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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
七章・そうだ! 昔話をしよう!
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そうだ! 昔話をしよう!(33)




 泣いたらダメだと思った。

 最後の最後。

 雄太が目にする事が出来る最後の里奈を……その姿を見る時の自分は……絶対に泣いちゃダメだと思えた。

 思えてならなかった。

 きっと、泣いたら怒られる。

 コラッ! そこは笑う所でしょ!……と、怒鳴って来る。

 だから、笑う。

 しっかり……にっこり、柔和に。

 でも、瞳は正直だ。

 心は正直だ。

 どうしても……どう足掻いても、どんなに頑張っても。

  

 瞳から涙が零れ落ちて仕方ない。


 悔しくなる。

 こんな顔を、里奈は絶対に求めていない。

 足掻け! せめて、里奈の顔に涙が落ちるなんて醜態を晒さない様に。

 必死で顎に右腕を絡めた。

 滴る涙が落ちない様に。

 時間にして凡そ三十秒。

 それが、雄太が彼女を見送った最後の別れに費やした時間。

 たった三十秒。

 実に……儚い三十秒だった。

 本当は、もっと見ていたかった。

 語りかけてやりたかった。

 痛かったか?

 苦しくなかったか?

 変われる物なら、マジで俺が代わってやりたいよ!

「ちく……しょう……く……く……そぉ……っ!」

 焼香を済ませて間もなく、トイレへと向かった雄太は個室で力無く呟いた。

 悔しさで肩が震えた。

「うぅぅ……すぅ……はぁ……っ!」

 嗚咽が漏れる。

「うぁぁぁぁぁぁっっっ!」

 間もなく、声を出して泣いた。

 泣き崩れた。

 もうダメだった。

 限界だった。

 追憶の里奈が……彼女が、雄太の前に次々とやって来た。


 コンビニで初めて出会った時……魂が揺れた。

 後で里奈から聞いた。

 里奈もまた、同じであったと。

 お互い、初めてあった瞬間……強烈な一目惚れをしていた……と。


 花火大会で花火を見に来たのに、花火を見た記憶がまともになかった……あの日。

 絶対に無理だと分かっていても、撃沈覚悟で告白したいが故に、馬鹿なりに無い知恵絞って一生懸命に考えた誕生日プレゼント。

 恋人になる権利が欲しいと言われた……あの瞬間は、一生忘れそうにない。

   

 クリスマス・プレゼントが同棲する権利。

 もう、流石に驚かなかったよ……いや、嘘です……インパクトありました!

 相変わらずみょうちきりんな物を要求するよ、お前は。

 結果的に買ったペアリング。

 勢いで買ったけど……買って良かったと思っている。

 ペアリングを購入してすぐ、指にはめていた里奈の笑顔は……ビックリする位、キラキラ光っていた。

 イルミネーションの光が、とってもちっぽけに見えるまでに、息を飲んでしまう程の輝きを見せていた。

 本当に、可愛かった……綺麗だった。

 最高の笑顔だった。

 

 喧嘩別れして、一週間会わなかったあの日。

 地元まで追いかけて来てくれた……あの日。

 里奈には恥ずかしくて言えなかったけど……本当は嬉しかった。

 自分なんかの為に東北の片田舎まで来てくれて……本気で嬉しかった。

 ありがとう!

 心から言いたい。

 お前が好きでいてくれて良かった。

 好きになってくれて良かった。

 里奈がくれた温もりは……忘れない。


 俺を愛してくれて……ありがとう。


「うぁぁぁぁぁぁっっっ!」

 ……泣いた。

 がむしゃらに泣いた。

 思い出の中にいる里奈は、沢山の喜怒哀楽で満ち満ちていた。

 笑ったり、怒ったり、泣いたり、楽しんたり。

 忙しなく、様々な顔を次々と見せている。

 最高に……イイ女だった。

 里奈以上の女性に逢う事は、もう一生ないだろう。

 いつか……そう、いつか。

 もし、自分の願いが叶うのであれば。

 

 もう一度……一度だけで良いから……里奈に逢いたい。

 

 時は平成11年……晩秋。

 間もなくミレニアムを迎え、世間ではY2K問題も色々と賑わっていた20世紀末。

 今から約二十三年前に起こった、雄太の昔話である。








   ~to be continued~





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