そうだ、脱サラしよう!(2)
ドアを開けた先にあったのは新世界どころの話ではなかった。
「え?……は?……はぁ????」
彼の脳内思考では、近所の光景すらも新世界になる予定ではあったんだけど、予想を遥かにぶっちぎってしまった状況に、困惑と混乱が精神世界でブレイクダンスしまくった。
これはどう言う事だ? 昨日の夜に飲んだストロングな缶チューハイが、俺の脳内に新しい世界を創生させてしまったのか?
確実にあり得ない事を真面目に考えながらも、雄太は自宅玄関から外へと歩みを向ける。
明らかにヤバイ事になってはいたんだけど、どうせ自宅に居たって暇だからそのまま歩いてみる。
今の雄太に出来る事なんて大した事はない。
会社も辞めてるから時間だけはあるのだ。
無駄に残っていた有給消化中だったから、厳密にはまだ会社に所属しているけど、どの道会社に行かない以上は、自宅でゲームしてるかヨウツベ見てるか意味なくツイートするか程度の事しか出来ない。
どーせ、やる事なんてないんだ。
それなら、良くわからない洞窟探検しても問題はないだろう。
玄関開けたら即洞窟だった時点で問題しかなかったんだけど。
「意外と暗くないな」
鍾乳洞の様な空間が続く周囲を軽く見まわしながら、雄太は誰に言う訳でもなく呟いた。
実際、この言葉通り周囲は薄暗い程度で済んでいる。
光源知らずの洞穴で人間が周囲を認識する事が出来る時点で物理的におかしな話なんだけど、薄暗い程度で済んでいるんだから、こればかりはそうとしか言えない。
どう言った理屈でそんな不可思議な現象が起こっているかなんて分からないし、特に興味もなかったが、非科学的な光景であると言う事だけは認識出来る。
「どこに繋がってるんだろうなぁ……?」
それ以前に、ここは何処なんだろう?……そんな事を胸中で付け足しながらも、自然と独り言を口にするユニークスキルを空しくも習得していた雄太が数分程度、不自然に薄暗いだけの洞穴を進んでいた……その時だった。
ドカァッッッ!
突発的に前の方から大岩の様な物が飛んで来ては、雄太の近くにあった壁に激突した。
「……へ?」
強烈な衝突音と同時にやって来た若干の風圧を前に、雄太の目がテンになってしまう。
頭の中は真っ白だ!
ハッキリ言って、現状で起こっている事が現実的とは到底思えない!
そもそも、玄関開けたら洞窟と繋がっていた時点で現実とグッパイしてたんだけど思った。
「な、な……なんじゃこりゃぁぁぁぁっ!」
雄太は蒼白になりながらも叫んだ。
ここに来て、彼は非現実な現状に度肝を抜いた。
玄関開けた時点で驚けよとツッコミを入れたくなる驚き方だった。