうか?

「うんうん。それじゃ早速試験の方に向かいましょうか」

「ちょっと考えさせて貰えませんか?」

 ニコニコ笑顔で答える女性の言葉に、雄太も一応の愛想笑いのまま声を返す。

 100人中100人が死んでる試験に、どうしてこうも明朗快活な微笑みで進行する事が出来るのだろうか?

「ごめんなさい。それは出来ないの。こっちもちょっと色々立て込んでてねぇ……本当、エリア・マネージャーのアホがぁ……」

 姿だけは見目麗しい女性が、地味に暗黒オーラを放ちながらぶつぶつとぼやきを入れた所で、ハッと我に返る。

 なんだか良く分からないが、エリア・マネージャーとか言うのが彼女にとって目の上のタンコブなのだろう。

 直属の上司なのか、それ以上の存在なのかは分からないが、上司のせいで胃薬が欲しい日々を無駄に強いられているのだろう。

「……事情は分かりませんが、心中はお察しします」

 上司に悩みの種を存分に植えつけられる苦痛に関してはこの道二十年の大ベテランだった雄太は、苦笑しながらも温和に答える。

 同情と言う程ではないのだが、雄太なりの温情を込めた台詞だったのだが、

「あ、あはは……そ、そのぅ……ね? 今のは聞かなかった事にしてくれるかな? お、お願い! おねーさん、まだ死にたくないの!」

 何故か血相を変えてしがみ付かれてしまった。

 かなり必死だ。

 どうして、名も知らない彼女の上司のぼやきをちょっと耳に入れただけで、こうもデットオアライブな態度を取って来ると言うのか?

「もしかして、俺は……とんでもなくヤバイ場所に踏み入れてしまったのだろうか……?」

 尋常ではない怯え方で、必死に懇願して来る彼女の姿を見て、雄太は帰りたい気持ちで一杯になってしまう。

 なんなら、今すぐクラウチングスタートを切って、この建物から一秒でも早く脱出したい所だ。

「だ、大丈夫! 実はそんなに怖い所ではないんだよ? ただね?……ほっほら、ちょっと死ぬ可能性が? なんて言うかぁ……低く見積もっても100%程度しかない……って、逃げるんじゃない!」

 雄太は優美な女性に掴まれた。

 全力で逃げようとして、クラウチングスタートの態勢をとった瞬間にむんずと掴まれた!

「しまった! スタンディング・スタートの方が良かったか!」

 彼女に掴まれた瞬間、雄太は思わず天を仰いだ!

 でも、後悔の仕方が根本的にズレていた。

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