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最強の能力を貰ったら、もれなく有名になると死ぬ呪いも付与された。  作者: 雲州みかん
七章・そうだ! 昔話をしよう!
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そうだ! 昔話をしよう!(28)

「………アホはどっちだ……アホ」

 首元に両腕を絡められ、あたかもしがみ付く様な勢いで抱きしめて来た里奈が、耳元で囁く様に答える。

「………」

 雄太は無言だ。

 なんて答えて良いのか分からない。

「あ、あのぅ……おたくは誰? 雄太の友達とか……?」

 他方、隣に座っていた高尚は口元をヒクヒクさせながらも里奈へと尋ねてみせる。

 とんでもない美人だ!

 もちろん、こんな美人に知り合いは居ない!

 てか、なんで激マブな子が!

 尚、激マブとは超絶美人と言う意味である。

 二十世紀に高校時代を生きた人なら知ってるかも知れない単語……ではあるんだけど、果てしなくどうでも良いので説明は割愛して置こう。

「……あ、えぇと……そ、そのぅ……ゆ、雄太の友達……ですか?……あは、あはは……」

 高尚に話しかけられた里奈は、超絶ぎこちない笑顔のまま声を返した。

 コミュ障を拗らせたスーパー人見知りは、初対面の人に話しを掛けられると老若男女問わず壊れたロボットみたいな態度を取ってしまうのがデフォルトであった。

 他方、陽キャではないけど、それなりにコミュニケーションが取れる高尚は違った。

「そうそう! そこのボンクラの親友してます! 四本高尚って言います!……で、君は? で、出来たら携帯番号とか教えて欲しいなぁ~?……なんて!」

「オイこら、ちゃっかり口説いてんじゃねーよ」

 鼻息荒く、テンションまで爆上がりしていた高尚を前に、雄太は苦々しいで声だけを返した。

 本当は胸倉を掴んでやりたい勢いではあったのだが……里奈の拘束がまだ取れない。

 依然として、首元に絡める両腕を離してくれないのだ。

「里奈……そろそろ離してくれないか?」

「………やだ」

「いや、離さないと話しも出来ないだろ?」

「離したら居なくなる気がするからダメ」

「理不尽!」

 頑なに離さない里奈を前に、雄太は思わずツッコミを入れてしまった。

 ここがパチ屋のホールだと言う事を考慮すれば、これはもはや見世物の一種にさえなりうる。

 流石に後ろから彼女が抱き着いている程度の事で、スタッフがやって来ると言う事は滅多にないが……それでも、こんな事を長時間やっていれば一定の注意染みた事を言われるのは目に見えてるだろう。

「分かった! 分かりました!……絶対に逃げないから! ここでバカップルしてるスロッターとか恥ずかしいから! ともかく近くにファミレスあるから、そこで話そう!」

「え? ファミレスなんてあるの?」

「おま! 流石に田舎を馬鹿にし過ぎだっっ!」

 真顔で言っていた里奈の言葉に、雄太も地味にイラっと来た。

 果たして。

「おい、雄太? やっぱこの子って東京の子? スゲーな! 都会の女って綺麗なんだなぁっ!」

 実は東海人だと言う事は語るまい。

 悪友が無駄に都会への幻想をぶちまける中、雄太と里奈の二人は近くにあるファミレスへと向かった。

  





 三十分後。

「ここまで、どうやって来たんだ?」

 近所にあるデニーの複数形ちっくなファミレスへとやって来た雄太は、軽トラに同行する形で一緒にやって来た里奈へと声を向ける。

 ちなみに高尚とはホールで別れた。

 どうやら、高設定だと踏んでいるらしい。

 まぁ、こんな事をほざいてる輩は、この時代には沢山いたのである。

 そして無様にやらかすのが定石でもあった。

 ……うん、とりま話しを戻そう。

「お義母さんに訳を話して……それで、タクシーで。お義母さんからメール来てたでしょ? それでアンタの居場所が分かったんだよ」

「……ああ、そう言えば来てたな」

 里奈の話しを耳にして、雄太は地味に納得してしまった。

 確かに少し前にメールが来ていた。

 内容は「何処のパチ屋にいる?」だった。

 中々に人を小馬鹿にした内容である。

 まるで高尚と一緒ならパチ屋にしか行かないかの様な内容だった。

 ……実際にパチ屋に居たのであんまり反論出来ないんだけど。

 宛名が母親であった事もあり、雄太は店名を普通にメールで送っていた。

 まさかこんな事になるとは。

「……で? 今更俺になんの話しがあるんだ? お前とは別れた。承諾済みだろ? お前から「別れる」って言ったんだから、承諾も何もありはしないが」

 嘆息交じりに雄太は口を動かす。

 正直、精神が千切れそうだ。

 建前も建前……本心なんて物は、異次元の彼方まで吹き飛ばした上で物を言っている。

「あんなの……いつもの事じゃない」

 里奈は目線を反らして言った。

 実際問題、良く口にする口喧嘩の常套手段だった。

 今の今まで、伝家の宝刀的な立ち位置だった。

 それが諸刃の剣である事を、ここまで痛感させられる日が来るとも思わずに。

「まぁ、そうな? これは口上だったと思う。いつもならそれで終わりだった」

 雄太は軽い口調で答えた。

 しかし、ここまで述べると表情を真剣な物に変え……再び答える。

「けど、そうじゃない時だってある……あの時は違った」

「どう違うんだって言うの! 同じでしょ! 何が違うの!」

 淡々と、抑揚のない声音で口を動かして行く雄太に、里奈は相反する形で感情的な声音をぶつけた。

「俺は、理由が欲しかったんだ……お前と一緒に居る理由が」

「理由? あるでしょ! あたしはアンタ好き! アンタもあたしが好き! これで良いじゃない!」

 依然として抑揚のない声で口を開き続ける雄太に、里奈もまた激情を露わにして叫んだ。

 すると、雄太は嘆息交じりのまま……言う。

「高校生の恋愛なら、それで良かったんじゃないか?……好きだって言う理由だけでさ?」

 だが、自分達はもう大学生だ。

 その大学だって里奈は四年。

 もうすぐ卒業して、社会人となる。

 極論からして、この恋愛は……。

「まるで子供の恋愛なんだよ……俺達の繋がりは、さ」

 雄太は疲れた顔を作りながらも……ぼやく様に答えた。

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